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IHI系、「重いモノを長時間運べる」ドローン開発成功

2022年7月14日 (木)

▲i-Gryphon(出所:IHI)

荷主IHIは14日、グループのIHIエアロスペース(IA、東京都江東区)が、重い荷物の運搬と長時間飛行の両立を実現させたエンジンと電気モーターによるハイブリッドドローン「i-Gryphon」(アイグリフォン)を開発したと発表した。東京ビッグサイトで7月20日から3日間開催される「第8回国際ドローン展」に試作2号機を初めて公開する。

IAが開発中のアイグリフォンは、マルチコプター(回転翼機)ドローン業界として最大級の可搬重量と飛行時間を実現した、ガソリン・ロータリエンジンと電気モーターで飛行するハイブリッドドローンだ。現在は試作2号機を活用して、自動運航と長距離通信機能を検証する飛行試験を実施している。

EC(電子商取引)サービスの拡大による消費スタイルの多様化や、少子高齢化による輸送分野での人手不足への対応策として、電動ドローンによる輸送の省人化・無人化を推進する取り組みに注目が集まっている。しかし、バッテリーの性能から滞空時間に制限があり、近距離輸送に絞った適用にとどまっているのが現状だ。

多くの電動ドローンやマルチコプターが搭載しているリチウムイオン電池は、鉛蓄電池やニッケル水素電池など他のバッテリーと比べて軽量なものの、長時間飛行するためには十分とは言えない。バッテリーをフル充電した場合は40分ほどの航続時間が確保できるものの、30キロの荷物を積んだ場合は数キロの重さのバッテリーで航続時間は5分から10分程度にとどまるなど、重量物積載と長時間飛行の両立が課題となっていた。

▲i-Gryphonと従来機との性能比較

IAは、この課題を解決するため、バッテリーの数十倍の質量エネルギー密度を持つガソリン・ロータリエンジンを採用。電気モーターと併用することで、重量物積載と長時間飛行の両立を可能とした。従来機と比べて安全性・操縦性・運用性を向上させる技術開発にも取り組んでいる。

IAは今後、アイグリフォンの正式発売に向けて、ハイブリッドシステムの開発だけでなくドローンとしての運用性の向上検討や安全を確保した自動運航技術の開発、最新の長距離通信技術の適用などを実施していく。

二律背反の課題に挑むドローン、その開発レースの行方にも注目したい

信頼できる荷物輸送モードの選択肢としてドローンが定義される時代は、本当に到来するのだろうか。そんな疑念が、急速に薄らいできているのを実感する。今回のIHIエアロスペース(IA)によるハイブリッドドローンの開発も、一定程度の距離を搬送できる実用的なモデルとしての可能性が期待できる取り組みの一つだろう。

ドローンの荷物輸送の壁になっていたのは、搭載できる重量と航続距離の両立だ。片方が一定水準をクリアしても、もう片方が条件を満たさない限り、物流用途としては現実的でない。とはいえ、バッテリーの性能や部品レベルを含めた飛行体としての機能など、技術革新の余地も決して少なくはない。

まさに二律背反とさえ言えるこの課題に対して、様々な事業者がその解決方法を模索している。全国各地で実証実験が繰り広げられ、それぞれ好意的な成果も出てきている。とはいえ、こうした実証実験は実用化への課題抽出の機会でもある。一つの課題解決の道筋がつけば新たな課題が浮上する、その繰り返しが現在地なのだろう。

開発中のドローンにも、実にさまざまな種類や機構が存在する。どの方式が最初に本格的な輸送モードとして定着するか。市場ニーズも含めて、IAを含めたドローン開発レースの行方にも注目したい。(編集部・清水直樹)