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「あなたの会社はいくら?会社の値段はこう決まる」

2023年11月10日 (金)

話題物流業界のM&Aを得意とするスピカコンサルティング・山本夢人さんをお招きして運送M&Aについて伺うインタビュー第2回。今回はより具体的に、事業を譲渡する側・される側がどのような準備をしたらよいのか、会社のプライシングのメカニズムなどに迫る。

M&Aで売り手が気をつけるポイントとは?

赤澤(以下A):前回運送業界のM&Aのマーケット状況や傾向が、最近どうなってきてるといった話をしていただきました。おかげさまで、前回は非常に多くの方に観ていただけまして、皆さんやっぱりM&Aに対する関心が非常に高いなということを感じました。それを踏まえまして、買い手側からすれば、どうするといい買い物ができるのか。売り手側からすると、どうすれば売るという目的をちゃんと達成できていくのかというところを伺っていこうかと思います。やっぱりこれは、経験しないとわからないこともたくさんあると思うんですよね。

Y:様々なケースがありますし、経験した方でないとなかなかピンとこないかと思います。

A:スーパーで買い物するようにはいかないとおもいますので、今日は、そのあたりのところを一つ一つお尋ねしていきたいと思います。まず、M&Aで考える場合、買い手と売り手の立場がそれぞれあります。まずはこの、売り手側のことから伺っていきましょう。事業を売却したいという方にも、いろんな事情があるかと思います。自分の会社を売りたい理由としては、例えば事業がうまくいっていないのか、それとも事業は順調にいっているけれど、何らかの別の事情で売却せざるを得ないというのもあるかと思います。まず、会社を売ろうと考えるに至る理由として、例えばどういうようなことがあるんでしょうか?

Y:理由としては、前回もちらっとお話させていただきましたが、大半はもう後継者がいらっしゃらないというケースです。

A:会社を任せられる後継者が、家族にも社員にも適任者がいないというようなケース。経営者自身はご高齢になられていて、次に会社をまかせる人を探している会社が多くなっているのは、これはもう時代の流れですよね。少子高齢化で跡継ぎがいないということですよね。

Y:それ以外ですと比較的若い経営者の方に多いのが、自分の会社をもっと成長させたいというケース。あんなことやこんなことができれば会社がもっと成長するけれど、自社だけではできない。そういうときに、足りない部分を補完するために、他の会社と手を組むという考え方ですね。

A:なるほど。

Y:成長戦略型のM&Aと呼んでいますが、こうしたパターンもあります。

A:一昔前に比べると、日本国内にも起業のマインドが出てきているように感じますが、運送業でもそうした機運を感じます。M&Aについても、運送業以外の業種も視野に入れた事業拡大を考えているということですよね。場合によっては事業を売却して、運送業以外の業種にシフトしていくというケースもあるようですね。みなさん、事業がうまくいっていればこの二つの類型にハマるかと思いますが、コロナの影響などで事業が縮小してしまって、事業譲渡を考えているというケースもあるんでしょうか?

Y:コロナの影響をもろに受けてしまって、業績が落ち込んでしまったけれど、従業員がいれば経費はかかるしどうしよう?といった、廃業まで考えながら迷っているお客様は実際増えました。

A:その一方で、明らかな放漫経営で事業がうまくいっていない会社というのも多いんじゃないでしょうか。そこでお尋ねしたいのは、そういった経営状況がよくない会社が事業を売りたいと相談に来ることもあるのでしょうか?

Y:去年までだと、10社相談に来たら8社はもう手の施しようがない、難しい状況の企業が多かったですね。ただ「去年までだと」というところがミソでして、今年の春に、国から中小企業の再生ガイドラインというものが出されたんです。経営が思わしくない企業はどこも銀行などから借り入れをしていますが、このガイドラインが出たことで、極端な話、借金を踏み倒しやすくなったんです。経営者を路頭に迷わせないために、金融機関や、その他会社に関わる人たちみんなで協力して救っていこうという趣旨です。

A:会社の救済も必要かもしれませんが、業界の課題としては従業員が守られなければダメなんじゃないかという気もするんですが、従業員が生活していけるようにするためには、企業の救済も必要な面はありますよね。経営者の方も、一度は失敗してしまったけれども、もう一回チャンスがあればうまくやれるかもしれない。

