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CLO・4PL・フィジカルインターネットが示す、26年の分岐点

“北極星”を定めたとき、物流は経営になる

2026年1月1日 (木)

話題2024年問題を契機に、物流業界は長い眠りから覚めた。35年ぶりの法改正、CLO(物流統括管理者)の義務化、フィジカルインターネットという新たな言葉。ドライバー不足に長時間労働、配送効率の低迷といった現場の悲鳴が、ついに経営陣の耳に届いた。物流はもはや下請け任せの業務ではない。企業の生命線を握る戦略課題として、経営会議の議題に躍り出たのだ。

25年3月、シグマクシスが仕掛けたグローバルCLOサミットは、まさに変革の狼煙だった。「ノーススター」(北極星)──経営者が掲げる揺るがぬ羅針盤──という言葉が示す経営視点の転換、4PLという新顔の登場、そして共同物流からフィジカルインターネットへと続く道筋。この一年で、物流業界の地図は確実に書き換えられた。

そして26年、技術革新がトリガーとなり、さらなる劇的な変化が訪れようとしている。新春を迎え、シグマクシスビジネスデベロップメントシェルパ2 ロジスティクスディレクターの池田祐一郎氏とLOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長が昨年を振り返りつつ、26年の展望を語り合った。

経営アジェンダとなったロジスティクス

赤澤 25年は物流業界の大きな転換点でした。特に印象的だったのが、3月のグローバルCLOサミットです。カリフォルニア大学サンディエゴ校のヘレン先生をお招きし、30人のCLO候補者とともに物流の経営視点を議論しました。池田さん、あの時の「ノーススター」という言葉は、その後の業界に大きな影響を与えましたね。

池田 その通りです。ヘレン先生が強調されたのは、サプライチェーンマネジメントではIQ(知能指数(よりもEQ(感情知能)が重要だという点でした。初代iPhoneのサプライチェーン構築に携わった経験から、技術的な最適化だけでなく、リーダーシップと各社との連携こそが成功の鍵だとおっしゃっていました。物流は業務レベルから経営レベルへ、明確に一段階上がったと実感しています。

▲シグマクシスの池田祐一郎氏

赤澤 ノーススターという概念は、その後さまざまなイベントで引用されるようになりましたね。経営者が示す変わらない目標に向かって、それぞれの役職に応じた責任を果たしながら、全員が同じ方向を向く。これがCLOに求められる本質だと理解しました。

フィジカルインターネット――概念から実装へ

池田 シグマクシスは6年前からフィジカルインターネットを追いかけてきました。当時は誰も知らない概念でしたが、25年はこれが「動き始めた年」だと言えます。フィジカルインターネットとは、インターネットの概念を物流に適用したものです。従来のハブ&スポーク型ではなく、フルメッシュ型のネットワークを構築する考え方を指します。

赤澤 砂をこす網の例えは分かりやすいですね。網目が細かければ、どこかが詰まっても砂は落ちていく。供給力が需要に対してひっ迫している今、1対1の固定的な物流ではなく、N対Nの柔軟な組み合わせが必要になるということですね。

池田 その通りです。25年3月に発表したホワイトペーパー「経営視点でオーケストレートする物流変革」では、35年ぶりの物流業法改正を背景に、重要な視点を示しました。既存の物流会社や荷主企業だけでなく、不動産会社、商社、通信会社といった新たなプレイヤーが物流業界に参入する可能性です。

赤澤 「オーケストレート」(指揮する)という表現も核心を突いていますね。上から命令するのではなく、オーケストラの指揮者のように各専門家の強みを引き出し、チーム全体の力を最大化する。これがCLOの真の役割です。

4PLという新たな概念の浸透

赤澤 25年を通じて、4PL(フォース・パーティー・ロジスティクス)という言葉が急速に広まりました。当初は一部企業が差別化に使う用語という印象でしたが、CLO義務化の議論が進むにつれ、その意味が明確になってきましたね。

池田 4PLは3PLを束ねる上位概念です。昨年12月に発表したホワイトペーパー「動き出したフィジカルインターネット」では、実際のプロジェクト事例を紹介しました。大手不動産デベロッパーとの商業モール共同配送、商社が複雑化した物流網を整理して4PLとして新規ビジネスを立ち上げた事例などです。

