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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第6回

数理モデルで物流改革を/グルーヴノーツ最首社長

2022年9月6日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第6回は、グルーヴノーツ(福岡市中央区)の最首英裕社長です。

現在のグルーヴノーツを創業した2011年、世の中の変化のスピードは今ほど激しくありませんでした。それから10年余り。IT技術の革新は社会が求める水準をはるかに上回る速さで進みました。もはや、プログラムを組んでシステムを構築していくやり方は過去のものとなりつつあります。むしろ、最先端の技術は、言語ではなく数学的に表現できるため、よりシンプルで変更に強いシステムをつくることができる。こうした取り組みが将来のさらなる社会の変化に対応できる基盤づくりにつながると考えています。

そこで我々が最も注力する領域の一つが、物流です。少子高齢化で人口がどんどん減少していくなかで、新型コロナウイルス感染拡大を契機とした消費スタイルの多様化が加速。社会を支えるインフラとして欠かせない物流は、これまで経験したことがないほどの大きな問題を抱えています。

こうした状況を受けて荷主企業がサプライチェーン(SC)の現状に強い危機感を抱いているのと対照的に、いわゆる物流事業者の切迫感がどうも弱く変革へのモチベーションも今ひとつなのが正直な印象です。

もちろん、荷物の輸配送を担う物流事業者にとって改善の取り組みと言えば、もはやリードタイムの短縮くらいしか手の打ちようがないのが現実でしょう。むしろ「ドライバーがいなければ商売にならない。それができるのはウチだけだ」と考えているとしたら、そちらのほうが問題でしょう。業種の垣根が低くなっている今の産業界で、荷主が自前で輸配送をやると決めてしまったら、物流事業者は存在しなくなる可能性もあります。

そもそも、この国に「物流業界」という概念があるのでしょうか。製造業に強い運輸企業や食品特化型の倉庫業など、特定の領域で物流サービスを提供する事業者もありますが、汎用的な物流ビジネスを展開する事業者は限りなく少ないはずです。社会における物流ニーズのさらなる高度化が進むと予想される今後、大資本による中小企業の吸収などで再編が急速に進むのは避けられないかもしれません。

こうした物流が抱える問題の解決につなげられると考えているのが、量子コンピューターや機械学習を活用できるクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)です。「MAGELLAN BLOCKS」が提供する数理モデルを駆使して、事業の「可視化・分析」「変化の予測」「最適化」を図ること、またそのシミュレーションを可能にすることで、企業は変化する状況に適切に対応し続けることができます。

物流業務の改善に向けた取り組みを進める場合、現状の限界や課題を洗い出したり、また未来の「あるべき姿」を決定し、その実現に向けて今からどんな備えができるかを考えていきます。物流センターの場合は拠点の配置状況や人員数、その能力などさまざまなデータに基づいて最適化計算を行い、結果をデジタル上でシミュレーションします。サイバー空間上で物流の機能を“再現”することで、実現の可能性を探っていきます。こうして弾き出した方策のなかから、実行できるものを選んで具体的に事業に取り込んでいくイメージです。

▲MAGELLAN BLOCKSによるシミュレーションイメージ

なぜこうしたシミュレーションが有効なのか。それは、IT技術の進展などを契機とした社会の変革が今よりもさらに加速すると考えられるからです。現状のものを改善していくだけでは追いつかなくなっていきます。こうした場合のアプローチは、むしろ未来をイメージして現状との大きなギャップを明確化した上で、未来像の実現の向けて取り組んでいくわけです。

大きな失敗をしないために、デジタル上で「小さな失敗」つまり試行錯誤を繰り返すことで、未来の姿を現実化していく作業です。これが我々が提案する問題解決の手法であり、サプライチェーンを含めた物流危機の脱却を支援できる取り組みであると考えています。

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