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輸送・配送業務の管理・計画システムに係るニーズ調査

輸配送DXに過半数が着手も、懸念は「投資効果創出」

2022年7月21日 (木)

話題LOGISTICS TODAY編集部は物流企業や荷主企業を中心とする読者を対象に7月5日から8日にかけて、物流現場における配車・配送業務の効率化に係るニーズ調査(有効回答数620件、回答率20.7%)を実施した。輸配送業務における最適な運用のあり方を模索するなか、輸配送の管理や計画業務を支援するシステムの活用などDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが浸透してきている一方で、投資効果への懸念や現場オペレーションの実態と適合しないなどの要因から本格導入に二の足を踏んでいる事業所も少なくない実態が浮かんだ。

EC(電子商取引)の普及や新型コロナウイルス禍を契機とした宅配サービスが浸透するなど、消費スタイルの多様化が加速。「新しい生活様式」の時代を見据えて、輸配送の効率化は社会インフラである物流を確保し機能をより強化していくために欠かせない取り組みだ。物流事業者と荷主企業が連携を深めながら、こうしたシステムの効果的な活用を含めた現場業務の最適化を進めるとともに、システムを提供する側にも、導入現場の実態や要望を丁寧に分析して問題を抽出したうえで最適な解決策を提示する努力が求められる。

回答者の主な内訳は、運送業35.5%、荷主企業18.9%、3PL事業者11.8%、倉庫業8.9%、その他物流企業11.9%。年商ベースによる事業規模の内訳は、100億円未満40.2%、1000億円以上23.1%、100億円以上300億円未満15.5%、500億円以上1000億円未満13.2%、300億円以上500億円未満8.1%――だった。(編集部特別取材班)

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社会のさらなる「物流品質」の向上に対応した輸配送管理・計画システム

サプライチェーンは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの一連の流れだ。その現場で起きているのは「消費者の物流ニーズの高度化」と「物流現場における人手不足やデジタル化の遅れ」という、いわば“二律背反”の事象の顕在化だ。

店頭からインターネットへ。消費者の購買スタイルの変化は急速に進んでいる。コロナ禍による「巣ごもり需要」が拍車を掛けた格好だ。その結果、より早く正確に商品を運ぶ要請が強まっている。

(イメージ)

一方で、トラックドライバーや倉庫での荷扱いに携わるスタッフは若い世代の採用が難しく高齢化が進む。その結果として、勘と経験に依存した属人的で汎用性の低い業務スタイルから脱却できずにいる事業所が未だに多いのだ。

こうした対立する概念をどう両立させるか。そこで注目されているのが、輸配送管理・計画システムだ。つまり、荷物を無駄なく効率的に運ぶためのデジタル化であり、顧客ニーズに合わせたスケジュール計画を策定し、商品を出荷してから届け先までの輸配送に係る情報を一元的に管理する機能だ。

過半数が輸配送業務におけるDXに着手

それでは、物流・荷主企業は輸配送業務におけるDXの取り組みをどこまで具体的に進めているのか。DX施策の状況を聞いたところ、「経営層から『輸配送におけるDX』のメッセージが発信され、実際に取り組みが始まっている」との回答が全体の40.6%に達した。「経営層から『輸配送におけるDX』のメッセージが発信されていないが、現場では取り組みを始めている」(13.5%)を含めて、過半数が輸配送業務におけるDXの取り組みに着手していることが分かった。

一方で「経営層から『輸配送におけるDX』のメッセージが発信されているが、実際に取り組みは始まっていない」と23.4%が回答。輸配送業務の効率化を支援する先進機器・システムの導入について、経営層は推進する意思を明確化しているものの、現場では既存スタイルからの脱却が思うように進んでいないのか。あるいは、経営層のメッセージそのものが具体性・実効性を欠いた「掛け声」だけに終わっているのか。いずれにせよ、経営と現場における認識の乖離(かいり)がある状況では、あらゆる業務の効率化・最適化は見通せない。もちろんDXの取り組みも例外ではない。

ましてや、「経営層から『輸配送におけるDX』のメッセージが発信されておらず、現場にも課題意識がない」(15.0%)事業者は、輸配送業務の効率化そのものを必要と考えていない可能性がある。もちろんDXだけが業務最適化の手段ではないのだが、物流を担う現場において、仕事の「改善」を模索する取り組みは欠かせない要素であることは認識しておく必要があるだろう。

輸配送のオペレーションに対する問題意識は強いものの、改善行動はやや遅れ気味に

それでは、各社はどの業務について特に課題を認識しているのだろう。自社における物流部門の課題について回答を求めた。

「課題である」との回答が最多だったのは、「情報化(物流システム/電子タグなど)の新規導入」(55.6%)、「物流システム/ネットワークの見直し」(52.4%)、「輸配送における物流オペレーションの改善」(52.4%)、「働き方の再設計(組織・人員の見直し)」(51.9%)、環境・省エネルギーへの配慮」(48.9%)――となった。輸配送における物流オペレーションの改善はもちろん、システムやネットワーク、組織のあり方まで含めた現場の効率化・最適化が最大の課題と位置付けられていることが裏付けられた。

とはいえ、「改善に取り組んでいる」項目については、こうして認識されている課題への対応が一定程度進んでいるものの、「保管や仕分けなどの物流オペレーションの改善」(40.6%)などは倉庫内業務と比べてやや遅れている印象だ。輸配送業務における課題への対応を講じるタイミングは、時間外労働の上限規制などに代表される働き方改革関連法の施行に伴い生じる「物流における2024年問題」を見据えて今後、本格化してきそうだ。

