ロジスティクス運送業界でスモールM&Aが盛んになっている。スモールM&Aは中小企業のような規模の小さい企業同士の吸収・合併、事業承継のことである。アフターコロナの物流需要増を受けてこうした流れが顕著になってきていたが、それをさらに加速させたのが2024年問題だ。「24年問題の対策を自社で進められないため事業継承をしたい小規模な事業者が、譲渡先を探す動きが活発化しています。その一方で、24年4月から超過労働可能な労働時間が960時間に制限されることで、今まで通りの長距離輸送ができなくなることを受け、中規模な運送業者が中継輸送拠点となる企業を探しているようなケースも。売り手、買い手ともに盛んに相手を探している状況です」。そう語るのは、運送業のM&Aを得意とするスピカコンサルティングの山本夢人取締役。
これまでも運送業界ではM&Aは行われてきていたが、現在のような活況はコロナ禍に始まるという。「コロナの影響で事業の譲渡先を探す運送業者が現れ始めると、まだそれほど危機的状況ではない企業の間でも、いざというときの準備を始めた方がよいのではという機運が高まりました」(山本氏)。そして実際に、同業他社がM&Aをしたり、されたりということを目にするにつけ、M&Aが身近な存在に感じられるようになっていたという背景があるという。
「有利に事業を譲渡するためには、自分たちで売り手を比較検討したり、選んだりできる立場で進めることが必要」(山本氏)だという。そのためにも、切羽詰まった状況になる前から準備を始めることが必要。場合によっては時間をかけて企業価値を高め、より良い相手により高く買ってもらうことも可能だ。決算書の数字を見ただけではわからないのが、運送業者の企業価値。運送業ならではの企業の価値が生まれる理由や原因はどこにあるのか?また、どのような状態なら高い価値を持つ企業として判断してもらえるのか。実例を交えながら、運送業界のスモールM&Aの実情を山本氏に伺った。