話題物流業界が大きな転換期を迎えた。2024年問題を経て、変革の「実装フェーズ」に突入。企業に求められるのは改善ではなく変革だ。労働力不足が深刻化するなか、サプライチェーンの高度化とROIC経営への対応が急務だ。
APT社長の井上良太氏と、シグマクシス ビジネスデベロップメントシェルパ2 ロジスティクスディレクターの池田祐一郎氏が物流の未来を語った。キーワードは「内製化」と「アセットライト」。この2つの戦略をどう両立させ、持続可能なサプライチェーンを構築するか。両氏の対談から実践的なヒントが見える。

▲シグマクシス ビジネスデベロップメントシェルパ2 ロジスティクスディレクターの池田祐一郎氏(左)、APT社長の井上良太氏(右)
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選択肢の海に溺れる顧客──2026年が本当の変革元年
井上 2025年の国際物流展は壮観でした。自動化機器メーカーが乱立し、顧客は選択肢の海に溺れています。技術は成熟期を迎え、似た製品が国内外に溢れる。部分最適の提案ばかりが目立つなか、求められるのは全体最適の視点で設備とシステムを統合できるプレーヤーです。私たちAPTは倉庫自動化とシステム開発を手がけています。金融機関からベンチャーキャピタルという異色の経歴を生かし、投資の目線で物流改革を支援してきました。16年の経営で得た最大の財産は、運と人の縁に恵まれたことです。

池田 まさに変革期の実装フェーズですね。私はシグマクシスでロジスティクスのチームをリードしています。25年は特に物流領域で「改善」から「変革」へと言葉が変わったと感じています。日本企業がROIC経営に注目するなか、サプライチェーンやロジスティクスを使ってROIC経営を実現する意識が高まっています。
今後、労働力がひっ迫するなかで効率性を担保するには、リードタイムは今より伸びるでしょう。リードタイムが伸びれば在庫が増えます。在庫をどれだけ最小化するかが重要になります。地産地消とハブ&スポークを組み合わせた高度なサプライチェーンのネットワークを使いながら、管理する拠点の数が増えるなかで在庫をどうミニマイズするのか。これがROIC経営に寄与するという声が出ています。
井上 その通りです。ドライバー不足や倉庫の労働力不足は以前から叫ばれていものの、現場で直面する機会は少なかった。それが25年、目の前の課題として立ちはだかってきました。本当の元年は26年かもしれません。来年以降、自動化の波が本格化し、労働者不足が深刻に企業に突きつけられる年になると感じています。
全体最適を描ける相談相手を見つけよ
池田 そうしたなかで、各企業が内製化に取り組む一方、その道のりはかなり厳しいのが現実です。変革とは、今のオペレーションとのギャップが大きな世界への突入を意味します。属人化や人頼りでは実現が難しい。システムの導入や設備を入れたり、ロボットを使ったり、AIを活用する。それらを組み合わせながら、自律的なサプライチェーンマネジメントを実行できる企業が今後、優位性を持つのではないでしょうか。自動化が推進されるなかで、井上さんが営業の現場やお客様と対峙するなかで感じたことは何ですか。
井上 まず、自動化ありきではなく、物流を改善したいという意思を持ったら、それを相談できる誰かをしっかり見つけることが第一歩です。プレイヤーが乱立していますが、多くは部分最適にとどまっている。全体最適に目を広げ、設備やシステムを統合的にリードできるプレイヤーに相談しないと、数年後にはロボットが倉庫の隅に追いやられてしまいます。いきなりロボットを決めるのではなく、戦略から考えることが成功への近道です。お客様の多くは「AGVが欲しい」と言いますが、その背景にはもっと大きな戦略が隠れています。そこを着実に吸い上げて、一緒に入っていける取っ掛かりを作ることが重要です。
池田 なるほど。統合的にそういった機器をオーガナイズできる企業や人に相談するところから始まるわけですね。ユーザーからすると、どういう形になると実現できるのでしょうか。
井上 一社で完結するのは難しい。部分最適の連続ではなく、全体最適に目を広げる必要があります。これとこれをこうつなぐと、こんなことができる、という観点で設備を選び、システムを導入する。統合制御できるシステムも必要ですし、その手前に統合的に機器をオーガナイズできる企業や人への相談も始める必要があります。
内製化フェーズ1は「資質の高いパートナー探し」
池田 内製化についてはどうお考えですか。多くの荷主企業が内製化を進めたいと言っていますが、実際には個社では変革を実現できる会社は少ないのが現実です。
井上 内製化の定義が大事です。何から何まで自分のところで抱えるのは、逆に非効率でコストがかかる可能性が高い。4PLのように、仕組みやコストを見える化し、お客様と一緒に考えてワークするのが真の内製化だと捉えています。資質の高いパートナーを見つけることが内製化の第一歩、フェーズ1です。
池田 その通りです。私は4PLのモデルが必ずこうでなければいけないとは思っていません。重要なのは荷主視点に立っているかどうかです。4PLとなり得るような荷主視点で物を考えてくれる、資質の高いサプライヤーとタッグを組んで改革を実行していく。これが今後の主流になるでしょう。一社では完結できない変革をやり遂げるためには、そういうパートナリングが今後重要になります。
井上 現場のお悩みを聞くことが増えています。人の手配に困っている、コストが見えないといった声です。そこに解決策を持っていこうとすると、4PLの立ち位置にいかないと根本は解決しません。システム会社であり機器メーカーであり、オペレーションもありながら、何者かよく分からないようなポジションを日本で作りたい。これが来年からのチャレンジです。
アセットライト戦略──持つか、使うか
池田 アセットライト戦略も重要なテーマですね。倉庫の自動化が進むと、設備投資が膨らみ、ROIC経営の観点からは逆効果になる可能性もあります。資本を効率的に使うには、倉庫や設備を自社で持つべきか、借りて使うべきか。ここは議論が分かれるところだと思いますが、いかがでしょうか。
井上 ケースバイケースですね。単純な設備なら購入してコストを抑えられます。ただ、多機能を求めると設備が増え、資産が重くなる。BSやキャッシュへの影響も大きいので、変動費化する仕組みを模索中です。センター全体や設備全体を変動費で提供できれば、お客様の負担は軽くなります。古い仕組みに縛られた会社が多いので、土地や建物を売却してリースバックし、得た資金を成長投資に回す選択肢も検討する価値があります。
池田 海外では、自動化するにあたって設備を持つという選択肢と使うという選択肢があります。大型の自動倉庫からロボット、さらには土地建物の倉庫インフラまで統合的にサービス提供している会社があると聞いています。こうしたものに対する見解はいかがですか。

