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高速深夜割は走行距離分30%に、適用時間は拡大

2023年1月20日 (金)

行政・団体国土交通省と東日本、中日本、西日本の3高速道路会社は20日、ETC(電子料金収受システム)を利用した高速道路の車両通行料金の深夜割引について、走行距離分のみ30%割引とする制度に変更すると発表した。2024年度中に見直す予定で、割引適用時間帯は現行の0時〜4時から22時〜翌5時へと拡大する。

割引適用待ちトラックなどの滞留改善を図るとともに、ドライバーの負担軽減につなげる。具体的な導入時期は決まり次第発表するとしている。

▲見直し案では、深夜割引適用時間帯に走行した分のみ3割引となる(クリックで拡大、出所:国土交通省)

発表によると、制度変更に伴い制度見直しから5年程度は、運送事業者など長距離の高速利用者を念頭に、400キロ以上の長距離の割引率は40〜50%に拡充。1000キロを超える走行にも激変緩和措置を講じて負担増に配慮する。22時台に高速道路を流出した場合については、割引率を30%から20%に縮小して適用する。

現行制度下では、0時〜4時の割引適用時間帯に短時間でも走行すれば、高速に入ったり出たりする時間を問わず一律で料金を30%割り引いている。このため、東名高速道路の東京料金所で0時前に深夜割引適用を待つトラックが滞留するなどして、一般道の沿道環境やドライバーの長時間労働に対する影響を懸念する声が上がっていた。国の社会資本整備審議会道路分科会からは、こうした課題や運転手の負担軽減のため、今回の制度変更を求める意見が出ていた。

制度見直しに伴い、割引適用時間帯の走行分を把握する必要があるため、高速道路上にはETC無線通信専用アンテナを設置し、システム回収も行う必要がある。だが、世界的に半導体不足が起きていることを理由に、導入時期に影響を及ぼす場合があるとしている。

高速道路の新しい割引制度、物流業界が最適な活用方法を見出すべきだ

深夜0時前。川崎市宮前区の東名高速道路の上り東京料金所では連日、大型トラックが長い列を作る。0時を迎えた瞬間、それを待ちわびたトラックが料金所のゲートを一斉に通過していく。まるで号砲とともに飛び出す競技選手のように――。

こうした風景も過去の話となるのだろうか。道路会社3社が、高速道路における深夜割引制度を2024年度中をめどに見直す方針を明らかにした。「物流の2024年問題」をはじめとするトラックドライバーの就労環境の改善を意識した取り組みだ。

こうした深夜割引制度は、ETCによる時間帯別割引の一つであり、政府による経済対策の色彩が濃いものであった。夜遅くに出発して深夜に高速道路を走行して翌朝早い時間帯に配送先の拠点に荷物を届ける幹線輸送トラックにとっては、3割安い通行料金で利用できることが収益確保の観点からも大きなメリットをもたらしたのは事実だろう。

(イメージ)

ところが、制度設計における誤算もあった。それは高速道路の通行料割引制度、とりわけ深夜割引を前提とした物流費の値下げ圧力が予想以上に強く働いたことではないだろうか。

EC(電子商取引)の普及が本格化し始めたところに、新型コロナウイルス禍による宅配需要のさらなる高まりが追い打ちをかけた。宅配ビジネスが成立するには、輸送や倉庫といった物流機能の裏付けが欠かせない。

さらには、宅配サービスの対象となる商品の単価水準も考慮すれば、荷主には物流コストを可能な限り抑えることで収益を確保する必要にも迫られた。いわば、深夜割引は社会の要請に対して皮肉にも、利害が一致していたというわけだ。

ここでしわ寄せがいったのが、輸送の担い手であるドライバーだ。深夜割引を享受できる時間帯に高速道路を走行する業務スタイルが「最適」とされ、それに合わせたサプライチェーンが前提となることで、荷主と消費者のニーズが満たされる。深夜割引は、図らずもこんな構図を作り上げてしまったのだ。

新たな高速道路の割引制度。経済性の追求が命題だった現行制度で顕在化した問題点を、どう克服していくのか。それは政府や道路会社よりも、荷主をはじめとする物流関係者の総意で進めていくべきなのは、言うまでもない。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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