Y:法的拘束力があるものではないんですけれども、国からそういう発信があったこともあり、今はそういった企業も救済していくようにしていかなければいけないよね、という流れになっています。

A:金融機関としては、従来とはちょっと勝手の違う企業再生になりそうですよね。金融機関にとっては厳しい判断が求められることもあるかもしれません。しかし、中小の事業者にとっては、事業再生がやりやすくなり、負債を軽くすることができるようになっている状況ということですね。

Y:こうした追い風があるので、売り手にしてみれば、破産もしないし、従業員や荷主にも迷惑をかけずに事業を引き継いでもらえて、みんながハッピーになれるようになってきています。今年の4月からは、この事業再生のスキームが使えるようになっています。

A:そういった国の後押しというのは今の時代背景に配慮したものなのでしょうね。とはいえ、根本的には、売れないものを無理やり売ったら詐欺になってしまいます。会社を売ろうと思えば、ちゃんと売れる商品として仕立てていかないといけませんよね。でも会社をピカピカの状態に経営できている経営者ばかりではないですよね。自分の会社を自力で売れる状態にできない経営者の場合はどうすればいいんでしょうか?

Y:そこは時間をかけて相談に乗り、アドバイスをしていくしかないですね。もちろんこちらで企業分析をした資料なども作成します。

▲スピカコンサルティングがM&Aの際に製作する資料。依頼企業の分析を元に、どうやって企業価値を高めればよいか、買い手候補など、よりよい事業承継のための指針となる。(クリックして拡大)

A:前回、5年かけて相談にのって事業譲渡に至ったというケースをご紹介いただきましたが、そうやって話をして現状をしっかり把握し、企業価値を向上させるためにはどうすればいいかを分析してもらったり、譲渡の相手となる企業について検討してもらえたりというのが、山本さんのようなM&Aコンサルタントに相談することのメリットになるわけですね。ではそうやって山本さんに相談して、自分の会社が売り物として魅力的になっていったとして、最終的に売値というのはどうやって決めるんでしょうか?

Y:物流業界でよく行われているのは、時価の純資産プラス営業権でいくらになるか、というようなやりかたが一般的です。営業権は、営業利益何年分というような形になりますが、ではこの「何年分」を何年にするのかはケースバイケースですね。

企業価値を向上させる3つのポイント

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Y:私たちの会社は企業価値を向上させるアドバイスをさせていただいている会社でもあるわけですが、今日はシンプルに三点に絞ってポイントをお伝えしたいと思っています。自分の会社をうまく譲渡、売却するために大事なのは、まず「①自社の現在地を知る」ことです。人間で言うと健康診断みたいなもんですね。今、自分の会社がどういう状況なのかというところを詳しく知っていただくことが大切です。

A:会社の価値をよく知らないで売ってしまって、後になって安く売ってしまったことに気づくことにもなりかねませんよね。

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Y:2つ目は「②候補先のニーズを知る」ということ。M&Aは相手があって初めて成り立つものでもあるので、話し合って相手の意見を聞くことで価値が決まってくる部分もあります。世間的なニーズや価値と同時に、交渉している相手のニーズというのもしっかり把握しておくべきですね。3つ目は、「③社員、会社、自身の総合合格点を目指す」ということです。自分自身の気持ちももちろん大事なんですが、譲渡で社員がよい状態、環境になるかどうか?また、会社もよい経営に向かっていくのか?これらすべてが総合的に合格点になるようなM&Aを目指すべきです。社員、会社、自分のどれかだけに偏って決めるとよいM&Aにはならないので、全てがよいバランスで合格点を取れるような着地を目指すべきだと思います。

A:難易度高そうにも思えますが、考えたら当たり前のことですよね。聞いてみれば納得できる話です。

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Y:今上げた3つのポイントをちょっと深掘りさせてください。最初に自分の現在地、今の状況を知るこをが大事なんですけれども、よくあるのは「知り合いがやってる同じくらいの売り上げの会社が1億で売れたから、自分の会社も1億で売れるだろう」というように考えてしまうと思い込んでしまうというのがあります。

