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デジタル使いこなし、「モノを運ぶ」価値を高めよ

2024年3月27日 (水)

イベントLOGISTICS TODAYは25日、オンラインイベント「運送業、その先へ──。車両20-150台の運送会社と荷主に届ける『24年問題への向き合い方とデジタルツールの選び方』」を開催した。

運行管理一元化の動きが政府主導で加速するなか、運送会社の存在意義は今まで以上に問われるようになる。今後の5年、10年先を見据えたとき、運送会社が生き残るためには、ITでは代用できない「モノを運ぶ」という価値を高めなければならない。そのために、いま運送会社がすべきこととは何か──。

イベントでは、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介を進行役に、AI配車管理システムを提供するライナロジクスの朴成浩社長、動態管理システム「Cariot」(キャリオット)を提供するフレクトからCEO(最高経営責任者)兼Cariot事業部長の黒川幸治氏、NTTコミュニケーションズの森岡孝太氏(ソリューション&マーケティング本部)を交えた4者が、5年後、10年後に必要とされる運送会社の必要条件を議論した。

▲(左から)LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介、NTTコミュニケーションズの森岡孝太氏、ライナロジクスの朴成浩社長、フレクトCEO兼Cariot事業部長の黒川幸治氏

現在、運行管理の一元化を推進する政府の動きについて、赤澤は「運行管理を外部委託できることは便利」としながらも「運送会社そのものの存在意義が問われる事態になっていく」と問題提起。全国に6万3000社以上あるとされる運送会社が存在意義を失わないために、「2024年問題」とされるいまがまさに、旧態依然の体制から脱却すべきチャンスでもある。それでは、具体的に何に取り組まなければならないか、あらためてゲストの3者に問うた。

フレクトの黒川氏は、「ドライバーの定着と仕事自体の満足度を上げる」といった取り組みの目的にフォーカスして回答。一方で、森岡氏と朴氏はそれぞれ「DX」(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードに挙げた。森岡氏は「労働人口が減るなかでも、運送業の本筋である、モノを運ぶということに注力するために、DXによってほかの業務を効率化することが重要だ」と語った。

また、5年後を見据えた変革で、抑えておかなければならないポイントは何かとの問いに対して、黒川氏は「DXと意識改革」を挙げた。前述のドライバーの定着、仕事の満足度向上につなげるため、デジタルツールの小難しい価値観に囚われないよう周知することが大切だとした。「投資対効果とかを考えず、現代のパソコンやスマートフォンと同様に、利便性を高めるツールという認識が定着すれば」(黒川氏)

朴氏は「ノウハウの可視化」を挙げ、レベルの高い日本の運送業の競争力の源泉は「勘と経験」にあるとしながらも「ここに頼り切りでは今後は保たない。物流の従事者を増やすために、デジタルによる標準化が必要」と指摘。森岡氏は「デジタルツールの導入だけにとどまらず、外部の力なども借りながらそれを使いこなせるようにすることが重要だ」と説いた。

今後の物流業界での生き残りを見据えた上で、「デジタルツール」が重要なテーマとなることは示されたが、登壇各社は運送業界に向けてどのようなアプローチをしているのか。

フレクトは、動態管理運行管理システムのCariotを提供している。同システムでは3秒に1回の頻繁な同期により、全車両の位置情報とステータスをリアルタイムに把握することができ、荷主との情報共有も可能だ。集計されたデータはドライバーごと、荷主ごとに集約できるなど、分析・改善への活用もしやすい。

ライナロジクスは、AI(人工知能)を活用した自動配車システム「ライナ」を紹介した。ライナは配車担当の思考をAIに取り込むことで、誰でも高度な配車計画を作成できるようにするクラウドサービス。日々の配送業務の負荷軽減に寄与するだけでなく、高効率な物流の提案やシミュレーションにも活用が可能だ。

NTTコムは、森岡氏の言う「デジタルツールの使いこなし」という点に着眼し、フレクトやライナロジクスのデジタルツールとNTTコムの運用サポートをパッケージ化した「ドコモビジネス」という法人向けサービスを展開している。企業の特性に合わせて必要な機能に絞ってツールを提案するなど、IT人材が不足している企業などへ導入・運用支援を行っている。初期のシステム構築から現地に赴いての勉強会の開催、専用のマニュアル作成のほか、ITツール導入補助金に関する煩雑な申請作業も手掛ける。

このドコモビジネスを通じ、NTTコムが同社のサポートと、ライナロジクスとフレクトのサービスをパッケージ化して提供することにより、運送会社がデジタルツールを導入・運用する際のハードルを下げることが、3社が協力する最大の狙いだ。

黒川氏は運送会社がデジタルツールを敬遠する理由について「費用が先に出ていき、効果の巻き取りが後になるという不確実性がある」ことを挙げ、また「経営者の意識は高いが、現場を説得できていないケースも多い。ドライバーからすると『監視されている』という気持ちが拭えない」といったドライバー側の心理面によるものも大きいと語った。朴氏も「そもそもよくわからないから抵抗感があるというパターンが多い。現場の抵抗感を取り除くことは重要」と同調した。

森岡氏は「サポートするという立場から、物理的な操作のサポートだけでなく、意識の部分も含め、利用者がしっかりとツールを使えていくようにサポートしていければ」と話し、「取っ掛かりの部分で何をすればよいかわからないなど、どのフェーズからでも、ご相談いただければサポートしていきたいと考えている」と、デジタルツールとは疎遠な運送会社に対しても気兼ねない相談を呼び掛けた。

朴氏は最後に、ドコモビジネスの補助金支援の機能について、今後はニーズが高まるだろうと推察した。「DXを進めるときに、一つのツールだけでDX実現とはなかなかいかない。複数のサービスの導入を考えたときに、補助金の導入というのは大事だし、それをサポートする機能というのは今後重要になってくる」

森岡氏は「各社の強みや知見を持ち寄り、連携し、物流業界に貢献できる部分をしっかりと汲み上げ、役立つサービスを提供するという目標を掲げ、今後も取り組んいきたい」と結んだ。

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LOGISTICS TODAY編集部
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