調査・データCO2排出量削減のための技術開発を手掛ける九州大学発のスタートアップ、JCCL(福岡市西区)と東洋製罐グループホールディングス、三井物産プラスチック(東京都千代田区)は3月31日、CO2分離回収技術の早期実用化を目指して3社共同の取り組みを進めると発表した。
JCCLは、重油や都市ガスなどの燃焼後の排ガスから省エネルギーでCO2を分離回収する技術と、大気中から直接CO2を分離回収できる技術(DAC)の2つの技術をもっており、この2つの技術を組み合わせると、大気中の低濃度CO2を純度97-99%という高濃度な状態で回収できる。しかも、従来の技術に比べて低コストで、効率性も高い。
従来のCO2回収技術では、1日に数百サイクル以上吸収と再生を繰り返すため大量のエネルギーが必要だった。しかし、JCCLが開発した吸収材「アミン含有ゲル」は、排ガス中のCO2を高効率に吸収するだけでなく、40-60度の低温蒸気を供給するだけで吸収したCO2を容易に脱着・回収できる。このため、工場などから出る未利用排熱を活用でき、回収エネルギーも従来の方法に比べ4分の1程度まで抑えられる。
また、アミンには環境汚染のリスクがあるが、高分子ゲルに含有させて吸収材としているため揮発や流出の恐れもない。
こうした技術の実用化と普及を急ぐため、東洋製罐グループが包装容器の製造で培ってきた技術力と三井物産プラスチックの販売網を活用する。
具体的には今年度から東洋製罐グループの東洋鋼鈑下松事業所(山口県下松市)で、小型回収装置(VPSA1)を用いた設備運用の実証実験を実施。実証実験を通じて、各種材料の耐久性を検証するほか、設備の最適化や、設備量産に向けた技術開発を進める。それによって、今年度中に小型装置(CO2回収能力、1日当たり30キロ)、来年度にはコンテナ型CO2回収装置(同、1日当たり300-500キロ)の実用化を目指す。並行して、省エネルギー型のDACについても、今年度内の実証実験開始に向けて開発を進める。
また、回収したCO2の利活用に向けた取り組みについても、他の企業と連携を開始しているという。3社は「省エネルギー型のCO2分離回収プロセスや回収CO2の利活用モデルを早期に実現するため一体となって取り組み、2050年のカーボンニュートラル社会実現に貢献する」としている。
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