A:ありがちですね。

Y:あと、うちの会社の売り上げが3億あるんだから3億で売れるだろう、と思い込んでしまう方もいらっしゃいます。売上というのは企業価値、いわゆる株価と連動するものではないんです。私も過去に経験がありますが、同じ売り上げが10億の会社であっても、1000万、数億といった価値しかつかない会社もあります。なので、やはり売上だけではなく大事なのは、その会社の中身なんです。では、どういうロジックで会社の価値が評価されているのか?どういう風に評価されてこの会社の株価がこの値段になっているのか?ということを正しく理解しておかなければなりません。そうした企業の市場価値の値付けの理屈を理解しておかないと、価値が1億の会社を5億で売りに出して、相手が見つからない、ということが起きてしまうわけです。まずは、こうやって価格が決まっていくことをしっかりとご理解いただき、何が価格変動のポイントになるのかをを知っていただくのがすごく大事だと思います。

A:これはわかりきったことかもしれないんですけれど、一点、あえてお尋ねします。例えば、資産が完全に償却済みの会社があるとします。荷主さんも安定してついていて心配もない。仮にそういう情報は考慮する必要がないと仮定します。その上で、売上が年商10億、最終利益が1億という会社だとして、特に他に考慮すべき事情がない場合はどうやって値付けをしていくんでしょうか?

Y:ベースとなるのは純資産プラス税引き後の営業利益何年分という考え方になります。なので、純資産という情報をいただければ、先ほどの利益を、だいたい平均取ると4〜5年分ぐらいをつけて値付けしていきます。

A:自社で保有している土地でなど、純資産もいろいろとありますよね。で、純資産を考慮するとなると、負債もちゃんと考慮しなければなりませんよね。あと、どのぐらい急いで売りたいかというのも重要になってきそうですね。

M&Aでネックになるコンプライアンス問題

A:山本さんにご用意いただいたこちらの資料に、「法令違反対策調整を加味」とありますが、これはどういういう意味でしょうか?

Y:実は、コンプライアンス意識はM&Aの売り手側と買い手側で結構違うものなんです。例えば、過去に売り手側で車庫飛ばしをしている会社があったんですよ。いろんな事情があって、一時的にそういう状況になっているんだろいうということは理解はできるんですが、譲り受ける会社側からすると当然、これは是正しなければいけないという意見が出るんですね。こういうことがあると、選択肢が結構限られてしまう。その仕事を辞めるか新たに営業所を作るか、もしくは譲り受け側の営業所にくっつけるか、といったことになってくるんですよね。例えば仕事を辞めるとなると収益構造がまた変わってくるので、そこを基準にして企業価値を算出するロジックが入ってきますし、むしろそうやってロジカルに値付けをし直さなければなりません。法令違反をしていたら、それを是正するためにどのくらい費用かかるのか、もしくは是正したら収益がどのくらい変わってくるのかを知っておくべきなんですね。

A:それは非常に重要ですよね。ほかにもありますか?

Y:ほかだと、社会保険に未加入というのもありますね。

A:社保未加入!これは運送業界では結構問題になりましたね。

Y:こちらも割とよく目にするパターンですね。

A:今でもありますか?

Y:えー、まあ…見かけますね。

A:まあ、会社の経営状況が悪いというのは、そういうところにも出てくるわけですね。

Y:過去には支払いの滞納をしているという会社もありましたね。修理代の滞納をしていたんですが、その会社では支払いベースで決算書に載せていたんですね。なので、支払ってない間は決算書にも出てこない。本来であれば、未払金みたいな形で計上するのが普通かと思いますが、そういうやり方をしていなかったんで、決算書だけ見ると全くわからない。

A:パッと見ピカピカなんですね。

Y:そうなんです。こういうのは発覚すると簿外負債みたいな扱いになってくるので、やはり決算書の数字だけではわからない部分というのがこういうところにも出てくるというのがありますね。

見落としがちな「株の変遷のエビデンス」

A:そうしたところをきちんと整えていくと同時に、手続きを整えていくというのを、2つ目に挙げていただいてますけれども、そういうところにもつながってくるということですね。

Y:はい。そういったところはすごく大事ですね。 ちゃんと会社を経営しているといろいろな手続きが整っていないというのはあまりないような気もしてしまうんですが、案外、株の変遷についてちゃんと手続きができてないことがあります。創業から30年、40年経っていて、おじいさんからお父さんへ代々受け継いできて今は自分が株を100%持っているはずの会社であっても、その株が本当に持ち主が移り変わってきたという証がちゃんと残ってない会社というのは結構多くてですね。

A:証拠が残ってないというのは紛失してしまっているということなんでしょうか?

