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川上産業、緩衝材の再生で物流を支援/国際物流展

2022年9月14日 (水)

▲川上産業の出展ブース

話題トラックなどで運ばれる荷物を衝撃から守る「気泡緩衝材」。EC(電子商取引)サイトで購入した商品から各種機器まであらゆる荷物の輸送時に重宝されるほか、移転時における事務用品や家財道具の梱包にも活躍するなど、物流現場のあらゆるシーンに活用されている。

この気泡緩衝材を「プチプチ」の商標で市場展開する業界最大手の川上産業(東京都千代田区)。「国際物流総合展2022」の会場では、このプチプチの再利用にかかる取り組みを紹介。緩衝材は再利用できる商材であることをアピールし、物流業界における環境対応にも貢献する狙いだ。

(イメージ)

気泡緩衝材は、2枚のポリエチレンシートで構成。片方のシートに作った円柱状の突起に空気を閉じ込めて密封することにより、その空気圧で緩衝材として機能する。1950年代に米国で誕生した気泡緩衝材は、大手コンピューターメーカーが製品輸送時に活用したことで一気に市場が広がり、国内でも使われるようになった。

1968年創業の川上産業は、この気泡緩衝材を国内に浸透させた第一人者と言える。顧客が自社の気泡緩衝材をそう呼んでいたことから、94年には「プチプチ」を商標登録。その形状も相まって気泡緩衝材の代名詞として定着した。

いわゆる“プチプチ”市場を確立した川上産業。普及が一巡するなど製品市場が頭打ちになるなかで、注力しているのが気泡緩衝材の再利用だ。再生原料使用率が8割を超えるものの、その多くは工場廃材に由来するものであり、物流サービスなどで使用された後の原料使用率は1割に満たない。

川上産業は気泡緩衝材の再利用ビジネスの拡大を図る上で、この点に着目。積極的な使用後の気泡緩衝材のリサイクル活動に乗り出している。その方向性は、気泡緩衝材だけでなく梱包箱へ再生、さらにはランドリーバッグやごみ箱、物流用パレットといった幅広い分野へと広がっている。

▲再利用されたプチプチはさまざまなものへ姿を変える

とはいえ、そもそも気泡緩衝材を再利用できるものであることを一般消費者が理解しているケースはまだまだ少ない。川上産業は、将来の社会の担い手である小学生などに、環境問題に対する興味や関心を喚起する「プチプチ出前授業」を実施。高校生にはリサイクルによる社会における環境問題への対応策を解説する「プチプチ講演会」を開催している。

川上産業は国際物流総合展2022のブースで、こうした取り組みを訴求。今後は店舗などにも気泡緩衝材の回収ボックスを設置するなどして、「再利用するのが当たり前」と言われるまで取り組んでいく決意だ。

持続可能な社会インフラを支援するリサイクル活動のヒントを提供する川上産業

物流業界における脱炭素社会への貢献策が、近年叫ばれている。海運であれば高燃費な輸送船の導入、長距離輸送であれば鉄道や船舶といった環境負荷の低い輸送モードの積極的な活用、ラストワンマイル輸送ならばEV(電気自動車)の活用といったところか。しかしこうした輸送手段以外にも、物流というサービスにはさまざまな環境負荷低減の実現に向けた取り組みの対象がある。川上産業による気泡緩衝材の再利用を巡る活動は、そのヒントを提供していると言えるだろう。

▲粉砕したプチプチを固結させたもの

川上産業のリサイクル活動は、ただ使用後の気泡緩衝材を回収するだけにとどまらず、その出口戦略として幅広いパターンを用意している。さらに、効率的な回収プロセス策も実用化している。密度が小さくかさばる使用後の気泡緩衝材を粉砕して固結させることにより、トラックでの輸送時により多くの再生原料を運べるように工夫している。あくまで収益ベースを意識しながら、リサイクルにもつなげる。企業による環境負荷低減活動で陥りがちな「理念先行」の「絵に描いた餅」にしないための取り組みだという。

川上産業は、気泡緩衝材の再生ビジネスを今後の成長領域の一角と位置付けていく考えだ。物流という社会インフラが持続的な成長を続けるための取り組みとして、こうしたリサイクル活動は強い示唆を提供している。国際物流総合展をはじめとするこうした見本市は、その絶好の機会になる。(編集部・清水直樹)

国際物流展2022特集、現地取材記事を随時公開