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中小運送の相談現場から見えた「26年の淘汰と選別」

責任世代としての責務を果たし、物流を作り直す

2026年1月1日 (木)

話題法制度の本格施行、取引条件の見直し、そして避けられない業界再編。2024年問題を経て、物流業界は次の局面に入りつつある。現場ではいま、単なる制度対応ではなく、「未来に持続する物流とは何か」が改めて問われている。

こうした変化を、最前線で見つめてきたのが、採用支援と業務DXを軸に中小運送事業者と向き合うX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)だ。同社執行役員DX事業管掌の安藤雄真氏に、2024年問題の実像、25年の変化、そして26年以降に向けた業界の行方について聞いた。

鶴岡昇平(LOGISTICS TODAY記者) X Mileは創業から7年ほどですが、いまや業界の中ではトラック運送業の経営者からもよく名前を聞く存在になりました。昨年は自社開催のイベントに1800人を超える申し込みがあったと聞いています。まずは、安藤さんご自身がどんな立場で、どんな現場と向き合っているのか、改めて教えてください。

安藤 X Mileは物流業界向けに、採用支援と業務支援の二軸で事業を展開しています。私はDX事業を管掌していて、業務支援ツール「ロジポケ」を中心に、中小運送会社の経営者の方々と日々直接向き合っています。採用や労務の相談もあれば、「この先も会社を続けられるのか」という、かなり重たい相談を受けることも多いです。

鶴岡 運送事業者がまず避けて通れないのが2024年問題です。何年も前から言われてきましたが、実際に24年を迎えてみて、安藤さんの目にはどんな一年に映りましたか。

安藤 制度が始まった年というより、経営者と現場が“覚悟を問われた年”だったと思います。改善基準告示が改正されることは分かっていた。でも、それを守った結果、仕事が回らなくなるかもしれない。その現実を前にして、何を優先するのかを突きつけられた一年だったのだと思います。

▲X Mile執行役員DX事業管掌の安藤雄真氏

鶴岡 24年の年末には「物流は止まらなかった」という言う声もありましたね。

安藤 止まらなかったのではなく、止められなかったという表現の方が近いと思います。多くの現場が相当な無理をしていました。数字の上では現場は回っているように見えても、まったく余裕はなかったというのが実状でした。

鶴岡 25年になってその雰囲気は変わりましたか。

安藤 25年になると、24年を経て実態が見え、売上利益率や業務プロセスを冷静に分析し始めた企業が増えました。後半になると、荷主や元請けからの具体的なコミュニケーションが増え、一気に動きが加速した印象です。

鶴岡 中小の運送会社の動きはどうでしたか。

安藤 24年は静観していた企業が多かったと思います。やり方を大きく変える会社は少数派でした。改善基準告示は三六協定にも影響しますし、24年そのものより、25年3月の期末で「思ったより影響が出た」と感じた会社もあったはずです。

鶴岡 私も24年は様子見の年だったと感じています。

安藤 25年に入ると荷主や元請けがざわつき始めました。具体的な指示というより、情報を取りに来る、コミュニケーションを取り始める動きです。それを受けて運送会社側も、自分たちにも要求が来ると理解し、意思決定を始めた。25年後半になると、業界の変革を理解しない荷主とは取引しないと言う経営者が増えました。

鶴岡 それはまた、かなり踏み込んだ判断ですね。

安藤 こうした変化は着実に広がっていて、同じ温度感の経営者が確実に増えています。元請けや3PL側でも「車が捕まらない」という声が増え、26年に向けて運送パートナーを全社訪問する企業も出てきました。

▲LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平記者

鶴岡 パワーバランスが変わり始めた。

安藤 24年から25年でじわじわ変わり、26年はそれがより顕著になると思います。

鶴岡 26年は下請法から改正された取適法(中小受託取引適正化法)、改正物流2法、トラック適正化2法の運用が進みます。どこに注目しますか。

安藤 正直どれか一つには絞れません。全てが大きなインパクトを持ち、独立せずにつながっています。まず取引の見直しが始まり、多重構造の中で少しずつ変化が波及し、その先に運送側の制度対応が来るような流れを思い描いています。全部が連鎖ながら進んでいくんじゃないでしょうか。