赤澤 CLOは1人のスーパーマンではなく、チームとして機能することが重要だと理解しました。そのチームの一員として、4PLが専門家として参画する。従来の荷主と物流会社という枠を超え、時にはほかのコンサルティング会社との橋渡し役も担う。この構造が腹に落ちた瞬間、「4PLの時代が来る」と確信しました。

池田 ありがとうございます。CLOは指揮者として、さまざまな専門家を周りに配置し、北極星に向かって進んでいく。これが今、経営アジェンダとなっているのです。

共同物流からフィジカルインターネットへ

赤澤 25年は共同物流の実例が数多く生まれました。業界内の水平連携に加え、垂直連携も進んでいます。例えば、2次加工メーカーが1次産品メーカーの納品便を活用して物流を共同化するなど、具体的な動きが見られました。

池田 共同物流は、フィジカルインターネットへの段階的な進化の一部だと考えています。業界内の連携が進み、徐々にフィジカルインターネットに近づいていく。一方で、どこかで急激な変化が起こる可能性もあります。データドリブンの世界が突然構築され、ある日フィジカルインターネットが実現する、そんな垂直立ち上がりのシナリオも否定できません。

赤澤 政府もフィジカルインターネットのPRや成熟度レベルの測定など、導入を前提とした動きを見せています。概念から実装フェーズへの移行が明確になってきましたね。

2026年、技術革新がトリガーを引く

赤澤 池田さんは26年に「何かトリガーが引かれる」とおっしゃいました。それは何を意味しているのでしょうか。

池田 詳細はまだお伝えできませんが、ことし何かが起こると確信しています。現在は技術革新の前段階です。ビジネスモデルや業務プロセスの整理が進んでいます。しかし、技術革新が実装されれば、一気に局面が変わるでしょう。ITやロボティクスの企業は物流に参入していますが、彼らの技術を最大限活用できる環境はまだ整っていません。ヒューマノイドなども含め、技術を最大化できる土壌が整った瞬間、急速に面白い展開が訪れると考えています。

赤澤 既存の技術がロジスティクスに適用され、変革を引き起こす、私も同じイメージを持っています。その発表があった瞬間、業界関係者の反応は二分するでしょうね。賞賛の声を上げる人もいれば、背筋が凍る思いをする人もいるはずです。

荷主企業が今すべきこと

赤澤 26年6月には3200人のCLOが誕生します。残り数か月で、荷主企業は何をすべきでしょうか。

▲池田氏著。フィジカルインターネットとCLOによる物流変革と成長戦略を説いている。

池田 可視化などの実務的な準備も重要ですが、最も大切なのは「今まで付き合ったことがない人たちと関係を築くこと」です。私たちが19年から開催している「エコオケの会」(エコシステムのオーケストレーターになりたい人の会)には、荷主企業、物流会社、IT企業だけでなく、メディア、金融、大学教員、学生など、多様な参加者が集まっています。

赤澤 エコオケの会の熱量は本当にすごいですね。グループに分かれて議論し、プロフェッショナルが講評する。こうした活動が当たり前のように行われています。

池田 物流業界は従来、固有の仲間とスクラムを組んできました。しかし今、外の世界を見て、新しい会社と対話することが重要です。金融や不動産のソリューションなど、他業界では当たり前のことが物流に適用できる可能性があります。視野を広げる活動を、ことし1年かけて進めていただきたいですね。

2026年グローバルCLOサミットへの期待

赤澤 1月19日開催の26年版グローバルCLOサミットには、フィジカルインターネット提唱者の一人、パリ国立高等工業学校のエリック・バロー先生が来日されるそうですね。

池田 はい。ヨーロッパのフィジカルインターネットの状況や日本への適用について議論します。CLO、CLO候補者、4PLになり得るサプライヤー側の方々、参謀となる管理職、そしてサプライチェーンを学ぶ学生も招待しています。産官学の連携を深め、立場は違えど同じ北極星を目指す人たちが集まる場にしたいと考えています。

赤澤 昨年3月のサミットから始まった議論が、この1年で大きく広がりました。今回のサミットが26年のロジスティクスの動きを占う重要なきっかけになりそうですね。

池田 期待に応えられるよう、実りあるイベントにしたいと思います。今まで付き合いのなかった方々との出会いの場として、多くの方に参加していただきたいですね。

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