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第1部「物流拠点選びに異変あり」

本誌×野村不動産、未来の物流を占うイベント開幕

2023年12月7日 (木)

話題7日、本誌主催「第一回物流議論 ポスト24年問題、荷主・3PL企業の選択肢〜あと100日、物流が変貌する〜」が開催され、本誌編集長の赤澤裕介のほか、野村不動産の宮地伸史郎氏、稲葉英毅氏、IHI物流産業システムの関雅美氏、千代田組の大城翼氏らが登壇した。イベントは会場視聴とオンラインを組み合わせたハイブリッド開催で行われた。

第1部「物流拠点選びに異変あり」

▲(左から)赤澤裕介編集長、野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部次長の宮地伸史郎氏

第1部の始まりは、2024年問題、そしてポスト24年問題を視野に入れた物流拠点のあり方についての簡単なディスカッションが行われた。人口減少を迎えることで労働集約型産業への影響は大きいが、「よりよい働き方を進めていく変化も必要、その契機」でもあると語る宮地氏。これに対して、「少子化への対応の機会としての24年問題ではないか」と、赤澤からの応答もあった。

赤澤からは、「人口減少時代に合わせた産業、物流のあり方。改善基準告示とそこへの補助をよい機会と捉えるべき。そこへ最適化していこうという取り組みを真っ先に始めたのが野村不動産なのでは」と、今回のイベントを開催した経緯ともいえる捉え方が提示され、宮地氏からも「人は減るけれど、ロボットフレンドリーになっていく。少子化だけれど高齢者が結構消費するので、きちんと物を届けてビジネスになる。イノベーションでチャンスに変えていく」と物流を支える意気込みを感じさせる発言も。

●プレゼンテーション1「マテハンメーカーが問う、倉庫DXの新形態」(IHI物流産業システム・関雅美氏)

▲(左から)赤澤編集長、IHI物流産業システム取締役営業本部長の関雅美氏

続くプレゼンテーションでは、野村の新拠点に自動化ソリューションを提供するIHI物流産業システムの関氏による、同社のソリューションと、自動化倉庫の将来的なあり方にスポットが当てられた。「マテハンに求められるのはやはり早さでは?」という赤澤の問いかけに対し、現場をよく知る関氏からは「そのスピードをより効率的に利活用していくソリューション、システムがより求められている」との回答。これを踏まえ、最新の野村不動産の「Landport横浜杉田」(仮称)の自動化についてのプレゼンとなった。

紹介されたのはIHIの自動ピッキングロボットシステム「スカイポッド」。台車が走ってラックを登ってピッキングステーションまで持ってきてくれるというシステムだ。ロボットが高所のピッキングも可能なので、空きがちな棚高所も有効活用出来る。実際に導入している某社のEC(電子商取引)自動化倉庫では出荷のキャパシティーの倍増、人件費の2割削減を実現しているという。ロボットの追加も自由度が高く、さらなる効率化も可能。こうしたロボットを導入するのに合わせ、デジタルで出荷予測、積み付けなどの最適化を行う。

▲スカイポッド

こうしたソリューションを物流倉庫に導入することで実現するのが「物流シェアリング」。IHIはロボットなどのマテハン機材とデジタルリソースを、野村不動産が保管・作業スペースを提供することで実現するのがLandport横浜杉田(仮称)となる。

その先、IHIが目指す物流センター、物流トータルソリューションはすべてが自動化された完全無人物流センターだ。トラック自動運行システム(構内)、パレット自動倉庫(保管)、自動デパレタイズ、スカイポッドによる保管・仕分け・ピッキング、ピースピッキング、自動混載パレタイズ、無人フォークリフト(AGF)などIHIのソリューションだけでもこうした倉庫は実現可能だが、自社ソリューションだけではなくさまざまな企業との連携、協業が必要だろうと結んだ。

競争相手とは競合する部分もあるだろうが、さまざまな企業と連携していくことで普及させていくことの重要性が強調された。関氏によると、こうした意欲的な取り組みは「あくまでも入り口のチャレンジでしかない」という。