井上 まさにそこにチャレンジしたい。物流センターを構築する要素は多く、関係者が増えるとコストが見えづらく、コントロールがしづらくなります。なるべくシンプルにフラットにし、お客様からコストが見えるような形にして、アセットからオペレーションまでを提供する。これは魅力的なメニューになり得ます。実際、ある総合商社では首都圏の大型センターから、地方の保管特化型倉庫と首都圏の小型仕分けセンターを組み合わせる戦略に転換しています。在庫を地方に集約し、首都圏では必要な分だけを入れてサブスクのツールで回す。保管と仕分けを組み合わせて物流全体を組み立てる動きが出てきています。
バリューチェーンを超えた協業が鍵
池田 私たちもコンサルティングを通じて感じるのは、ROIC経営において、アセットライト戦略は今後必須の検討課題だということです。サプライチェーン網が高度化すると、荷主企業の在庫は増える傾向にあります。ここをミニマイズしなければいけない。在庫の保管効率を上げるだけでなく、在庫そのものをコントロールする。これは従来の物流サプライヤーが踏み込まなかった領域です。例えば我々のようなコンサルティング会社と協業するなど、他のパートナーと組みながら、バリューチェーンを超えて統合的なサービスを提供する。これが実装フェーズを実現する鍵になるのではないでしょうか。
井上 その通りですね。保管や仕分けは、一昔前まで本当に突入機器メーカー、マテハンメーカーが独壇場だった世界です。ただテクノロジーが進化してロボットが軽くなったり、モバイル型になったりして取っ付きやすくなったなかで、我々のような新興系の会社が取り扱うケースが増えてきました。ただ、我々のケーパビリティーでは上流工程がなかなか抑えられないので、池田さんの会社のようなコンサルティングファームとタッグを組むことはどんどん起こり得ると思いますし、お客様にとって新しい選択肢になると思います。
池田 そうなるとサプライヤー側の資質も上がって、サプライヤーなのか荷主企業なのかという壁や境界線が究極的にはなくなって、対象企業の企業価値が上がっていく。そういうところにみんなで寄与できるようなチーミングができると非常にいいですね。私たちもぜひそこに入っていって、お客様の業務変革をお手伝いしたい。
来年はCLO(物流統括管理者)、チーフロジスティクスオフィサーが荷主企業に3600人誕生すると言われています。サプライヤー側も、CLOと対峙できる資質の高い企業が台頭してくるでしょう。一社では完結できない変革を実現するために、パートナリングが重要になります。
実装フェーズの鍵は3つ
井上 まとめると、まず内製化フェーズ1として、資質の高いパートナーを見つける。次にアセットライト戦略を進め、自動化と資本効率の両立を図る。そして在庫の最小化に取り組む。この3つが実装フェーズの鍵です。選択肢が広がっていますので、全て自分たちで抱える時代ではありません。いいものを使う、いいものを選ぶという時代に来ています。
池田 来年はそうした取り組みを本格化させたいですね。物流変革は待ったなし。内製化とアセットライトを両輪に、持続可能な未来を共に創りましょう。
井上 楽しみな一年になりそうです。運に恵まれ、ご縁を大事にしてきた16年間でしたが、これからも新しいチャレンジを続けていきます。

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