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ROMSが13億円調達、独自性アピールする好機に

2025年9月8日 (月)

財務・人事ROMS(ロムス、東京都品川区)は8日、総額13億円の資金調達を実施したと発表した。既存投資家のDNX Ventures(港区)などに加え、新たにMonoful Venture Partners(MVP、中央区)が参画し、金融機関からのデット調達も含む。2022年以来3年ぶりの大型調達で、物流・製造業向けの自動化ソリューションを柱とする事業展開を加速する狙いだ。

同社は小売業向け自動化から方向転換し、高層仕分け機「Nano-Sorter」(ナノ・ソーター)や小型自動倉庫「Nano-Stream」(ナノ・ストリーム)などを展開。省スペース設計、短納期導入、柔軟な拡張性を強みに、EC(電子商取引)や製造分野でも導入実績を積み重ねている。今回の調達は、これらのソリューションが業界で広く評価された結果と位置付けられる。

▲Nano-Stream(出所:ROMS)

MVPは物流不動産やデータセンターを手がけるGLPグループ傘下で、ROMSにとって物流領域での認知向上を後押しする存在となる。調達資金はPRやマーケティング、新規採用、次世代モデル開発などに充てる計画だ。

今回の資金調達についてROMS経営戦略室長の阿部翔太郎氏に話を聞くことができた。阿部氏は、「ROMSがしっかりとした財務基盤を整えて着実に次のステージに進んでいることを、業界関係者に伝えることができたのでは」と語る。

特に新たな資金調達では、金融投資家だけではなくGLPグループのMVPが新規VCに参画したことも、物流業界に大きなインパクトを与える。

前回3年前の資金調達は、小売業をターゲットとした小型無人店舗RCS(Robotics Convenience Store)やネットスーパーを狙った小型自動倉庫NFC(Nano-Fulfillment Center)の将来性や先進性が評価されたものだった。極限まで省スペース運用とハードの小型化を突き詰めた開発コンセプトは、物流現場の運用を見据えた「自動倉庫」としての先進的機能へと発展し、さらなる成長を期待しての強力なバックアップへとつながった状況だ。「物流の現場においては、私たちの自動倉庫を紹介する機会が少しづつ増えてきた段階」と阿部氏はいう。物流領域、さらに製造現場の課題解決で社会貢献したいとの思いを実現するためには、活動を支える財務基盤強化の実現を通じて、業界内の信頼を確立し、期待に応えていくことも重要だ。

▲ROMS経営戦略室長の阿部翔太郎氏

広い領域をまたぐ効率化の知見を必要とする自動倉庫開発で、急成長する同社事業のスピード感から、“外国製”ソリューションと誤解されることも多いと阿部氏は語る。それはそのまま、同社の事業展開の迅速さが物流業界に大きなインパクトとなっていることの表れであり、反対にまだ物流の分野でROMSの名前が浸透していないことの証明だともいえる。

今回の新たな資金調達では、金融投資家だけではなくGLPグループのMVPが新規VCに参画したことは、物流領域の認知向上における大きな後ろ盾となることは間違いない。運用する施設、現場があってこその自動化ソリューションだけに、物流施設を発信源として同社の取り組みを広めていくチャンスも広がるかもしれない。「小売事業から、物流事業と製造現場へターゲットを移したソリューション開発で、私たちの独自性をより強力にアピールする局面が訪れた」(阿部氏)

阿部氏は自社ソリューションについて「小型」「日本製」「短納期」「柔軟対応」の4つのキーワードが、他社ソリューションとの決定的な違いと語る。高密度保管ラックと自動搬送AGVの連携によるGTP型の運用を実現したナノ・ストリームは、この4つの特長を集約したシステムであり、昨年春の正式リリースという短い期間で、すでに導入も拡大している。

新潟県の物流事業、bud梱包出荷サポートへのナノ・ストリーム導入事例では、発注から6か月という短納期の稼働を実践してみせた。「もともと新センターへの自動化機器導入を計画していたのを、それに先立って現稼働センターで、まずはトライアルしてみようということから導入が実現。小型だからできるスモールスタート、日本製で柔軟対応ができるからこそ可能なトライアル検証など、まさにナノ・ストリームの優位性が生かされた導入事例」(阿部氏)だ。今後、こうした事例を物流だけではなく製造現場でも積み上げていくことで、ROMSという名前が自動倉庫の代名詞となる日が来るかもしれない。

さらに、ターゲットに据える領域だけではなく、導入企業の規模感においても転換期を迎えていると阿部氏は語る。「スモールスタートは業界全体の自動化レベルの重要取り組みだが、それだけではなく大手企業の現場構築も増加している。大規模プロジェクトに対応する体力もしっかりと備えていることも、今後はしっかりと広めていきたい」(阿部氏)

9月10日から3日間の会期で開催される「国際総合物流展2025 第4回 INNOVATION EXPO」の出展では、このナノ・ストリームのデモ実演を披露する。「展示会でのアピールに踏み込んだのも、昨年1月のロボット展示会がはじめて。あらためて、物流業界のど真ん中でナノ・ストリームを提示し、私たちの取り組みへの理解を深めてもらいたい」(阿部氏)

事業の成長フェーズに向けて“来期に向けた次の機種”開発も加速する。また、成長を支える人材確保などにも力を入れ、安定基盤で野心的な開発に取り組むソリューションベンダーとしての地位確立を目指す。導入するユーザーだけではなく、現場最適化のために今後ますます活性化するであろうベンダー間の連携、共創実現においても、より大きなビジョン実現のためのパートナーとしての信頼獲得は欠かせない。同社が多様なソリューションとつながることは、業界全体の効率化を加速させる推進力となり得る。ほかのソリューションベンダーとの共同セミナーを積極的に開催するなど、現場最適化の提案に力を入れる。

INNOVATION EXPOでは、ブース内セミナーも開催。ナノ・ストリームに加えて、「梱包アシストAI」の機能も紹介する。来場者は、ナノ・ストリームをほかの自動倉庫と比較する機会となるが、「小型」「日本製」「短納期」「柔軟対応」のどれかで追随するソリューションがあったとしても、すべてを備えるのはナノ・ストリームだけであることなど、その開発の背景やコンセプトまでがより明確になるだろうと阿部氏はいい、「ソリューションの比較では、ハードの見た目や動作ばかりに目がいきがちだが、ソフトウェアなど見えにくい部分にこそ注目してもらいたい」と付け加える。「まずは、私をはじめブースの担当者に気軽に相談してもらうこと」と、会場での出会いに期待を寄せた。

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