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大阪湾岸の人工島、万博開催で一躍脚光浴びるエリアに

プロロジス「舞洲」倉庫募集、強みは利便性とBCP

2022年5月18日 (水)

話題大阪湾に浮かぶ人工島・舞洲(まいしま、大阪市此花区)。新都心開発「テクノポート大阪」を構成するエリアとして整備が進められ、大阪府や大阪市が中心となって招致を進めた2008年の夏季オリンピックのメイン会場とされた。しかし招致に失敗すると、一転して未開発地の活用が課題となった――。

(イメージ)

行政の思惑に翻弄された歴史を歩んできた舞洲。オリンピック招致失敗から20年あまり、一面に広がる未利用地は物流倉庫が整然と並ぶ産業エリアに生まれ変わった。その先陣を切ったのが、米サンフランシスコに本社を置く物流施設開発事業者のプロロジスだった。

プロロジスが舞洲で物流倉庫の開発プロジェクトを始動してから15年あまり。舞洲の物流施設だからこそ発揮できる新たな強みが生まれている。舞洲における物流施設の「パイオニア」として、新たな価値を訴求するチャンスと捉えて攻勢をかけるプロロジス。その取り組みの現場に迫る。

舞洲の「舞洲3」「大阪2」に生まれた空きスペース

プロロジスは、舞洲でこれまでに計5棟の物流施設を開発。そのうち、マルチテナント型で募集中のフロアがあるのが、「プロロジスパーク舞洲3」と「プロロジスパーク大阪2」だ。

▲プロロジスパーク大阪2

ともに延床面積10万平方メートルを超える大型物件であり、大阪湾岸エリアでも有数の知名度を誇る施設として知られている。プロロジスは、この2物件について、それぞれ空きスペースの入居企業を募集している。

そもそも、舞洲とはどんな場所なのか。大阪市中心部まで30分圏内。阪神高速道路を経由して京阪神はもちろん、関西圏をはじめ西日本・北陸・東海地方へのアクセス性も高い。一方で、鉄道網から外れていることがネックで、駅からのバス路線が主な通勤手段となる。3本の橋で大阪市街や隣接する人工島と結ばれているが、同じ大阪湾岸でも南港のように陸続きの場所と比べると、不便な印象があるのは否めない。

舞洲開発の“先駆者”は、この募集案件にどんな戦略を掲げるのか。ところが、今回の募集営業を担当する営業部の加島健太郎マネージャーは強気の姿勢を崩さない。なぜか。「それは舞洲に生まれた新たな訴求ポイントがあるからです」

「交通至便」なエリアに生まれ変わる舞洲

加島氏が舞洲の物流施設2棟を満床にできる勝算を見込む理由。それは「2025年日本国際博覧会」、いわゆる大阪・関西万博によるインフラ整備の拡充だ。万博は舞洲の南側にある夢洲が会場になるものの、大阪市中心部などからのアクセス向上を図る目的で、舞洲でも交通インフラの整備・拡充が進められることになっているのだ。

▲プロロジス営業部マネージャーの加島健太郎氏

「舞洲から大阪市街へ抜ける『此花大橋』と、夢洲とつながる『夢舞大橋』で4車線から6車線に拡幅されます。さらに、利便性が一気に高まると期待されるのが、鉄道の延伸です」(加島氏)

大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は、中央線をコスモスクエア(咲洲)から夢洲までを24年度、さらに舞洲を経由して新桜島駅(仮称)まで延伸する計画。まさに、「万博効果」で舞洲の物流施設の交通利便性が一気に高まるのだ。

とはいえ、万博の期間中は多くの観光客などで会場周辺の大混雑が予想される。移動経路が多い内陸部ならともかく、湾岸部の人工島では経路が限られることから、物流業務にも支障が出る懸念はないのか。

「舞洲を南北と東西に貫く道路が交わる『舞洲東交差点』が立体化されることになっています。物流と観光車両の動線を分離できるようになるため、物流への影響を最小限に抑えられると考えています」(加島氏)

万博開催を契機として舞洲が改めて注目されることになるが、こうした大型イベントの開催時であっても物流機能は確保される。交通インフラなど構造的な課題も、プロロジスなどの事業者や行政の知恵と工夫で克服している。物流は社会に不可欠なインフラとして、国民の生活や産業活動を支えている。今回の万博は、こうした取り組みの認知につなげる好機になりそうだ。

「約3500坪」「約5000坪」のワンフロアを募集中

プロロジスは、こうした万博効果も背景に、物流施設2棟の営業活動を本格化している。

プロロジスパーク舞洲3の募集対象は、5階の全フロア(約3500坪)と3階・6階のそれぞれ半分の区画(各約1700坪)。5階フロアは一体での賃貸を想定しているが、2区画の分割でも対応する。「舞洲など湾岸エリアで3500坪のワンフロアを提供できる施設は希少。賃料設定を含めて、活用しやすい物件であることを訴求していく」(加島氏)

