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第2部「倉庫内の自動搬送に求められるもの」

協業がつくる物流の未来議論、本誌×野村不イベント

2023年12月7日 (木)

話題7日、本誌主催「第一回物流議論 ポスト24年問題、荷主・3PL企業の選択肢〜あと100日、物流が変貌する〜」が開催され、本誌編集長の赤澤裕介のほか、野村不動産の宮地伸史郎氏、稲葉英毅氏、IHI物流産業システムの関雅美氏、千代田組の大城翼氏らが登壇した。イベントは会場視聴とオンラインを組み合わせたハイブリッド開催で行われた。

>>第1部の記事を見る

第2部「倉庫内の自動搬送に求められるもの」

ますます進む倉庫内の自動化、省人化。第1部では完全自動化された倉庫を目指すIHIのソリューションと事例が紹介されたが、第2部では人と一緒に動作するケースもある庫内運搬ロボットが軸となる。作業者について回ってピッキングした商品を運搬したり、庫内のカートをけん引したりと人と一緒に作業する、いわゆる「協業ロボット」を入り口に、ポスト24年問題の自動化のあり方を探る。

●プレゼンテーション2「庫内運搬の自動化の現実的な選択肢」

▲(左から)赤澤裕介編集長、千代田組第四営業本部ソリューション営業統括部第一課主任の大城翼氏

倉庫内を自動化する際にはどのようなソリューションがあり、どういった選択をするのが現実的なのか?自動搬送以外にも、各種マテハンなど庫内で活用されるメカやロボティクスに精通した千代田組の大城氏からのプレゼン。

千代田組は1918年創業の総合商社。システム、インフラなどを扱うが、大城氏は物流部門で活躍する人物。千代田組が扱う製品としては、追従型運搬ロボット「サウザー」が広く利用されている。操作が簡単で、スタンドアローンで稼働するためAGV(無人搬送車)などに比べて導入コストが抑えられるという製品メリットがある。サウザーの大きなメリットの1つが、技術者不要で活用できる点。「世界的にロボットをメンテナンスする技術者が不足しているなか、技術者不要で運用できるのは大きなメリット」(赤澤)

▲追従型運搬ロボット「サウザー」

実は千代田組も、第1部終盤で話題になった「テクラム」に参画する企業の1つ。

「AGVの導入を検討している企業でも、実際のところはそれほど高機能なロボットではなくてもよいケースも少なくありません。サウザーはそうした企業にとってはうってつけのロボットですし、導入コストもAGVよりも格段に抑えることができます。このように、比べて選べるのがテクラムの良さかと思います。導入に際しても、購入してもらうこともあれば、リースでの対応も可能で、これもテクラム参画のリース、金融企業が扱うので、ワンストップで利用していただけます」(大城氏)

「リソースが限られている企業にとって、自社で何もかもやっていくのは大変。協業することによって得意分野に注力できるというのが、協業の良いところなのではないか」(赤澤)

●物流議論2「協調と競争で24年問題を乗り越えろ」

全段のプレゼンで「協業」「協調」といったキーワードが出てきたところで、第1部の登壇者も再登場。主にテクラムでの協業を軸に意見が交わされた。

宮地氏:テクラムの始まりは、3PLなどにソリューションを提供するサポート企業のとりまとめ。同業他社であってもテクラムでまとめて比べることができるので、荷主、3PLに実際に見て、試して選んでもらえる場となっている。ソリューションの提供側にも提供される側にも結果的にメリットを提供できていると感じている。

稲葉氏:比較検討をしてもらえるためにはやはりリアルの場所が必要だった。タッチポイントの提供はメーカー側にも使う側にも大事。

宮地氏:マンションであればよその物件を見に行けるけれど、倉庫はそういった調査がしにくい。それが比べられるのがテクラムの良いところ。野村不動産としても、特にどのソリューションを強くおすすめするのではなく、それぞれを比べて最適なソリューションを探っていくお手伝いをしたいと考えている。

赤澤:テクラムには簡単に参画できるんでしょうか?