Y:ほとんどのケースでは証明できるものを作ってないんですよね。本来であれば、株式譲渡契約書であったりとか、社内の議事録を作ったりといったことをしておくべきなんですが、口頭でのやり取りであったりとか、何かの折にお金振り込んだから株を買ったことにするよといったやりとりで世代交代してきてしまったようなケースですね。親族間で事業継承してきた会社で特に多いですね。今の経営者が経営権を100%持っているのかを証明できないというのは、業歴が長い会社ではよくあります。

A:それは土壇場で困ったことになりそうですね。

Y:今すぐM&Aをやりたいと思っても、これを整理しないとそもそもスタートできまないという状態になってしまうのが、この株の問題です。

A:これはもちろん時間や手間をかければなんとかなるのかとは思いますが、なにか対処のしようはあるんでしょうか?

Y:おっしゃる通り、なんとかする方法自体は全然ありますが、やはり時間がかかるというのが問題になりますね。

A:この自社の現在地を知るという意味で、ほかにもポイントはありますか?

Y:先ほどもちょっと触れましたが、コンプライアンスの程度を知っておくのもポイントですね。いろいろな事情があったり、悪気がなにもかかわらず一般的なルールからちょっとずれてしまってる、逸脱してしまってる会社というのは、世間には少なくありません。こうした逸脱が、どの程度のものなのか、何かあった時にどう影響してくるかを把握しておきましょう。事業譲渡後に、それが原因で万が一トラブル起きた時のその責任問題の大きさにも関わってきますし、M&Aの際に取り交わす契約書の内容も変わってきますからね。M&Aにおいてはトラブルを起こさせないことが、本来的には大事なことなんですけれども、ただ起きたときにどうしていこうっていうことを取り決めておくことがすごく大事でして、この取り決めの時の程度が変わってくるので、こういったところもしっかりと事前に知っておく必要があります。

M&Aの買い手の注意点

A:ここまで割と売り手寄りの、お話をしていただいたんですが、ここで少し買い手側の話をお願いします。

Y:M&Aで事業を買う場合は基本的に何らかの目的があって行うわけですが、なんでもかんでも売上のために事業を買うぞみたいなスタンスじゃないことが大前提です。この前提があった上で、まず一つ目はしっかり相場を知ること。

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A:これは売り手側のポイントとしてもおっしゃられてましたが、買い手側もやっぱり相場をちゃんと知っておいた方がよい、と。では、相場はどうやって知ることができますか?

Y:過去の事例や、実績と経験があるコンサルタントなどから情報を得ることができます。

A:やはり、自分の見聞だけで判断するのはしんどいと思うのですが、でも、敵を知っておかなければ戦えませんものね。こういうところでM&Aコンサルタントに相談するのがよいのでしょうね。

Y:コンサルタントは様々な案件を扱って、日々情報が蓄積、更新されていますからね。

企業はモノではなく人のキモチの集合体

A:ほかに買い手としてのポイントはありますか?

Y:企業や案件をモノ扱いしないということはすごく大事ですね。不動産の仲介を思い浮かべて、相手の会社を「案件」「物件」なんて言う方がいますが、企業ってやっぱりモノではないので。社長さんもいれば働いている人もいるし、いろんな人の感情や気持ちがいろいろと入り交じっているものです。なので、金銭面などの合理的な条件だけ決まれば、成立するというものでもありません。交渉、話し合いの時に、建設的な対話が出来るかどうかというのがとても重要です。言葉遣い1つで結果が変わってくることもあります。やはり同じ経営者同士でリスペクトしあえないと、ものすごくいい条件を出されても譲渡はしたくないというケースもあります。やはり会社をモノ扱いしてしまうと、物言いが雑になってしまうというもは有りますよね。例えば何か価格を下げなければいけない事由が発生した時に杓子定規値段を下げてといった流れで売買が終わってしまうと、理屈の上では筋は通っていても譲渡側からするとあまり気分はよくないわけです。そこに心が入ってないので。

