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後継者難で閉鎖の市場、食品ロス削減の拠点に再生

2023年3月24日 (金)

▲武生総合食品市場 跡地(出所:エクネス)

環境・CSR社会的課題となっている食品ロスの削減に取り組んでいるエクネス(福井県鯖江市)は24日、規格外野菜の定期配送サービスの拠点である倉庫兼集荷場を、福井県の福井市から越前市に4月6日に移転すると発表した。移転先は元の「武生総合食品市場」の跡地だ。後継者難や新型コロナウイルス感染症の影響で惜しまれつつ閉鎖された地域の台所が、食品ロス問題解決の基地として再活用されることになった。

エクネスの規格外野菜定期配送サービスは、「ロスヘル」のサービス名で2022年から福井県を拠点に展開している。味には問題がないのに、サイズが大き過ぎ、または小さ過ぎだったり、形が不揃いといった理由で一般の流通ルートに乗らない野菜の廃棄を減らそうという取り組みだ。規格外野菜を全国の農家から集め、一般的な価格より最大35%安い価格で毎月1回、顧客に定期配送している。配送にはヤマト運輸など既存の物流網を使っている。

▲ロスヘルのLパック

越前市矢船町で鮮魚などを扱う地方卸売市場だった武生総合食品市場は、2022年7月末に廃止された。市場経営者や卸売業者の高齢化と後継者不足が主な理由で、コロナ禍による収益減も追い打ちとなったという。市場の跡地をどうするかが課題となったが、ほどなく、越前市出身だったエクネスの平井康之代表取締役CEO(最高経営責任者)が倉庫兼集荷場への転用を市場関係者に掛け合い、了承を得た。「地元で長く親しまれ、貢献してきた市場をこのまま廃墟のようにしてしまって良いのか」(平井氏)との思いが湧きあがったからだという。

ロスヘルの事業は売り上げが伸び、福井市の倉庫兼集荷場では手狭になっていた。市場跡を転用すれば、大きな冷蔵庫などの設備も捨てずに有効利用できる。野菜と同様に「サービスの基盤づくりでも、極力生かせるものを生かして無駄を廃し、環境にも貢献したい」という平井氏の考えによって、市場のリニューアルが実現した。

祖父が農家だったという平井氏。子ども時代を振り返ると、不恰好な形の野菜も多かったが、食べてみるとすごくおいしかった記憶があるという。大学卒業後、金融機関などを経て起業した平井氏は、地域貢献や社会貢献を使命と考え、祖父が諦めた農業経営を支援しようと規格外野菜ビジネスを立ち上げた。農協の若手職員らが事業構想に協力してくれて、今日につながっているという。

市場跡への移転で倉庫兼集荷場の面積は約10倍の1200平方メートルに広がる。冷蔵保存の機能も整う。痛みやすい葉物野菜なども取り扱えるため、より幅広い品目を出荷できるようになる。平井氏は「事業はまだ始まったばかり。食品ロスはいまだに大量に残されており、この事業で2030年までに食品ロスを10万トン削減したい」と、意欲を見せている。

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LOGISTICS TODAY編集部
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