調査・データ日産自動車は6日、夏場の直射日光による社内温度の過度な上昇を防ぐ自動車用自己放射冷却塗装の実証実験を公開した。エアコン使用時のエネルギー消費を減らし、ガソリン車の燃費や電気自動車(EV)の電費の向上を図るのが狙いで、2023年11月から羽田空港内で、1年間の実証実験を続けている。

(出所:日産自動車)
実証実験に使用している塗料は、放射冷却製品の開発を専門とするラディクールジャパン(東京都中央区)と共同開発したもので、電磁波、振動、音などに対し自然界では通常見られない特性を示す人工物質「メタマテリアル」が、晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こす。これによって、太陽光を反射するだけでなく、車の屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出し、車内温度の上昇を抑制する。開発段階の比較実験では、この塗料を塗装した車両は通常塗装の車両に比べ、外部表面で最大12度、運転席頭部空間では5度の温度低下を確認した。
塗装の開発は、18年からラディクールジャパンと検討を始め、19年にはフィルムによる冷却効果を確認。21年からは塗装の共同開発を進めている。メタマテリアルの技術を利用した放射冷却塗料は、建築用途として実用化されているが、自動車用塗装は塗膜が薄く、クリアトップコートを使用するなど、建築塗装とは条件が異なる。このため、エアスプレーでの塗布や、クリアトップコートとの親和性、品質基準のクリアなどさまざまな条件への対応に取り組んできた。その結果、一般的な自動車塗装に用いられるエアスプレーを使った塗装で、冷却性能を確保しつつ0.12ミリ以下の大幅な薄膜化に成功した。
実証実験は、日本空港ビルデング(大田区)の協力で、ANAエアポートサービス(同)が羽田空港内で日常的に使用しているNV100クリッパーバンに同塗料を塗装して実施。冷却効果や塗料の劣化具合などを検証している。現時点で、塗装の欠けやはがれ、傷、塩害などの化学反応に対する耐性、色の一貫性、修復性に問題はないという。
同社では、将来的にトラックや救急車など炎天下での走行が多い商用車への採用を見込んでおり、商品化に向けてさらなる薄膜化に取り組んでいく。
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