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ソフトウエア起点で現場に合わせる、ROI重視の自動化設計

ロボット導入は「目的」ではなく「手段」だ

2026年1月1日 (木)

話題物流ロボット開発の世界で、シリウスロボティクスは一貫して「ソフトウエア起点」を掲げてきた。シリウスグループ創業者でCEOのアダム・ジャン氏は、日本でソフトウエアエンジニアとしてキャリアを積み、起業のために中国へ戻った異色の経歴を持つ。

市場に合うロボットがなければ自ら作る──その決断の裏には、米国型の自動化モデルでは中国や日本の物流構造に適合しないという冷静な分析があった。なぜソフトウエアから始めたのか。なぜロボット開発に踏み切ったのか。創業初期の試行錯誤と、思想の原点を聞いた。

赤澤 物流向けロボットメーカー、シリウスグループ創業者兼CEOのアダム・ジャンさんにお越しいただきました。現在は日本法人の責任者も兼務されていますよね。

ジャン そうです。2024年10月から日本法人の責任者も兼ねています。

赤澤 シリウスロボティクスの拠点構成を改めて教えてください。

ジャン 本社は中国の北京にあり、開発拠点は北京と深センです。海外では東京に日本と韓国をカバーするオフィス、シンガポールに東南アジアと中東を担当するオフィスがあります。

▲シリウスグループ創業者兼CEOのアダム・ジャン氏

赤澤 ご自身の経歴をたどると、日本との関わりがかなり深いですよね。

ジャン はい。日本には10年以上住んでいました。大学卒業後も日本で働き、その過程で日本国籍を取得しています。

赤澤 生まれは中国ですよね。

ジャン 中国の西安です。昔の長安ですね。

赤澤 大学では何を学ばれたんですか。

ジャン コンピューターサイエンスとソフトウエアです。大学時代からAIや画像処理に触れていました。

赤澤 卒業後は中国ではなく、日本で就職された。

ジャン もともとは中国で働くつもりでした。西安にはファーウェイやアリババなどもあり、オファーもありました。ただ、大学構内で偶然、日本の企業の採用試験の掲示を見かけて、「ちょっと世界を広げてみよう」と思ったんです。

赤澤 かなり偶然ですね。

ジャン 本当に偶然です。でも、その選択がその後の人生を決めました。

赤澤 日本ではどんな会社で働いていたんですか。

ジャン NVIDIA Japanです。GPUを使ったソフトウエア開発や、日本の顧客向けの技術サポートをしていました。

赤澤 今につながる経験ですね。

ジャン そうですね。画像処理やビデオ処理の仕事が多く、ロボットの「目」になる技術が自分の原点だと思っています。

赤澤 そこから起業を考えるようになる。

ジャン はい。ただ、最初からロボットを作ろうと思っていたわけではありません。倉庫や工場の効率を上げるためのソフトウエアを作りたいと考えていました。

赤澤 それがどうしてロボットを作ることになったんですか。

ジャン 市場を探しても、コストや性能を考えると、使えるロボットが見当たらなかった。だったら自分で作ろうと考えました。

赤澤 ロボット開発の経験はなかったわけですよね。

ジャン ありませんでした。ただ、ソフトウエアから定義すればできるのではないかと思った。ハードウエアはできるだけシンプルにして、ソフトウエアで価値を出すロボットです。