鶴岡 現場からの相談内容も変わってきていますか。

安藤 25年後半は相談が急増しました。以前は「トラック新法って何?」「事業許可更新制って何?」という制度理解が中心でした。そこから後半は「どこから手を付けるべきか」「どんなツールを入れるべきか」と、具体的な業務改革の相談に変わりました。

鶴岡 反応の強さは2024年問題より大きかったりするんですか。

安藤 はい。監査や評価、事業許可更新制といった言葉が出てきて、一気に自分事になった感じがありますね。大手物流事業者の処分事例もあり、そこまでやるのかと実感した企業は多かったと思います。

鶴岡 具体的にはどんな分野の相談が多いのでしょうか。

安藤 点呼、安全管理、日報管理が特に多いですね。

鶴岡 ここ数年の制度整備で、点呼一つ取っても選択肢が増えましたよね。

安藤 中小企業からは「うちにはどれがいいのか」という相談が多いです。一方で100台超クラスになると、やりたい姿は決まっていて、その手段を探している印象です。

鶴岡 事業許可更新制が始まれば、業界の再編が進むと言われていますよね。会社数が6万3000社から5万、4万、場合によっては3万にまで減るという見方もありますね。

安藤 実際、運送会社の経営者と話していても「粗悪な運送会社はいなくなってほしい」という声を聞きますし、現場からもそうした流れを歓迎するムードを感じます。運送会社が減っていった中で選ばれるため、自社の強みを明確にし、どこを尖らせるかという方向に舵を切るかを考えている経営者が増えている印象があります。

鶴岡 荷主側も運送会社を選ぶ力が問われる時代がやってくるということですね。

安藤 荷姿や物量、ルートによって選ぶ会社が変わり、結果的に物流効率が上がるということも起きるんじゃ無いかという気がしています。

鶴岡 私も安藤さんも同じ世代ですが、先日同世代のスタートアップ経営者と話していたときに、その人が「自分たちはもう責任世代ですから」と、当たり前のように言ったんです。責任世代なんだから、我々が頑張らなくてどうするんだ、というわけです。なるほど、いつまでも先輩世代が何とかしてくれると思っている段階は終わっていて、業界の行方に対して私たちの世代も責任を持つ立場に来ているのかもしれないと思ったんです。運送会社を見ても、30代、下手すると20代の経営者がどんどん出てきている。こうした状況を踏まえて、安藤さんは今の世代の立ち位置をどう見ていますか。

安藤 まさにおっしゃる通りだと思います。私自身も、誰かが変えてくれるのを待つ世代ではもうないと感じています。社内でもよく話しますが、物流は日本経済の血液のような存在です。その物流の在り方を次の形に変えていく役割を、いま動いている世代が担わなければならない。一時的な取り組みではなく、新しいやり方を当たり前にするところまでやり切る責任があると思っています。先輩方が築いてきたインフラや産業を否定するのではなく、その上で次のステージに進める役割を担う世代だと考えています。

鶴岡 ちなみに御社はスタートアップですが、平均年齢はかなり若いですよね。

安藤 全社平均で20代です。クロスマイルでは「令和を代表するメガベンチャーを作る」というビジョンを掲げています。業界を変える意思を持って集まっているメンバーなので、年齢に関係なく、変えに行く側に立つという意識は共有しています。

鶴岡 上の世代ばかり見ていると見落としがちですが、同じ世代、あるいは下の世代に目を向けると、業界の未来の芽はもう出ていると感じます。だからこそ、同じ温度感を持つ世代同士で、横のつながりを意識することも大事になってきますよね。

安藤 本当にそうですね。同世代だからこそ共有できる感覚やスピード感がありますし、それぞれの得意分野を持ち寄れば、業界を変える力になると思います。同じ温度感で、業界をどう変えるか、何ができるかを共有できる場は、これからもっと必要になると思います。

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