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神戸市長田区と大阪市の舞洲で相次いでマルチ型物流施設着工

大阪湾岸で攻勢、大和ハウスの勝機は「迅速」「低温」

2022年6月1日 (水)

話題物流施設の開発が加速している大阪湾岸部。大阪南港や人工島の舞洲(まいしま)を中心に、神戸市から大阪府南部まで弧を描くように広がる大阪湾の沿岸部に沿って、物流施設の開発が進んでいる。関西圏で発展してきた食品や電気機器をはじめとする裾野の広い産業立地を背景に、京阪神を中心とする関西圏だけでなく西日本の中核物流拠点として、さらには首都圏のバックアップ機能として、これまでになく高い注目を集めるエリアになっている。

そんな大阪湾岸で、ことしから集中的に物流施設開発プロジェクトを計画して業界の話題をさらっている企業がある。大阪市に本社を置く大和ハウス工業だ。

ことしは神戸市長田区と大阪市此花区の舞洲で大型物流施設を着工。さらに、大阪市住之江区の大阪南港では物流施設の開発用地を取得した。大阪湾岸で一気に攻勢に出た大和ハウス工業の狙いは何か。今後の展望を含めた「大阪湾岸プロジェクト」の全体像に迫った。

大阪湾岸で第一号案件は3社共同開発プロジェクト

大和ハウス工業による関西圏での物流施設開発は、「DPL茨木」(大阪府茨木市)、「DPL兵庫小野」(兵庫県小野市)など内陸部に集中していた。新名神高速道路を中心とする高速道路網の整備に合わせて、輸配送拠点としての利便性を意識したプロジェクト開発を推進してきた。

こうした内陸部における開発に加えて、ことしに入って本格化しているのが、大阪湾岸での新規プロジェクトだ。その第1弾となるのが「神戸長田物流センター」(仮称、神戸市長田区)だ。

▲CBREインベストメントマネジメント・ジャパンと大林組との3社による共同開発案件である「神戸長田物流センター」

神戸市中西部の海岸沿いにある駒ヶ林地区。かつて漁港として栄えた港町は、今や工場や倉庫が混在する工業エリアの性格が強まり、街並みも大きく変わった。その一角に誕生するのが、神戸長田物流センターだ。

とはいえ、神戸長田物流センターは、大和ハウス工業が参画するプロジェクトの中でも異質だ。ブランドである「DPL」にも含まれていない。「CBREインベストメントマネジメント・ジャパンと大林組との3社による共同開発案件です」と話すのは、建築事業本部営業統括部の手塚公英・Dプロジェクト推進室長だ。大和ハウス工業による大阪湾岸の物流施設第一号は、デベロッパーとしての役割に特化した案件となった。

「スピード」を信条とした神戸長田物流センターの高いニーズ対応力

▲大和ハウス工業 建築事業本部営業統括部の手塚公英・Dプロジェクト推進室長

「荷主企業に物流サービスをスピーディーに提供する」。神戸長田物流センターの開発のコンセプトだ。マルチテナント型施設として開発する案件として必要不可欠なのが、入居を希望する企業も求める物流サービスを逃さず迅速に提供できる施設運営だ。

関西圏でも、EC(電子商取引)関連の物流量増加を背景に、マルチテナント型物流施設への需要が堅調に推移。新規需要が新規供給を上回る状況が続いており、関西圏における延床面積1万坪以上の大型マルチテナント型物流施設の空室率は2020年12月末には3.7%だったが21年12月末には1.2%まで低下するなど、減少傾向にある。少しでも早く倉庫を確保したい企業にとって、必要なのは「スピード感」なのだ。

「事業開始までの期間を短くすることができ、物流ニーズの多様化により、急速に変化する事業環境の中でスピーディーに事業を展開できるのが強みです」(手塚氏)

神戸長田物流センターは、水路を隔てて東西に2棟を新設。延床面積がそれぞれ1万8688坪(6万1780平方メートル)と2万5410坪(8万4000平方メートル)あり、完成は23年10月と23年7月。それぞれ最大4社、12社の入居に対応した構成とする。

「延伸が計画されている阪神高速道路湾岸線の出入口も近くに設けられる可能性があるなど、将来的なポテンシャルも高い物件。神戸エリアのマルチテナント型倉庫として活用しやすい施設としてアピールしていく」。手塚氏は意気込む。

