イベントことし11月、物流業界を震撼させたアマゾン茨木フルフィルメントセンター(大阪府茨木市)の大規模火災。延床面積6万4000平方メートルを誇る最新鋭の巨大拠点が白煙を吹き出し、機能停止に追い込まれた光景は、まだ記憶に新しい。そして、この火災が我々に突きつけたのは、単なる「火事」の恐ろしさだけではない。複数の関係者からの証言で浮上したのは、「物流ロボットが出火元となった可能性」という、極めて現代的かつ構造的なリスクだ。

▲火災発生から36時間が経過した時点でも倉庫の通気孔からは煙が上がっていた(11月12日23時)
人手不足を解消し、効率化を追求するために導入されたはずのロボットが、あろうことか物流を止める「火種」となり得るのか。もし自社の拠点で同様の事態が起きたら、サプライチェーンは守れるのか。この問いに、自信を持って「Yes」と答えられる物流担当者は、果たしてどれだけいるだろうか。
本誌はこの事態を重く受け止め、12月19日に緊急オンラインイベント「物流、非常警戒時代-迫る火災とサイバーの脅威-」を開催する。イベントでは、アマゾン倉庫火災の教訓から、アスクルやアサヒグループを襲ったサイバー攻撃まで、物流インフラを襲う最新の脅威を徹底解剖。これまで見過ごされがちだった盲点に切り込む。
なぜ、ロボットは燃えるのか?「見えない時限爆弾」の正体
「ロボットが燃えるなんて、想定外だった」では済まされない。物流現場で稼働する搬送型ロボットの多くは、リチウムイオンバッテリーを動力源としている。高エネルギー密度で長時間稼働を支えるこのバッテリーは、ひとたび制御を失えば、爆発的な燃焼を引き起こすリスクを内包している。
今回のイベントに登壇する、シリウスグループ創業者で日本法人社長の蒋超(アダム)氏は、ロボット開発の最前線で安全技術に向き合ってきたエキスパートだ。同氏は「バッテリーの発火原因は、製造品質の問題だけではない。現場での物理的な衝撃、腐食性液体の侵入、そして過充電。これらが複合的に作用し、BMS(バッテリーマネジメントシステム)の監視網をすり抜けた時、ロボットは『走る発火源』へと変貌する」と警鐘を鳴らす。

▲シリウス創業者兼社長の蒋超氏
衝撃的なのは、日本における安全基準の曖昧さだ。充電器にはPSEマークなどの基準があるが、バッテリー本体や、それを制御するソフトウエアの安全性検証においては、欧米や中国の基準(CE、CCCなど)に比べて遅れをとっているのが実情だという。
物流拠点の統合・大型化が進む今、ひとつの火災がもたらす被害は甚大だ。在庫の焼失、出荷停止による機会損失、そして信用失墜。アマゾンの事例が示すように、自動化が進んだ拠点ほど、復旧には膨大な時間とコストを要する。ロボットによる省人化は不可逆な流れだが、それは同時に「新たな火災リスク」を倉庫内に抱え込むことと同義でもある。
「うちは中小だから関係ない」「大手のような大規模な自動化はしていない」そう考えるのは早計だ。サプライチェーンは繋がっている。取引先の大規模拠点が停止すれば、その影響は瞬く間に波及する。また、サイバー攻撃は企業の規模を問わず、セキュリティーの甘いところ(サプライチェーンの弱点)を狙ってくる。もはや、火災もサイバー攻撃も「対岸の火事」ではない。すべての物流企業にとっての「自分ごと」なのだ。
変化するリスクに対し、自社の物流インフラをどう守り抜くか。そのための「判断軸」を養うための緊急招集。経営層、安全管理部門、物流現場の責任者、それぞれの立場で「今、そこにある危機」を正しく認識し、対策への一歩を踏み出す機会にしてもらいたい。
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