▲プロロジスパーク舞洲3

プロロジスパーク舞洲3の特徴は、床荷重が2.0トンを確保していることだ。一般的に物流施設の床荷重は1.5トンであることを考えれば、より強固な構造であることがわかる。「重量貨物のを取り扱う入居企業のニーズも対応できます。阪神港に近い物流施設ならではの優位性とも言えます」(加島氏)

ワンフロアを丸ごと活用できるメリットは、プロロジスパーク大阪2も同じだ。1階の約1700坪(3分の1区画)と2階・5階の約5000坪(全フロア)、6階の約3400坪(3分の2区画)を募集中。こちらは大阪市に拠点を置く医療機器メーカーが、大阪府内陸部にあるプロロジスの新設拠点への移転を機で発生した空きスペースの募集案件だ。約5000坪をワンフロアで使える物件は、大阪湾岸エリアでなくてもなかなか出回ることのない物件だ。

「『舞洲3』も含めて、スプリンクラー防火区画を広く取っているのが特徴です。トラックバースから見て横に壁がなく広々とした倉庫空間を活用できる点を訴求しています」(加島氏)。横方向に広い倉庫は、マテリアルハンドリング機器を展開が容易であるなど、荷扱い業務の動線設定がしやすい。機能的なレイアウトを設計するのに適しているという。

▲「プロロジスパーク舞洲3」は床荷重が2.0トンを確保した強靭さが特徴だ

プロロジスパーク大阪2の最大の訴求ポイントは、免震構造を採用している点だ。「大阪湾岸エリアにおける空きスペースのある物件で、免震構造なのはプロロジスパーク大阪2だけです。物流施設は一般的に耐震構造ですが、地震による建物の損傷をより受けにくい免震構造は、揺れに敏感な貨物を取り扱う入居企業を中心に、高い訴求力があります」(加島氏)

プロロジスが訴求する「4つのポイント」とBCP対応力

プロロジスが掲げる訴求ポイントは「大阪湾岸エリアで希少な広いワンフロアスペース」「横方向に開けた空間」「強度の高さ(床荷重・免震)」「さらに向上する交通インフラ利便性」の4点に集約される。しかし、加島氏はさらに荷主企業に知ってほしい特徴があると強調する。「舞洲のもう一つの強み、それはBCP(事業継続計画)への対応力です」

▲「プロロジスパーク大阪2」は免震構造が特徴的

どういうことか。ここで、大阪湾岸エリアのハザードマップを見てみよう。万博会場となる夢洲や、コスモスクエア駅など各施設の開発が進んでいる咲洲、大阪市西淀川区から兵庫県尼崎市の沿岸部にかけて、高波などのリスクが指摘されている。そのなかで、舞洲だけがこうしたリスクが低いとされているのだ。

なぜなのか。「大阪市内の多くが海抜ゼロメートル地帯であるのに対して、舞洲はほぼ全域で標高が5メートル以上と高く、高潮や高波の影響を受けにくい島なのです。沿岸部にある物流施設の立地条件として重要な判断基準となる潮位や波による影響の可能性について、舞洲は大阪湾岸の他のエリアと比べて優位性が高いのは間違いありません」(加島氏)

舞洲は地震時の液状化も発生しにくい地盤状況になっている。こんなところにも舞洲に物流拠点を構える利点が隠れている。物流関係者にとって、ぜひ知っておきたい知識である。

物流をテコに舞洲という「街」を育てていきたい

舞洲という立地ならではの優位性を生かして、大阪湾岸における物流施設開発を推進するプロロジス。万博開催を契機とした新たな交通インフラも活用しながら、さらに物流施設としての機能を強化していく。

(イメージ)

新型コロナウイルス感染拡大などを契機とした消費スタイルの多様化は、EC(電子商取引)サービスの急速な普及をもたらしている。全国各地の物流施設では、こうしたECの商品保管・配送拠点が次々と生まれている。もちろん、舞洲も例外ではない。

「かつては『陸の孤島』と呼ばれた舞洲も、万博開催を契機に鉄道の延伸が計画されるなど、物流適地としての利便性がさらに高まります。ここ舞洲は、物流施設の本格展開をスタートさせたプロロジスにとって強い思い入れのある場所。ぜひ、賑わい創出にも貢献していきたい」。加島氏の言葉からは、物流ビジネスをテコとした舞洲という街を盛り立てていく矜持を感じることができた。

■物流施設特集 -大阪湾岸編-