赤澤 創業時の体制はどうだったんですか。

ジャン 創業者は4人で、全員ソフトウエア出身です。最初の資金は私が一人で出しました。およそ300万元です。

赤澤 かなりの覚悟ですね。

ジャン そのうち40万元を使って、GPUのスーパーコンピューターを買いました。シミュレーターやソフトウエア開発に使うためです。

赤澤 今も残っているそうですね。

ジャン はい。今も使っていますし、「四十万元」という名前を付けています。シリウスロボティクスの原点ですね。

赤澤 最初はロボットを作らず、シミュレーターから入った。

ジャン はい。仮想空間の中で、人とロボットをどう動かせば効率が出るかを先に作りました。群制御やスケジューリングを含めてです。

赤澤 そのソフトウエアは今も使われている。

ジャン 今でも使っています。100台のロボットと20人の作業者をどう動かせば効率が最大化できるか、そういう計算をしています。

赤澤 それだけ完成度の高いものができた。

ジャン はい。ただ、その時点では動かすロボットがなかった。

赤澤 最初のロボットはいつ完成したんですか。

ジャン 2018年11月です。開発開始からおよそ40日で、4台を同時に作りました。

赤澤 かなり無茶なスケジュールですね。

ジャン ほとんど眠らず、24時間体制でした。でも1台だけ作っても意味がない。最初から複数台で動かす前提でした。

赤澤 そこから40台まで増やした。

ジャン はい。4台でいけると判断して、40台に増やしました。

赤澤 その時点では顧客はいなかった。

ジャン いませんでした。ただ同時期に、中国の代表的なEC(電子商取引)企業であるJD.comと話が進み、30台を導入してもらいました。

赤澤 かなり大胆な立ち上がり方ですね。

ジャン ソフトウエアとロボットを一体で考えないと、この分野では価値を出せないと思っていました。

赤澤 ここまで聞いた感じだと、技術というより考え方の話ですね。

ジャン そうだと思います。どの市場に、どんな構造で導入すればROI(投資利益率)が出るのか。それを考えるところから始めました。

赤澤 その市場として、日本はどう見えていたんですか。

ジャン 日本は技術先行ではなく、ROIを非常に重視する市場だと思っています。人手不足は深刻ですが、だからといって高額な設備を簡単に導入できるわけではありません。

赤澤 確かに、日本企業は投資判断が慎重な傾向がありますよね。

ジャン そうです。ですから最初から大規模な自動倉庫を入れるという発想は、日本では合わないと考えました。スモールスタートできて、必要に応じて拡張できる仕組みが必要です。

赤澤 その解がAMRだったということですね。

ジャン はい。日本の物流センターは通路が狭く、レイアウトも頻繁に変わります。固定設備では対応しきれません。AMRであれば、現場に合わせて柔軟に使えます。

赤澤 米国型の自動化とは真逆ですね。

ジャン 米国は土地が広く、物流の流れも一方向です。長期で回収する前提の投資ができます。でも中国や日本は違う。物流の流れが複雑で、在庫の出入りも激しい。そこに同じモデルを持ち込んでも、高いROIは出ません。

赤澤 Copy from USAが成立しなかった理由ですね。

ジャン はい。自動化は技術の問題ではなく、構造の問題です。構造が違えば、解も違う。

赤澤 そのなかで、シリウスロボティクスはソフトウエアを中核に据えてきました。

ジャン ロボット単体では意味がありません。重要なのは、人とロボットをどう組み合わせるかです。群制御やスケジューリングがないと、台数を増やしても効率は上がらない。

赤澤 現場では、どんな使われ方が増えていますか。

ジャン 定点搬送やピッキング補助、棚入れなどです。単一用途ではなく、アプリを切り替えることで複数の作業に対応できるようにしています。

赤澤 ハードを共通化して、ソフトで用途を変えるという発想ですね。

ジャン そうです。ハードウエアはなるべく変えない。その分、ソフトウエアで価値を出す。これがコストダウンと拡張性の両立につながります。

赤澤 日本市場での導入は順調ですか。

ジャン 日本ではすでに数百台規模で導入されています。特徴的なのは、最初は少数台で始めて、効果を確認しながら台数を増やす企業が多いことです。

赤澤 まさにスモールスタートですね。

ジャン はい。そのプロセスを支えるのが、ROIの可視化です。導入前後で、作業時間や人員配置がどう変わったのかを数値で示す必要があります。

赤澤 その延長線上にあるのがRaaS(ラーズ)ということですか。

ジャン そうです。ただ、我々が考えているRaaSは従来の「ロボット・アズ・ア・サービス」ではありません。「リザルト・アズ・ア・サービス」、つまり成果に対して課金するモデルです。

赤澤 成果連動型ですね。

ジャン はい。ロボットを何台使ったかではなく、どれだけ効率が改善されたかを基準にします。成果が出なければ、請求もしない。

赤澤 かなり踏み込んだモデルですね。

ジャン 導入する側のリスクを下げないと、日本では本格的な普及は進まないと考えています。だから人材派遣会社とも連携し、人とロボット、システムを一体で提供する構想です。

赤澤 人も含めて最適化するというのはなかなか面白いやり方ですね。

ジャン 現場はロボットだけでは回りません。人の配置やスキルも含めて設計しないと、成果は出ません。

赤澤 2026年を一つの節目として見ているそうですね。

ジャン 2026年は、日本市場での本格展開と、成果連動型RaaSを軌道に乗せる年にしたいと考えています。ハードを売る会社から、成果を出すパートナーに変わる年です。

赤澤 その先にはどんな未来像が見えているんでしょうか。

ジャン ロボットが特別な存在ではなく、現場の選択肢の一つとして自然に使われている状態です。そのためには、高いROIが出ることを証明し続けなければならない。

赤澤 最後に、日本の物流企業に伝えたいことはありますか。

ジャン ロボット導入は目的ではなく手段です。重要なのは、現場をどう変えたいのか、その結果として何を得たいのかを明確にすることです。我々は、その結果を一緒に作る存在でありたいと思っています。

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