話題2025年、物流業界に突きつけられた「2024年問題」。ドライバーの労働時間規制が業界に2つの難題を投げかけた。人手不足と労働環境改善という、業界が目を背けてきた構造的矛盾が臨界点を迎えた。
そこへ登場したのが給与デジタル払い、デジタルID、ステーブルコイン決済といったフィンテックの新技術だ。これにより、旧態依然とした業界に金融テクノロジーという新たな息吹が吹き込まれている。そこで今回、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が金融の力で物流の未来を切り拓くKort Valuta(コートヴァリュタ、東京都渋谷区)執行役員COOの田中仁氏を迎え、変革の最前線を探った。

▲Kort Valutaの田中仁氏
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赤澤 25年は物流業界にとって大きな転換点となりました。2024年問題への対応が本格化するなか、今日はコートヴァリュタ執行役員COOの田中仁さんにお話を伺います。フィンテック企業として運送業界にどのような価値を提供されているのでしょうか。
田中 コートヴァリュタは、金融インフラをさまざまな企業に提供するフィンテック企業です。特に注力しているのがデジタルID、例えば、社員証を活用したサービスの展開です。運送業界では今、ドライバー不足や労働環境の改善が喫緊の課題となっています。私たちは、フィンテックの技術を使って、この課題解決に貢献したいと考えています。
赤澤 具体的には、どのようなサービスを展開されているのですか
田中 最も特徴的なのは、従業員の可処分所得を増やす仕組みです。例えば、ドライバーが社内報を閲覧したり、ヒヤリハット報告を提出したりすると、報酬を付与するシステムを提供しています。これは単なるポイント制度ではありません。企業の経費削減と従業員の福利厚生を同時に実現する仕組みなんです。
赤澤 なるほど。日常業務の中で自然に収入が増える仕組みですね。運送会社にとっても、安全意識の向上や情報共有の促進につながります。
田中 その通りです。さらに26年に向けて力を入れているのが、給与デジタル払いの推進です。従業員が自分で特典を選べる仕組みを検討しています。例えば、給与の一部をデジタルで受け取ることで、様々な優待サービスにアクセスできたり、より有利な条件で金融サービスを利用できたりします。従業員一人一人のライフスタイルに合わせた選択肢を提供したいと考えています。
赤澤 給与デジタル払いは23年4月に解禁されましたが、まだ普及が進んでいない印象です。運送業界での可能性をどう見ていますか
田中 確かに、まだ黎明期ですね。しかし、運送業界こそデジタル払いのメリットを最も享受できる業界だと考えています。ドライバーの方は移動が多く、銀行に行く時間も限られています。デジタルで給与を受け取り、そのまま様々なサービスを利用できれば、時間的な制約から解放されます。企業側にとっても、振込手数料の削減というメリットがあります。
赤澤 個人向けのサービスだけでなく、法人間の取引にも取り組まれているそうですね。
田中 はい。運送業界全体のキャッシュフロー改善も重要なテーマです。法人間の支払いを効率化するサービスや、ステーブルコインの活用も視野に入れています。例えば、荷主企業から運送会社への支払いサイクルを短縮できれば、運送会社の資金繰りが改善されます。その分を従業員への還元や設備投資に回すことができるんです。
赤澤 ステーブルコインは、まだ日本では馴染みが薄いですが。
田中 その通りです。ただ、法整備も進んでおり、26年以降は実用化が加速すると見ています。ステーブルコインは価格が安定しているため、決済手段として優れています。特に国際物流では、為替リスクを抑えながら迅速な決済が可能になります。物流業界のグローバル化が進む中で、大きな武器になると考えています。

▲田中氏は運送業界こそ給与のデジタル払いのメリットを最も享受できる業界だと提言
赤澤 フィンテック技術が物流業界の構造的課題を解決する可能性があるわけですね。26年に向けて、特に注力される分野は何でしょうか。
田中 給与デジタル払いを軸に、従業員が「稼げる」「選べる」環境を作ることに注力します。物流は社会インフラを支える重要な仕事ですが、その価値が十分に報酬へ反映されていないケースも多い。私たちのサービスを通じて、現場で働く方々の実質的な収入を増やし、「物流で働きたい」と思える業界にしていきたいと考えています。
赤澤 物流業界が業務レベルから経営レベルへと進化する中、フィンテックという新たな視点が加わることで、さらなる可能性が広がりそうですね。田中さん、本日はありがとうございました。
田中 こちらこそ、ありがとうございました。物流業界の皆様とともに、新たな価値を創造していきたいと思います。
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