宮地氏:ごく簡単な手続きで参加してもらえます。競合企業が入っているからということでお断りすることもありません。

赤澤:さまざまなソリューションを取り入れて対応できているかどうかで24年問題で淘汰(とうた)が進む。24年問題を乗り越えるためにはどうすればいいのか。

大城氏:まず大事なのは情報収集。その場では課題解決に結びつけられなくても、テクラムでソリューションを現場で見ることで、後日ご相談を受けることも多い。まずは情報に触れることが大事。

こうしたテクラムにあるソリューションに触れられるのが月に2回の「デモ会」。テクラムに設置されているマテハン企業や物流システムを、実際に構築された倉庫システムの形で目にし、体験することができる。デモ会での見学会の後には、聞き取りや提案などを受けることも出来るが、これらは全て無料で利用することができる。

テクラム参画企業にはリース会社も入っているので、全てを購入せず、リースで導入するなどの相談も受け付けているという。

赤澤:デベロッパーである野村不動産が、なぜそのような取り組みをするんでしょうか?

稲葉氏:お客様の課題を聞いて運用まで考えていくなかで、さまざまな情報を得られるということもあるが、それを通して物流の問題を解決することにつなげていけるはず。お客様からの情報を得ていくなかで、機器を試す場がないというのをよく聞いたこともテクラムの誕生につながっている。

関氏:コンソーシアムで協業した企業が、新たなお付き合いできる企業を紹介してくれたりと、仕事の広がりもあるのがテクラムの良いところ。

赤澤:テクラムは24年問題の解決のためのソリューションが集まっているコンソーシアム。ここに解決策がないのなら、日本に解決策は存在しないのではないか。

大城氏:(東京)ビッグサイトの展示会を待たなくても解決策を探しに行けるのもメリット。

稲葉氏:自動化に関してはさまざまなソリューションがあるし、導入の金銭的な方策もいろいろとある。デベロッパーとしてはそうした情報を出していきたいと思っているので、24年問題対策を考えている企業は、どんどん情報を取りにいってほしい。

関氏:テクラムから生まれたと言ってもいいLandport横浜杉田(仮称)で、自動化システムがうまくいけば、同じシステムを既存倉庫に導入したり、冷凍冷蔵分野へ導入したりするなど、このソリューションをより広い領域に拡張していきたい。

宮地氏:ロボットやDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入することで作業の効率化はどんどん進んでいきますが、さらに進んでいくと細かな無駄を無くすことができるようになっていくはずです。苦役からの開放など、より良い労働環境づくりなど建設的な部分だけでなく、デジタルで無駄が見える化されていくことでさらに多くのメリットがあるはずなので、物流業界でも積極的なデジタル化が進んでいくといいですね。

●質疑応答

Q.物流機器・設備がどう変化していくと思うか?

稲葉氏:原状回復しやすい物流施設に設置しやすい機器、梁下5.5メートルといった制限に沿った機器も増えていくのでは。

関氏:個々で性能の良いものを作る時代は終わった。現場のオペレーションに寄り添うものが増えるのでは。また、連携しやすくて改変がしやすい、軽い機器が増えるのかもしれない。1台の機器が部分最適化されているのではなく、全体の連携を考えた全体最適化された機器。他社の機器とも組み合わせやすい機器も求められてくるかもしれない。

大城氏:今後は中小の倉庫も機械化されていくはず。もっと現場で扱いやすい機器が増えていくのではないのか。

宮地氏:上海で行われた物流見本市のレポートなどを見ると、個々の機材の性能が上がったというような展示よりも、他の機材と組み合わせることでこんなことがで切るようになった、といった展示が増えている。ほかの機材、システムとつないで、どんなパフォーマンスができるのかというのが注目を浴びている印象がある。野村不動産のテクラムも、個別に存在している要素技術を編集していくという機能がとても重要になっている。競合、対立する企業、事業体の利害を調整するようなあり方を目指したい

野村不動産ソリューション

Landport横浜杉田(仮称)
https://www.nomura-landport.com/yokohama_sugita/

習志野テクラム・ハブ
https://www.nomura-landport.com/techrum/

本誌×野村不動産、未来の物流を占うイベント開幕