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取引企業に楽観と不安、日本ロジ経営破たん

2022年9月2日 (金)

ロジスティクス物流業界に激震が走った日本ロジステック(東京都千代田区)の経営破たん。楽天モバイルが絡んだ刑事事件に展開する異例の様相を見せる中、取引企業の中には楽観と戸惑い、不安が入り交じる。サプライチェーンを維持するべく、多くの企業が当面の業務を継続しながら、事態の行方を見守る構えでいる。

▲日本ロジステックが入るビル(東京都千代田区)

「いま目の前の仕事が止まるようなことはないし、うちが日本ロジの仕事をやめる選択肢もない」。LOGISTICS TODAYの取材に、こう言い切るのは東関東のある中堅運送会社の役員。倉庫の大家として、またトラック輸送の下請け(協力会社)として日本ロジステックと長年取引を続けてきた。東京地裁が8月30日に出した保全命令で29日までの代金支払いがストップされ、3か月分の賃料や受託料が未払いのままとなったが、その後も倉庫や運送の通常業務を続けている。

この役員は9月1日の債権者説明会にも出席した。破たんの引き金となった「不正」について、会社側から一切説明がなかったことに引っ掛かるものを感じたが、「でも黒字なんだし、30日以降の代金は支払うと聞いた。銀行口座の問題(仮差し押さえ)も、じきに解決するのでは」と、事業継続に楽観的な見方を示す。ただ、この会社は他の複数の物流企業とも取引があり、財務も比較的しっかりしている。債権者説明会に出席した別の中小運送会社の経営者は「下請けの代金が入らないと正直ピンチ。さまざまな経費が支払えず、他の会社の仕事もできない」と頭を抱えていた。

楽天モバイルとの関係を注視

全国に40か所以上の物流センターを構え、保管、配送、不動産仲介、通関・フォワーディングなど数多くの業務を手掛ける総合物流の日本ロジステック。協力会社など371社の債権者をはじめ、荷主なども含めればステークホルダー(利害関係者)はかなりの数に上る。多くの関係者が、楽天モバイルへの水増し請求と同社からの刑事告訴に驚き、その行方を注視している。一つの不正で企業全体が倒れてしまったことに首をかしげる経営者もいる。

南関東のある中小倉庫会社も自社施設を日本ロジステックに賃貸している。破たんの報を受け、経営者は「まさか」と驚いたという。取引は30年と長いが、今回浮上した疑惑が気掛かりな様子。「テナントを別の会社に切り替える可能性が全くないわけではない」と語った。東海地方の倉庫会社の役員も「賃料を前払いで受け取っているので影響は軽微」としつつ、「新たなテナント探しも考えなければ」と冷静に話した。

債権者説明会で会社側の説明を最後まで真剣に聞いたという、ある環境系の取引企業は本誌の取材に「日本ロジさんにはこれまでもさまざまな面で助けられた。事業継続にできる限り協力したい」と好意を隠さない。突然の経営破たんを残念がりながら、最後には「やはり支払い条件が心配だ」と不安を漏らした。民事再生手続きでは今後、債権調査や財産評定を経て、ことし11月初旬に弁済率を定めた再生計画案が裁判所に提出され、各債権者にも送られる。同計画案は2023年1月初旬の債権者集会に諮られ、裁判所の認可を経て債務の弁済が行われる。

楽天モバイルが刑事告訴、日本ロジ水増し請求