大阪湾岸で初のDPLブランド、「冷凍冷蔵」で圧倒的な差別化を推進

大和ハウス工業が手がける、神戸長田物流センターに続く大阪湾岸の物流施設開発プロジェクトが、「DPL大阪舞洲」(大阪市此花区)だ。舞洲の物流倉庫が並ぶ一角の7481坪(2万4730平方メートル)の敷地に、延床面積3万6523坪(12万737平方メートル)の施設を展開。ことし6月に建築工事を開始し、24年5月の完成を目指す。大型物件が相次ぐ大阪湾岸でも屈指の規模となるマルチテナント型物流施設だ。

大和ハウス工業の物流施設ブランド「DPL」を冠する最初の大阪湾岸の物流施設となるDPL大阪舞洲。その最大の訴求ポイントは、7階建てのうち下層4フロアを冷凍冷蔵専用の低温仕様として提供することだ。

「大阪湾岸の舞洲周辺には、近くに食品倉庫が多く立地しています。それも比較的古い物件の多いのが特徴です。こうした建て替え需要を見込んでいます」(手塚氏)

あらゆる好条件が重なったDPL大阪舞洲の強みは“ハイブリッド”

大阪市中心部まで30分圏内で、阪神高速道路もネットワークが拡充。湾岸部でも関西圏の各地へのアクセス性は以前と比べて格段に高まった。さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費スタイルの多様化で、食品の宅配需要が急速に高まったのも、冷凍冷蔵倉庫を求める企業の高まりにつながっている。

こうしたあらゆる条件が重なり、DPL大阪舞洲は関西圏でも有数の規模を誇る冷凍冷蔵倉庫として誕生するのだ。「上層3フロアは常温仕様ではありますが、冷凍冷蔵機能を整えることも可能な設計とします。つまり、入居企業のニーズに応じて常温でも低温でも対応できるというわけです」(手塚氏)

▲関西圏でも有数の規模を誇る冷凍冷蔵倉庫として誕生する「DPL大阪舞洲」

いわゆる“ハイブリッド”型として、多様なニーズをつかむ。首都圏を中心に物流施設をDPLブランドを中心に95施設(ことし3月末現在、施工中含む)展開する大和ハウス工業ならではのしたたかな戦略と言えるだろう。

ホットな大阪湾岸で攻勢に出る大和ハウス

大和ハウス工業が一気に加速する「大阪湾岸プロジェクト」。しかしこれらの案件は、大阪湾岸部における物流施設展開の“序章”に過ぎないようだ。

(イメージ)

大阪市住之江区の大阪南港エリアの一角。「大阪港湾局が保有していた土地を大和ハウス工業が取得したらしい」。その話題は、当地における物流施設開発事業者を大いに驚かせた。

道路を挟んだ1万400坪(3万4320平方メートル)と8400坪(2万7720平方メートル)の敷地。大和ハウス工業は、早ければ23年にも物流施設の建築工事に着手し、25年にも稼働させたい考えだ。ちょうど「2025年日本万国博覧会」(大阪・関西万博)の開催に稼働時期が重なることも想定し、「万博需要も取り込みながら、その後の物流需要も的確に取り込んでいく」(手塚氏)戦略だ。さらに、ことし3月には兵庫県西宮市でも冷凍冷蔵仕様を想定した物流倉庫の建設予定地を1万1900坪(3万5700平方メートル)取得した。

全国区の知名度を誇るものの、やはり関西が地盤である大和ハウス工業。しかし物流施設開発においては、首都圏に軸足を置いた開発スタイルが定着し、関西圏におけるDPLブランドはそこまで浸透していないのが正直な印象だ。

とはいえ、大和ハウス工業の社内では全く異なり、関西圏における旺盛な物流施設ニーズへの対応は重点施策の一つに位置付けられている。不動産開発業者にとって用地取得はまさに「縁」でもある。良縁にめぐりあえた大和ハウス工業が、いよいよ本格的な大阪湾岸攻略に打って出る。万博開催を3年後に控えて、注目が集まる大阪湾岸エリアに、これから「熱い」季節がやってくることになりそうだ。

(仮称)神戸長田物流センター 西棟の詳細はこちら
(仮称)神戸長田物流センター 東棟の詳細はこちら
DPL大阪舞洲の詳細はこちら
大和ハウス工業の物流施設ソリューション
■物流施設特集 -大阪湾岸編-