A:そうやって、あえて買わなくてもいい恨みを買っちゃって結果M&Aが終わった後に、運営がうまくいかないなんていうことにも繋がりかねないですよね。

Y:譲り受ける方も、M&A後にすぐに利益を出して会社を再生していきたいと思うはずなんですが、やはりそこには働く現場の方々がいらっしゃるので、昨日までやってた仕事を今日いきなり変えられても心情的な抵抗感があります。変化すること自体になんらかの抵抗感を覚えるのは普通なので、買った側もすぐに改善策を打っていくのではなく、お互い理解し合った上で納得感を持って進める方がよいですよね。

A:人身売買じゃないんだから、その辺にはちゃんと気を配らないといけませんね。売る側も買う側も、事前の情報の整理が必要です。情報を整理して、客観的、冷静にコンサルタントにチェックしてもらうというのは1つの手ですね。

Y:この冷静さっていうのは案外大事で、そこのフォローも私たちの仕事の1つですね。をフォローするっていうことは確かに多いですね。あと、大事になってくるのがそのファイナンスの部分です。ここ三年ほど、やはりコロナが始まってぐらいから、資金が用意できなくて破談になっているケースが案外あります。譲り受ける会社さんの社長も当然できるもんだと思って、もう最終契約直前まで行っているケースがあるんですよね。で、そこでやっと銀行に稟議を通してもらったら、稟議が通らなかったというケースが結構ありました。

A:それはコロナによって、金融機関側の事情が変わっていることを買い手側の経営者がよくわかってないということなんでしょうか。

Y:それもおそらくあると思います。初めてM&Aやられる会社さんも結構多いので、M&Aのために本当に簡単に貸してくれるのかどうかっていうところの感覚を知らずに、案件だけ先進めちゃってるっていうケースがありますね。支店の担当者はOKを出してくれたけれど、本部の決済で落ちたなんていうのもあります。M&Aではいろいろなハードルがありますが、M&Aの資金を借りる時にもハードルがあるんだということは意識しておいた方がいいと思います。

A:銀行で決済する立場の人たちの意向も確認しながら進めた方がよい、と。Y:私たちも買い手側企業さんの財務内容を確認しながら進めますが、お金が借りやすい状態かどうかというのもお伝えしながら進めることもふえています。

会社を「安く買いすぎてはダメ」な理由とは?

A:先ほど売り手側のところでもお話いただいたんですが、この会社を買うためにオファーとして提示する金額はいくらがいいのか?という一端を示していただくことができますか?

Y:これはやはり適正価格で買うのが一番大事だと思っています。

A:高く買うのは避けたいけれど、安く買うのもやめた方がよいということでしょうか?
安く買えるならその方がいいという人もいるんじゃないでしょうか?

Y:このあたりは、ちゃんと説明すると案外理解は得られるかなと思います。最初は、このくらいの値段であの会社を安く買えないかという風にいわれることももちろんあります。高く買ってしまうと経済的な損失がありますが、安く買ってしまうと譲渡する側の心情が悪くなるというのがあります。M&Aした後に譲渡側のオーナーさんに経営に協力していただくというケースは本当に多いんです。お客さんが社長さんについていたりとか、従業員とのパイプ役になってくれたりとか、外向きにも中向きにも、会社をうまく引き継いでいくためには譲渡側のオーナーさんの存在というのは欠かせない存在です。なので、不当に安く買ってしまうと、そうやって協力してくれなくなるケースもあるわけです。なので、できるだけ双方が納得する適正価格で売買するべき、と考えています。

A:どちらにとっても適正価格が大事なのだ、と言うことかと思いますが、刈った方からすると、狙いどおりに運営していける会社だったのかどうか、狙いどおりに運営していけるのかどうかでも変わってくるように感じますそのあたりは、買った側が従業員の方たちとうまくコミュニケーションが取れるのかどうかなどが変数になってきそうですね。

Y:そういう意味では、譲り受ける方も、この会社をどうしていきたいのか、どうしていくのかっていうところをやっぱりきちんと考えた上でM&Aしないと、このあたりはなかなか難しくなってきますね。

A:我々がよく見聞きするのが、運送業界のM&Aって単純に利益などだとか、あるいは荷主さんがいるのか、いないのかとか、そういう一般的な事情があるんじゃないのかなと思うんですね。それは運送業特有のものである場合もあろうし、2024年問題への対応など運送業ならではのものもあるんじゃないでしょうか。

M&Aに「デメリット無し」?

