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日本郵便・行木常務、総合物流企業へ“強い物流”作る

2025年10月6日 (月)

ロジスティクス日本郵便は6日、ロジスティードホールディングス(旧・日立物流)と資本業務提携を締結したことについて、報道向けの説明会を行った。日本郵便はロジスティードの株式の19.9%(経済持分ベース、議決権ベース14.9%)を1422億7900万円で取得。両社は国際物流からラストワンマイルまでを一気通貫でつなぐ体制を構築し、日本郵便グループの「総合物流企業」化を加速させる。

物流の「ミッシングピース」を埋める提携

説明会で登壇した日本郵便の行木司常務執行役員は、「日本郵便は郵便・宅配を中心に事業を展開してきたが、成長分野であるコントラクトロジスティクス(3PL)が空白地帯だった」と指摘。ロジスティードの持つ国内外の顧客基盤と倉庫オペレーション力を取り込むことで、「国際物流からラストワンマイルまでを地続きで結ぶ物流サプライチェーンを構築する」と述べた。

▲ステークホルダーへの影響(出所:日本郵便)

同社は2023年に掲げた中期経営方針「JPビジョン2025+」で、物流・不動産への重点投資を明示。6月にはトナミホールディングスを非上場化しており、今回の出資はその流れを継ぐものとなる。

出資スキームと今後の協業体制

日本郵便はロジスティードHDの株式19.9%を取得し、持分法適用は行わない。行木常務は「協議の結果この比率となった。現時点で追加出資は予定していない」と説明した。出資後は、日本郵便グループ各社(JPロジスティクス、トナミホールディングス、トール・ホールディングスなど)とロジスティードが連携し、企業間物流・倉庫・国際輸送・宅配を横断的に結ぶ体制を構築する。

また、日本郵便からロジスティードに取締役1人を派遣し、両社間で人材交流を実施。行木常務は「人材シナジーは人手の融通ではなく、ノウハウ共有と高度化が目的」と強調した。物流関連の人材を充てるが、人選は未定とした。

ロジスティードの強みと期待されるシナジー

行木常務はロジスティードの特長として、アジア太平洋地域でのナンバーワンの3PL実績、日系・非日系双方に広がる顧客基盤、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する技術力、業界トップクラスのオペレーショナルエクセレンスを挙げた。

その上で、「日本郵便の宅配・郵便網とロジスティードの3PL・倉庫機能を結ぶことで、企業間物流から消費者配送までの付加価値を高め、社会の要請に合致した“強い物流”をつくる」と語った。

両社は今後、ラストワンマイル・国内・国際の3領域で相互補完を進め、共同で新規顧客開拓や新サービス提案を行う計画だ。

▲日本郵便が想定するシナジー効果(出所:日本郵便)

質疑応答に見る狙いと課題

質疑では、出資比率や再上場時の方針、24年問題への対応などが問われた。行木常務は、再上場後の株式保有について「現時点で決定事項はない」と述べ、KKRと日立製作所が依然として過半数を保有する構造を説明した。

また、ドライバー不足に関しては「人材シナジーは技術・ノウハウ面の共有が主眼。運送リソース不足時には日本郵便のネットワーク活用も想定している」と回答。民業圧迫の懸念に対しては、「ユニバーサルサービスを維持しつつ、持続可能な事業基盤を築くことが必要」と理解を求めた。

総合物流企業への転換を本格化

日本郵便は15年のトール買収で国際物流に足場を築いたが、国内では郵便・宅配依存からの脱却が課題とされてきた。行木常務は「今回の提携で物流全体が地続きとなり、郵便だけでない総合物流企業として認識されるようにしたい」と語った。

今回の出資は単なる資本提携ではなく、日本郵便の物流再編の中核をなす一手である。トナミ、JPロジスティクス、ロジスティードの3社連携による事業統合の方向性は、今後の国内物流再編の試金石になりそうだ。

“19.9%の壁”、日本郵便の資本提携に透ける課題

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