具体的な行動における優先順位の兼ね合いはあるにせよ、輸配送業務の効率化・最適化に対する認識はあることが分かった。ここで、現在導入しているシステムの種類について質問したところ、輸配送に係るシステムでは輸配送管理システムが24.0%、輸配送計画システムは21.3%だった。WMS(倉庫管理システム、47.7%)やERP(基幹システム、30.2%)などの基盤系や、配車手配・マッチングシステム(29.2%)を中心とする車両関係のサービスの導入が先行するものの、輸配送管理・計画システムも浸透してきているようだ。

消極派「自社の現場への導入には運用面での懸念もあり、投資効果を明確化できない」

ここからは、輸配送管理・計画システムに対する期待や課題について掘り下げていく。その前に、まずはこうしたシステムの「消極派」の意見を聞いてみよう。システムを使用しない理由について聞いたところ、「費用対効果の可視化ができない」(37.7%)、「現在のオペレーションに合わない」(36.5%)、「現在のシステムとの統合ができない」(21.6%)――が上位を占めた。

端的に言えば「自社の現場への導入には運用面での懸念もあり、投資効果を明確化できない」といったところだろうか。システムの導入で現場が改善されなければ、まさに「絵に描いた餅」と帰してしまう。導入する現場と提案する企業とのコミュニケーションも含めて、より実効的な連携が欠かせない。そこを乗り越えられない限り、輸配送現場における業務の最適化は実現しないのだ。

輸配送管理・計画システムの特徴・機能で魅力に感じる点についての質問では、「業務工数の削減」(63.4%)、「自社業務に合わせてカスタマイズできる」(37.1%)、「データ活用が可能」(35.8%)、「委託費の削減」(32.6%)――と回答。システム導入による委託費や工数の削減で最も期待することについての回答は、「業務の可視化」(31.9%)、「配車にかける時間の削減」(23.9%)、「コスト・品質ともに最適な委託先の選定」(21.3%)――となった。

輸配送業務DXへの懸念は「投資効果の創出」、一方で属人化回避へ導入意欲も

ところで、輸配送業務におけるDXに対して物流企業や荷主企業が抱く懸念とは何か。トップは「運用にかかるランニングコストに対するメリットが説明できない」で40.0%が回答。「現場や運送会社への業務浸透が難しい」(38.5%)、「初期導入コストに対するメリットが説明できない」(36.3%)、「どのようなシステムや運営会社を選べばよいか分からない」(36.3%)、「導入により、むしろ業務が煩雑化する可能性がある」(35.6%)――と続いた。

コスト面つまり投資効果の創出への強い懸念がうかがえる。こうした投資効果をめぐる議論は、あらゆる物流現場における先進機器・システムの導入段階で生じるが、その着地点は「現場における的確な問題抽出を踏まえた、最適な解決方法の選定」であるはずだ。その原則から逸脱しない形で検討を進めながら、試験的に少しずつ導入してみることだ。「まずはやってみよう」。それが思いもよらない効果をもたらすきっかけになることも少なくないのだ。

とはいえ、こうしたシステムの導入は決して安い買い物ではないのも事実だ。輸配送管理・計画システムを導入する企業にそのきっかけをたずねると、「担当者への属人化リスク」(49.7%)、「人手不足への懸念」(42.5%)、「他社に比べて自社のIT活用の遅れに気付いたこと」(29.1%)――を挙げた。

現場業務における高齢化は、長年従事してきたベテランに依存できているうちは問題が顕在化しないものだ。しかし、遠からず確実に世代交代のタイミングはやってくるのだ。こうした観点でみると、人手不足への対応も含めて早めに効率化の方策を具体的に検討する必要があるだろう。

輸配送管理・計画システムへの強い期待、それは「属人化からの脱却」

輸配送業務の管理・計画システムの導入にあたって、特に期待するポイントを尋ねた。先ほど、輸配送管理・計画システムにおける魅力について、業務工数や委託費の削減を挙げる回答が目立ったが、ここでも同様の傾向が見られた。「正確で迅速な処理」(41.1%)、「業務の効率化」(40.0%)、「業務の標準化」(38.5%)、「経営資源・データの一元管理」(35.6%)――などの回答からは、業務の効率化もさることながら、標準化や一元管理といった「属人化からの脱却」への期待が強い印象を受ける。裏を返せば、この部分における問題意識が現場で強いことを示している。

最後に、輸配送におけるDXの取り組みを進めるにあたっての情報収集方法について聞いた。「物流関連の展示会」(51.5%)、「物流専門媒体の主催するセミナー」(47.4%)、「ウェブ検索」(45.2%)、「物流専門の業界紙や専門誌」(40.0%)――が上位を占めた。

「国際物流総合展」「関西物流展」など全国規模の見本市におけるブースや講演による訴求、さらにはシステムを提供する事業者による各種セミナー、さらにはこうした業界動向を掘り下げたメディアなど、幅広い情報ソースがあるのが現代だ。輸配送業務の効率化を図るには、まずは問題抽出とそれを解決する取り組みの策定が欠かせない。そのためのリソースを有効活用するためにも、こうした情報の獲得手段の確保は重要なポイントだろう。

次回は、関心の高さや導入実績を指標とした「輸配送管理・計画システムランキング」をまとめる。

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