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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第3回

RFIDで物流変える「夢」追って/RFルーカス浅野社長

2022年7月19日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第3回は、RFルーカス(東京都渋谷区)の浅野友行社長です。

RFルーカスに入社したのは2018年11月です。UHF帯のRFID(電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術)を活用した位置特定技術の市場開拓に取り組んでまもなく4年になります。ことし3月16日付で社長に就任し、経営の舵取りを担う立場になりました。

世界を見渡すと、この1年でRFID市場をめぐる動きが一気に加速しました。海外では本格的な導入に踏み切る企業が相次ぎ、日本にも速やかに波及するでしょう。いよいよ、「RFIDが物流現場を変える」時代がやってきます。そんな時代の到来を、私は心待ちにしていました。なぜなら、それこそがRFルーカスで実現したい夢だからです。

▲RFIDを読み取る自動搬送ロボット(出所:RFルーカス)

社会に不可欠なインフラであるはずの物流。しかしその現場ではデジタル化の遅れなど様々な問題を抱えている。こうした認識が頭をもたげてきたのは、商社で石油や天然ガスのトレードを担当していたころでした。例えば、港の輸出入に係る手続きは書類が中心でデジタル化が進んでいませんでした。おそらく何十年も仕事の仕方が変わっていないのでしょう。

商社の仕事自体も、巨大プロジェクトを進めるダイナミックな側面がある一方で、自身で創意工夫を重ねるよりも同業他社との競合で優位に交渉を進めるため関係先への根回しなど政治的な配慮が求められることも多く、いわば「大きな組織の一員」以上の存在ではなかったように思います。むしろ、新たな「市場」を生み出したいとの渇望があったのです。

そこで、私の将来設計は決まりました。物流現場における最適化を実現するため、自身の裁量でビジネスを生み出す。方向性が明確になると、その実現に向けて動き出しました。商社を退職してある広告代理店に入社。社内ベンチャーの役員として、経営の実践を積みました。RFルーカスと出会うまでのわずか1年半でしたが、夢の実現に着実に近づいているのを実感しました。

RFルーカスでは、COO(最高執行責任者)としてRFIDの物流業界を中心とした普及拡大を進めました。まだ小さな所帯ですから、マーケティングも自ら担いました。創業者の上谷一・現会長とも相談しながら、物流現場における課題解決のイメージを描きました。倉庫にある在庫の中から商品をスピーディーに探し出す、現場従業員の移動経路をたどることで庫内における最適な動線を考える――。いろいろと提案できるストーリーを考案するうちに、RFIDには無限の可能性を秘めているとの確信を深めることができました。

ところが、いざ物流現場を巡ってみると、RFIDへの認識はまだ深まっていないと実感しました。「金属製の商品には使えないんでしょう、うちでは無理だ」など、明らかに機能について誤解されているケースもありました。これは事例を積み重ねて実績を示すしかない。そう思うようになりました。さすがに、今ではようやくRFIDの機能への理解が私の入社当時と比べれば進んできたように思いますが。

RFルーカスは2015年に誕生したスタートアップです。確かに少ない人数で仕事を回す忙しさもありますが、それゆえに「自分たちが社会を変えていく」「世の中の問題を解決できうる」存在であると自認できるモチベーションがあれば、これほどやりがいのある仕事はありません。もちろん、他のスタートアップや大手企業とも連携して、新たなビジネスを創出できるのも、我々のような企業の強みでしょう。

私は、RFIDは他の機器やシステムと連携することで、さらに幅広い機能を発揮すると考えています。RFルーカスの技術メンバーにもこうした機運が高まっており、決して自社開発のみに凝り固まることなく柔軟な発想で物事を考えられる人材がそろっています。

RFルーカスでは、倉庫の在庫管理システムや生産工程管理による循環物流支援、さらには緊急出荷品への対応など、RFIDをフックとした様々なビジネスアイデアが生まれています。こうした発想力だけでなく、それを実現できる機動力も、スタートアップならではの魅力です。それが物流を変えていく。それが私の描く新たな夢です。(編集部・清水直樹)

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