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物流施設で自動化機器管理標準化へ、8社が実験

2022年10月24日 (月)

サービス・商品大和ハウス工業グループで、物流施設管理システム(WMS)を中心にサービスを提供するフレームワークス(東京都港区)が、キリンビバレッジや日立物流、BIPROGY(ことし4月に日本ユニシスから商号変更)など計8社と共同で、物流施設での自動化機器の制御・管理システムに係る標準化や、商慣行に係る業務対象物の標準化のモデルケース創出に乗り出す。大和ハウス工業が24日、経済産業省が公募した事業の2022年度「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業」で、同実験に関する提案が採択されたと発表した。

実証実験に参画するのは、このほかシステム設計のアンシェル(東京都港区)、スマート向上構築支援などに取り組むFAプロダクツ(同)、ロボットシステムインテグレーターのオフィスエフエイ・コム(栃木県小山市)、産業用ロボット向けソリューションを提供するMujin(東京都江東区)。フレームワークスが採択先で、他の7社は委託・請負先になり、異業種が連携して実証実験に取り組む。

(イメージ)

実験のポイントは、物流施設でのさまざまな自動化機器を統一的な方法で制御・管理するための標準化(システムI/F標準化)、商慣行によって形状が異なる段ボールケースを自動化機器が扱いやすくするための標準化、異種の複数事業者での標準化検討活動の推進――の3点。

発表によると、 物流施設では、さまざまな自動化機器を導入する際、既設の上位システムやその他機器と連携させるためのソフトウエアなどのカスタマイズが必要となる。

システムI/F標準化により期待される効果として、このソフトウエアなどのカスタマイズにかかる期間の短縮や人件費抑制を図るとともに、自動化機器稼働までの期間短縮やコスト低減が挙げられる。実験では、多くの物流施設で普及が進むアーム型ロボットを使ったデパレタイズと、かご車積み付けを対象に、ロボットの社会実装を加速するためシステムI/F仕様の設計を目指す。

また、実証実験は物量が多く重量もあって荷役負荷の高い清涼飲料を対象に、ロボット把持が比較的難しいとされる特定の大型飲料包装ケースで行う。ロボット導入の実現に向け、標準的な包装仕様の設計に取り組む。

経済産業省はロボット政策として、ロボットが導入しやすい環境「ロボットフレンドリー」(ロボフレ)環境を推進しており、8社は「サプライチェーン・物流の効率化による生産性の向上と流通・物流業の持続可能な成長に向けて取り組む」としている。

先進機器「標準化」への機運こそが、真の「物流DX」効果創出の契機になる

業務量の増大や人手不足といった、物流現場における構造的な問題の解決策として注目を集めるDX(デジタルトランスフォーメーション)。こうした物流現場の業務改善に向けた動きは、サプライチェーン全体の最適化に直結する取り組みとして認識されるようになってきた。

一方で、こうしたDX施策をビジネスチャンスと捉えて多くの事業者が業界の垣根を越えて参入してきた結果、新たな問題も浮上している。それがDXにおける「標準化」の議論だ。

今回のフレームワークスなど8社による実証実験の提案は、こうした物流施設における自動化機器の制御・管理システムの標準化を推進する取り組みであるところに意義がある。

(イメージ)

物流現場における業務支援ロボットの普及は、ここ数年間で急速な広がりを見せている。少子高齢化による現場従事者の高齢化や不足が顕著となっている実情を反映して、IT企業や電気機器メーカーなどがこうした物流ロボット領域に大挙して参入してきた。

しかし、各社が培ってきた強みを生かした先進ロボットは単体では効果を発揮するものの、多機能との連携や「全体最適」という観点では必ずしも優れてはいないのが実情だ。

いわば、各社がそれぞれ最適化を独自に進めた挙句、それぞれ連携することが困難になってしまった──。そんな残念な結果になっているのだ。ITシステム企業のなかには、こうした「部分最適」「局所最適」から脱却して先進機器・システムの全体最適を図る取り組みを推進する動きが始まっている。今回の8社連携による実証実験提案も、こうした文脈で生まれた取り組みと言えるだろう。

8社は、物流施設におけるさまざまな自動化機器を統一的な方法で制御・管理するための標準化を推進するという。この「統一的」「標準化」という発想こそが、物流DXによる現場の効率化・最適化を実現するために避けて通れないプロセスにしていく必要がある。こうした機運が広がることにより、国内の物流現場にも真の意味のDX効果が創出される時機が訪れたと信じたい。(編集部・清水直樹)

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