ロジスティクス全日本トラック協会(全ト協)は10日、都内で第226回常任理事会・第212回理事会合同会議を開催した。寺岡洋一新会長体制のもと、トラック適正化二法(トラック新法)に対応する「トラック適正化二法対策委員会」を新設するなど、新たな組織体制と活動方針を決定。会見に臨んだ寺岡会長は、新設委員会の委員長に自ら就任すると明かし、業界の長年の夢である新法の実現に「全身全霊で取り組む」と強い決意を示した。

▲全日本トラック協会の寺岡洋一会長
トラック適正化二法対策委など3委員会を新設
理事会では、新体制を支える7人の新副会長就任を決定。赤上信弥(秋田県)、吉田修一(神奈川県)、高田和夫(富山県)、山口嘉彦(岐阜県)、松田直樹(滋賀県)、二又茂明(福岡県)、御手洗安(愛媛県)の7氏が新たに寺岡会長を支える。また、委員会組織も再編し、最重要課題であるトラック適正化二法への対応を担う「トラック適正化二法対策委員会」、ハラスメント対策などを含む「社会的評価向上委員会」、車両の安全技術や保守管理を所管する「車両技術委員会」の3つの常任委員会を新たに設置した。これに加え、これまで小委員会だった「次世代トラック対応委員会」を常任委員会に格上げし、取り組みを強化する。
寺岡会長「最低運賃95%の早期実現を」、更新制で悪質業者退場へ
理事会後に行われた記者会見で、寺岡会長は今後の運営方針について具体的な見解を示した。新設した「トラック適正化二法対策委員会」を最重要視しているとし、前任の坂本克己最高顧問からの強い勧めもあり、自らが委員長を務めることを明らかにした。
同委員会が取り組むトラック適正化二法の2つの柱として、「事業許可の更新制」と「最低運賃制度」の早期実現を目指すと言及。事業許可の更新制については、適正化の総合評価であるAからEの5段階評価で「D評価、E評価を受けた事業者には(法に基づいて)対処してもらう」と改めて明言。これにより、業界の質の向上を図る考えを強調した。
最低運賃制度については、「現行の標準的運賃の95%が目標」とした上で、「これが実現すれば、業界全体が大きな恩恵を受け、運賃負担分を荷主に転嫁しやすくなる」と、制度への強い期待を語った。
一方で、2次下請けまでに制限する「多重下請け構造の是正」については、慎重な見方を示した。「そもそもドライバーが足りない中で、2次までに規制することが本当に正しいのか」と実務上の課題を指摘。「(回数制限より)元請けの、言葉は悪いが『ピンハネ率』を5%や10%までと規制する方が正しいのではないか」と見解を示した。
国交省幹部、新体制での課題解決に期待と支援を表明
理事会には、来賓として国土交通省の石原大物流・自動車局長、岡野まさ子大臣官房総括審議官、沓掛敏夫道路局長らが出席。寺岡新会長の新体制への期待を述べるとともに、省を挙げた支援を約束した。

▲国土交通省の石原大物流・自動車局長
7月1日付で物流・自動車局長に就任した石原氏は、物流分野も担当する岡野総括審議官との「2頭体制」で課題解決に臨むと表明。さらに、沓掛道路局長、そして前任で総合政策局長に就任した鶴田浩久氏の名も挙げ、「3頭、4頭体制でトラック物流の抱える課題に組織を挙げてしっかり対応していく」と述べ、省内の連携を強化して課題解決に取り組む姿勢を強調した。
岡野総括審議官も、トラック物流が重要な局面を迎えていることに触れ、自身も3年前に自動車局審議官として法改正に尽力した経験を振り返り、「改革進化の精神を忘れずに業界と一丸となって取り組む」と決意を述べた。

▲国土交通省の沓掛敏夫道路局長
道路行政を所管する沓掛局長は、ハード面での具体的な支援策に言及。高速道路のサービスエリア・パーキングエリアの駐車マスを、2017年度の2万7000台から24年度には3万1000台まで拡充したことを報告し、今年度もさらに510台分を追加する計画を明らかにした。また、主要道路の「ミッシングリンク」の解消や4車線化を着実に進めていること、高速道路料金の大口・多頻度割引を26年3月末まで延長したことなどを説明し、トラック業界が働きやすい環境整備を進めていくと語った。(鶴岡昇平)
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