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現場のリアルに寄り添う「紙をなくさないDX」

2026年2月4日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「airlabo、ブラウザー完結の多言語AI-OCR」(1月20日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス物流・建設・製造の現場において、「2026年問題」への対応は待ったなしの状況だ。しかし、声高に叫ばれる「ペーパーレス」や「完全デジタル化」の波が、かえって現場を疲弊させている側面はないだろうか。手書き文字の判読という古典的な課題と、デジタル化の限界。その中間に求められる「現実的なDX」の姿を、多言語対応AI-OCR「paper-base」(ペーパーベース)を展開するairlabo(エアラボ、横浜市金沢区)への取材から考察する。

解決されない「読めない文字」のストレス

外国人スタッフが現場の主軸となるなかで、日報や検品票に記される「手書き文字」の扱いは、もはや個人のスキルの問題を超えている。アルファベットやカタカナ、さらには母国語のクセが混じった筆跡は、日本人の管理者にとって解読に多大な時間を要する「ノイズ」となりつつある。

同社は、従来のOCRが文字の「形状」だけで判断していたのに対し、LLM(大規模言語モデル)を活用することでこの課題に向き合っている。「前後の単語や文脈からAI(人工知能)に推論させることで、現場で書かれた文字の補正を実現した」と同社は説明する。事務負担を軽減するためにデジタル化を急ぐのは論理的だが、一方で現場には根強い拒絶反応も存在する。

「スパッとデジタル」が通用しない現場のリアリティ

「今日からすべてタブレット入力に」という号令が、いかに現場を混乱させるか。IT部門の理想とは裏腹に、物流現場にはデジタル化を阻む物理的な制約が多すぎる。手袋をしたままの操作や、不安定な通信環境。何より「紙なら3秒で書ける」ことが、デジタルツールでは数分かかることもある。この数分の積み重ねが、分刻みのスケジュールで動く現場では致命的なロスになることもある。

同社によれば、同サービスはスマホのブラウザー上で画像の軽量化処理を完結させることで、通信環境に左右されにくい「1秒」の高速レスポンスを実現したという。しかし、重要なのは技術そのものよりも、「現場スタッフに確認・修正を求めない」という運用設計にある。現場は「撮るだけ」に徹し、管理者が後から確認する。この割り切りが、現場の足を止めないための鍵となる。

「撮るだけ」で完結する物流現場のフロー

実際の物流現場では、どのような流れで活用されるのか。例えば入庫検品の際、外国人スタッフは従来通り、紙の検品票に数量や状態を記入する。作業が完了した段階で、手持ちのスマートフォンから専用URLにアクセスし、その帳票を撮影する。現場での作業は、実質的にこれだけだ。

撮影された画像はクラウドへ送られ、AIが文字を認識。事務所のPC画面には、即座にデジタル化されたデータと、撮影された証拠画像が並んで表示される。管理者は、現場から回ってきた紙の束を一枚ずつ手入力する手間から解放され、画面上でAIの推論結果を最終確認するだけで済む。この「現場はアナログ、管理はデジタル」という分業こそが、現場の負荷を最小限に抑えつつ、全体の効率化を最大化する理想的なフローといえる。

「完全デジタル」と「完全アナログ」の断絶を埋める

現状のソリューションの多くは、二者択一を迫る傾向にある。アナログのままでは事務所での手入力という「隠れた残業」を生み続け、完全なデジタル化は現場の作業スピードを損なう。効率化が必要なのは誰もが理解しているが、この両極端な選択肢の間に、現場が最も必要とする「ちょうどいい解決策」が抜け落ちていたのではないか。

同社が提案するのは、あえて「紙をなくさない」アプローチだ。「現場のフローを一切変えないことが、ITアレルギーのある企業にも受け入れられる」と同社は回答する。この「中間」の解決策により、事務コストの削減効果はおよそ80%に達するという。

▲紙の報告書をスマホで撮影するだけで、自動連携する「paper-base」(出所:airlabo)

持続可能な現場DXへの視点

読み取ったデータは、グーグルスプレッドシートを介したノーコード連携や、キントーン、アップスイートといった主要ツールとも柔軟に連携できる設計だという。単なるデータ化に留まらず、既存の業務フローにどう組み込むかという点でも、現実的な選択肢を提示している。

「DX=紙をなくすこと」という固定概念を一度捨て、現場の慣習を尊重しながらデジタルの恩恵だけを抽出する。多国籍化が加速し、労働力不足が深刻化する2026年以降の物流現場では、こうした「アナログとデジタルの幸福な共存」こそが、真に持続可能な効率化への道筋となるのではないだろうか。

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