A:M&Aをする上でのメリット、デメリットはあるんでしょうか?

Y:デメリットのあるM&Aはしないというのが原則ですね。仲介したM&Aの中では譲渡側のオーナーさんに「M&Aしたせいで経費を使い放題使えなくなったのがデメリット」といわれることはありますが。

A:それはダメですね。(笑)

Y:運送会社のM&Aには当然狙いがあってやるものなので、それが達成できるのであればええメリットですし、達成できなければデメリットになってしまいます。

A:ここまでお話を伺って、物流業界のM&Aについてよく分かったんですが、M&Aのコンサルタントの方に相談するとどういうところができるのかというのは、ちょっともう一回改めて整理していただくことは可能ですか? 特にスピカコンサルティングにお願いする時のメリットを教えてください。

Y:もちろんです、はい。M&Aで一番大事なことは、トラブルなく成立、成功させるということ。私たちスピカコンサルティングは、物流業界に特化して動いている部隊なわけです。先ほど話題に出ました車庫飛ばしもそうですが、業界特有の論点、課題というのがたくさんあって、それを知っているか知ってないかで、トラブルが起きる確率が大きく変わってきます。業界の商習慣知らない場合ですと、さっきの例のように決算書だけ見て進めて、この業界でありがちな簿外負債を見逃しというのはありますから。その辺のまずトラブルを起きなくする。未然に防ぐための目を持っているというのがうちの強みですね。この会社がいくらなのかといった相場観があるのも、実際にM&Aを経験したメンバーが多く、正しい情報を持っているからです。

A:あとですね、視聴者もこのあたり知りたいと思うんですが、M&Aコンサルタントを頼むと、お金はいくらくらいかかるものなんでしょうか?

Y:これはもう会社によってバラバラなんです。

A:最低保障いくら、みたいなのはあるんでしょうか?

Y:国で公表されているベースで行きますと最低保障2500万と言ってる会社もあれば、500万ぐらいの会社もあったり、本当にバラバラです。

A:スピカコンサルティングはそのあたりどうしているんですか?

Y:依頼してきた会社のサイズ感に合わせて、という感じです。

A:最低1億円って言われたらどうしようかと思いました。相手の事情に合わせて無理のない設定をされているということですね。無理のない設定だからこそ、年間17件も取引が出来るわけですね。

次回はM&A失敗事例を深掘り!

A:今回は、売り手側、買い手側それぞれどういうところに配慮したらいいのか。M&Aコンサルタントにどういうことをサポートしてもらえるのかといったことを教えていただきました。どの話題もよく理解できたんですが、同時にです運送M&Aに進もうと踏み込んでいこうと思うとですね、やはりまだ失敗が怖いわけす。 M&Aは失敗しなかったらデメリットではないといいますが、やはり失敗したくないんですよ。

Y:おっしゃる通りです。失敗してはいけない。

A:でも失敗例はありますよね?

Y:過去にはいろいろと困難な事例がたくさんありました。

A:なので、失敗事例についていろいろ教えに、また来ていただけませんでしょうか。

Y:ぜひお願いします。私自身の経験もお伝えしますし、ええまあ言えないポイントもあるかもしれないですけれども。(笑)

A:山本さんが用意されるその失敗事例を、外科医のように解剖していきたいと思いますので、次回、改めて山本さんにお越しいただいて、今度はね、あの運送業のM&Aの失敗事例を深掘りしていきたいと思います。失敗しないM&Aというのは、どこに気をつければいいのか? リアルな実際の話をベースにやっていただけますから、非常にためになる番組になるかと思います。山本さんにも腹をくくって出ていただきたいですね。

Y:お伝えできることを全部お伝えします。

第1回「迫る24年問題、変容する運送M&A」

運送業を席巻するスモールM&A最前線