話題物流自動化やロボット導入が注目を集める一方で、「入れたが使いこなせていない」という現場の声は少なくない。制度や補助金が先行し、現場改善との間にギャップが生じているのが実情だ。そうしたなかで、設計・施工という下流から、要件整理や使いこなし設計といった上流までを一気通貫で担う「物流インテグレーター」を掲げるのがT5(東京都世田谷区)だ。日本GLP、プラスオートメーションを経て独立した大西弘基氏は、なぜこの立ち位置を選んだのか。LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が、その問題意識を同社代表の大西氏に聞いた。

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赤澤 まずは自己紹介からお願いします。T5という会社が、どんな立ち位置で何をしているのかを教えてください。
大西 T5の大西です。私は建築出身で、日本GLPに入社して物流施設の開発や企画を担当しました。その後、日本GLPと三井物産が設立したプラスオートメーションに関わり、物流ロボットのサブスクリプション事業に携わりました。出向期間を終えてGLPに戻り、その後、独立する形で現在のT5を立ち上げました。
赤澤 T5はゼロから新設した会社ではなく、もともとあった会社を引き継いでいますよね。

▲T5代表の大西弘基氏
大西 そうですね。もともとは施工や設計を強みにしていた会社で、前代表が高齢になり後継者がいない状況でした。ちょうど私が独立を考えていたタイミングで事業承継の話があり、引き継ぐ形になりました。プラスオートメーション時代にも、その会社には工事や設計で関わっていたので、事業の中身も理解していましたし、新しく作るよりも現実的で、スピード感もある選択だったと思います。
赤澤 施工や設計が出発点というのは、T5の大きな特徴ですね。
大西 はい。ただ、施工は物流自動化のプロセスの中では一番下流です。今は「そもそも本当にロボットが必要なのか」「どこがボトルネックなのか」「運用で解決できる部分はないのか」といった前段の整理から入り、最後の施工まで一気通貫でつなぐことを事業の柱にしています。
赤澤 GLP、ロボット事業、そしてT5とキャリアが続いていますが、計画的だにこうしたキャリアを歩まれたんですか。
大西 正直、行き当たりばったりに近い部分もあります。ただ、物流施設をつくる仕事については、ある程度やり切った感覚がありました。その先で「物流そのものをどう良くするか」「現場で本当に効く改善は何か」というソリューションの領域に踏み込みたいと思った。それがプラスオートメーションであり、今のT5につながっています。

赤澤 さまざまな現場をご覧になっていると思いますが、物流のどこに一番課題を感じますか。
大西 製造業と違って、物流は毎回条件が違います。波動もあれば、荷主ごとのルールもある。さらに物流側に決定権がなく、要求が上から降りてくる構造です。その結果、自分たちで投資や改善をコントロールしにくい。そこが自動化が進みにくい根本原因だと感じました。
赤澤 それでもロボット導入はかなり進んできていますよね。
大西 進んではいます。ただ正直に言うと、ロボットを入れたものの、想定していたほど効果が出ていない現場や、使いこなせていない会社は結構あります。入れたことで満足してしまっているケースも少なくありません。
赤澤 入れれば解決、ではないということですね。
大西 そうですね。本来は、導入前に描いていた現状からの改善が、現場で本当に実現できているのかを検証し続けないといけない。そこを見ずに『入れたからOK』になってしまうと、改善は止まってしまいます。
赤澤 具体的には、どんな場面で「使いこなせていない」と感じることが多いですか。
大西 例えば、処理能力のピークだけを前提にロボットの台数を決めてしまい、普段は持て余しているケースがあります。また、波動を考慮しないまま導入して、人の作業と噛み合っていないケースや、WMS(倉庫管理システム)や既存の運用ルールと合わず、結局人がフォローに回っているケースも多い。ロボット自体は悪くないのに、前後の設計が足りないために効果が出ていないことが少なくありません。

赤澤 ロボット以外の選択肢もあるということですね。
大西 あります。ロボットではなく、コンベヤーの設置や作業動線の見直し、シフト設計の変更で解決できたはずのケースも多い。それでも「せっかく入れたから」「補助金を使ったから」と修正されないまま使われている現場をよく見ます。
赤澤 そこでT5の立ち位置が効いてくる感じがしますね。
大西 メーカーや商流に縛られず、現場にとって一番効果的な解を選べる点が強みです。ロボットよりコンベヤーの方がいいならそう言うし、ロボットの台数を減らした方が投資対効果が高いなら減らす。ロボットを売る立場では、なかなかそうした提案はできないのではないでしょうか。
赤澤 失敗できない中小企業にとってはちょっとしたコストの違いや投資効果の違いはとても重要ですよね。
大西 大企業は投資余力もあるし、例え失敗しても吸収できますが、中小企業はそうはいかない。一度の自動化投資が経営に与えるインパクトは大きいです。だから私たちは、特に中小の3PLや荷主に寄り添うことを重視しています。
赤澤 T5のメンバー構成もなかなかに特徴的だと聞いていますが、どんな方がいらっしゃるんですか。
大西 はい。メーカー出身者だけでなく、実際に3PLで現場を回してきた人材を中核にしています。使う側の視点がないと、『理屈としては正しいけれど現場では回らない』提案になってしまう。コンサルとも違い、最終的に実装まで責任を持つという点も意識しています。

赤澤 2024年問題の元になっている改善基準告示の改正のほかトラック新法、取り適法などの整備が進み、CLO(物流統括管理者)専任義務化など物流を取り巻く制度が激変していることにはどう思われますか。
大西 方向性としては間違っていないと思います。ただ、制度ができたからといって現場がすぐに変わるわけではない。現場には常にタイムラグがあります。私たちは、そうした制度と現場の間に立って、現実的に何ができるかを一つずつ積み上げていく立場だと思っています。
赤澤 具体的な支援事例にはどのようなものがありますか。
大西 西濃グループの子会社である3PL、地区宅便さんの支援です。最初は5Sや朝礼の定着といった現場改善から始めました。半年以上かけて現場の成熟度を高め、ようやく自動化の話ができる段階に来ています。導入は2026年夏頃を予定しています。
赤澤 朝礼からロボットまで、かなり幅がありますね。
大西 でも、それが現実です。現場が整っていなければ、どんな機器を入れても意味がない。そこを飛ばして自動化だけを進めると、結局使いこなせないまま終わってしまいます。
赤澤 2026年に向けて、T5として目指す姿はどんなものでしょうか。
大西 売上規模や派手な数字を追うよりも、「失敗を防いだ事例」「現場が本当に楽になった事例」を積み重ねたい。施工と上流の比率で言えば、選定や使いこなし設計といった上流の存在感を高めていく。その結果として、「物流インテグレーター」という立ち位置が自然に伝わる状態を目指しています。
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