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米プロロジス、同業の米デュークを3兆円超で買収

2022年6月16日 (木)

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M&A物流不動産開発・運営大手の米プロロジス(Prologis)は、同業のデューク・リアルティ(Duke Realty)を吸収合併の形で買収すると発表した。買収額は260億ドル(3兆4840億円)。EC(電子商取引)の盛り上がりなどを背景としたアメリカでの物流需要をさらに獲得するため、デュークが南カルフォルニアなどで展開してきた物流施設や営業網を取り込み、市場競争力を磐石なものにする戦略とみられる。

プロロジスの日本法人「プロロジス」(東京都千代田区)の16日の発表によると、両社の合意に基づき、株式交換の手法で吸収合併を行う。デュークの株主が持つ同社株1株あたりプロロジス株を0.475株割り当てる。両社の株主の承認などを経て、ことし12月までに手続きを完了する予定だ。

デュークはアメリカの南カリフォルニアやニュージャージー、南フロリダ、シカゴ、ダラス、アトランタなどに物流施設を展開してきた。買収によりプロロジスが取得する資産は、延床面積1421万平方メートルの19か所の既存施設や、同102万平方メートルの開発中の施設、497万平方メートルの開発用地(延床面積195万平方メートルの施設相当)に及ぶ。

また、合併効果でコスト削減や運営効率化が進み、デュークの債務を引いても3億1000万ドル以上(415億4000万円以上)の短期的な増益効果が見込め、長期的にも年間4億ドル(536億円)近い収益への寄与が期待できると試算している。

プロロジスのハミード・R・モガダム会長兼CEO(最高経営責任者)は発表コメントの中で、「デューク社はアメリカの将来性がある立地に優れたポートフォリオを築き上げた」と合併相手を称えた上で、物流不動産運営への多様な手法と実績を持つプロロジスの下で、各施設の価値をさらに高められるだろうと述べた。

プロロジスは物流不動産開発・運営を手がけるREIT(リート、不動産投資信託)の先駆けで、アメリカのみならず世界のトップ企業。日本でも大都市圏を中心に物流施設の開発・運営を行い、J-REIT市場に上場するグループの投資法人が保有・運用している。

プロロジスによるデューク・リアルティの吸収合併、米国における物流施設開発業界の再編の呼び水になる可能性も

プロロジスがデューク・リアルティの吸収合併に踏み切った背景には、新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」が一段落して経済回復が顕著な状況下で、市場動向により柔軟で的確に対応できる機動力を高めたい思惑がある。コロナ禍による停滞から回復基調に転じているものの、ウクライナ情勢など不安材料も浮上。世界経済が先行きの見えない状況下で、より安定したビジネス基盤を構築する好機と捉えた。

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米国が世界最大の物流大国であるのは間違いない。経済都市が全米各地に点在し、都市間の輸送網は様々な輸送モードが高度に発達している。米国はECサービスの普及度合いも世界の最高水準にあり、こうした物流網の高度化を促している。海外ネットワークについても、米国発着の貨物は世界中を巡り、プロロジスはその拠点として倉庫機能を担うプレーヤーとして君臨しているのは周知の通りだ。

そんなプロロジスでさえも、やはり危機感が強いのだろう。未来永劫の成長を約束された時代はすでに過去の話で、産業の基盤を構成する物流ビジネスの性格ゆえに、地政学的リスクや経済の浮沈の影響に敏感なのは、避けようのない事実だ。プロロジスが吸収合併に動いたことで業界内でのバランスが崩れて、新たな再編の呼び水にならないとも限らない。コロナ禍からの回復基調からステージが変わりつつある今、米国における物流施設開発プレーヤーの機能分担が変化する可能性もあり、目が離せない。(編集部・清水直樹)