古参メーカーが示すマテハンの最新事情と未来への意気込みを踏まえ、「物流議論1『物流施設開発に求められるシェアリングモデル拡大に向けた覚悟』」(関雅美氏、野村不動産・稲葉英毅氏、モデレーター:赤澤裕介)がスタート。

第1部の討論とプレゼンを踏まえた議論が展開。数百坪単位、あるいは数パレット単位といった小割の需要に対応するシェアリングモデルはどのように実用化、普及していくのか。また、シェアリングが拡大することで物流の未来はどうなるのか。熱い議論が交わされた。稲葉氏は2004年、野村不動産が物流倉庫を展開し始めたころからこの分野に携わっている人物。01年頃、近代的物流施設がアメリカから上陸したが、それによって日本の物流が変わったという歴史的経緯がある。「アマゾンに代表されるEC化の進展、3PLの台頭が、日本の物流倉庫の巨大化を推し進めている」と稲葉氏。

しかし、インフラとしての倉庫が巨大化しても、3PLの配車機能が衰えてきたこともあり、物流の輸送力が十分に発揮されていない。赤澤からは、こうした経緯を踏まえ「だからこそマテハンなどを組み合わせて効率化を目指していく必要が出てきているのではないか」という疑義を提示。

「しかしまた、マテハンのコストを誰が負うのかという議論があり、それに対しての回答の1つが、野村不動産のLandport横浜杉田(仮称)なのではないのか」(赤澤)

「野村不動産としては、世の中の物流を変えてやるくらいの意気込みで、自動化コストを負担し、世の中に供給していきたい」(稲葉氏)

▲(左から)赤澤編集長、関氏、野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部部長の稲葉英毅氏

稲葉氏曰く、「ここしばらくの間で、物流業界に一番投資をしているのはデベロッパー。そこでコストを負担するのは、デベロッパーとしての社会貢献にもなると考えている」。「それだけのコスト負担、投資をするというのは、そこにビジネスチャンスがあると感じているのか?」という赤澤の問いに対しては、「もちろんビジネスチャンスもあるが、デベロッパーとしての力を生かせる部分でもある。自動化倉庫は業界初の試みでもあるので、従来のように倉庫賃料をもらうという形から、従量課金制にするという試みもする」との回答があった。

「物流倉庫を開発する際にやはり差別化ということは考え、そこであらかじめ自動化するというアイデアがあった」(稲葉氏)

「幸いまだ完成前だったので、高効率化が目指せる高い棚を付けるということが実現したのも、独自性になっている」(関氏)

ちなみに、こうした自動倉庫についてはIHI側としても「Landport横浜杉田(仮称)はIHIの不動産再開発ということもあり、IHI自前でもいいからやりたいという気持ちがあった」(関氏)という。「現在進行している横浜杉田の建造は、ほぼ理想的な形で進んでいる」(同)

「まだテストケースなので空きができることもあるかと思うが、テナント街企業の荷物も扱うなどして、自動パレットを活用して季節波動を吸収していく。さらには荷物1つ単位でも預かれるような形を目指している。横浜杉田はあくまでも1つの試み。これを踏まえて次の取り組みにつなげていきたい」(稲葉氏)

▲習志野テクラム・ハブ

非常に意欲的な取り組みだが、こうした協業が可能になったのは、野村不動産がLandport習志野で運営している物流関係企業の協業コンソーシアム「テクラム」。

IHIなどのマテハンメーカーのほかにもEMS、センシング、ロボティクスなど様々な企業が参画するテクラムでは、さまざまな企業が協業することで、実際に物流拠点へのソリューション提供が始まっているという。

>>第2部の記事を読む

野村不動産の物流ソリューション

Landport横浜杉田(仮称)
https://www.nomura-landport.com/yokohama_sugita/

習志野テクラム・ハブ
https://www.nomura-landport.com/techrum/

協業がつくる物流の未来議論、本誌×野村不イベント