ロジスティクス2027年4月、新しいルールが始まる。リース契約で借りたものは全て、会社の資産と負債として帳簿への記録が必要になる。従来、倉庫やトラックなどを「オペレーティングリース」という方法で借りた場合、毎月の賃借料を経費として計上すればよかった。しかし新たなルールでは契約を結んだ時点で「使用権資産」(借りて使う権利)と「リース債務」(支払う義務)を貸借対照表に載せる必要がある。つまり、借りているものも自分の資産として扱うようになる。
物流業界では倉庫や配送トラック、フォークリフトなど、さまざまな設備をリース契約して使っている会社が多い。新しい会計基準を適用すると、これらの借りている資産を全て会社の貸借対照表に記載する。その結果、会社の資産と負債の金額が大きく増える。これにより、自己資本比率(会社の財務の健全性を示す指標)が下がったり、ほかの財務指標が悪化したりする可能性がある。特に、全国に多くの拠点を持つ物流企業では、各拠点で結んでいる大量のリース契約を全て把握して、正しく会計処理できる仕組みを早急に作る必要がある。
ところが、多くの企業が新しい会計基準への対応で悩んでいる。「実際にどう運用すればいいのか」「どんなシステムを選べばいいのか」といった困惑する声も少なくない。
三井住友ファイナンス&リースは23日、新リース会計基準に対応した「assetforceリース会計パッケージ」の発表会を都内で開催した。同社はリース事業で積み重ねた専門知識、グループ会社での実際の運用経験、自社開発したデジタル技術を組み合わせて、企業が新しい会計基準に対応できるように支援する新しいサービスを開始する。

▲会見会場
会に登壇した同社専務執行役員の有馬高司氏は「新リース会計基準への対応は単なる会計処理の変更ではなく、企業全体の契約、資産、財務戦略を見直す良い機会になる」と述べた。その上で「私たちのソリューションは、リース会社としての貸し手の知見と、事業会社を通じた借り手の経験がベースとなっている。デジタルの力で、現場の担当者によるデータ入力から経理部の精査、監査対応までのプロセス全体を管理し、判断のブレや属人性を最小限に抑えた運用を可能にする」と強調した。
同社は20年以上にわたり、「スーパーネットリース」や「総合資産管理サービスASP」といったリース管理・会計パッケージを数多くの企業に提供してきた。有馬氏は「長年蓄積した知見をお客様に提供することこそが私たちの使命」と語った。同社は金融会社であると同時に、戦略子会社のSMFL未来パートナーズをはじめ、不動産や再生可能エネルギー事業など幅広い事業に取り組む事業会社でもある。「当社はお客様と同じ借り手の立場として、新リース会計基準に向き合っている」と説明した。
有馬氏は同社の強みについて次のように説明した。「SMFLは、リース会社として貸し手の立場で培った豊富な経験と、事業会社として借り手の立場で得た実務の知見、その両方を持っている。そこにデジタル技術(DX)を組み合わせ、金融・事業・DXの3つの要素を融合させた。この点が一般的なITベンダーにはない当社独自の強みだ」

▲「長年蓄積した知見をお客様に提供することこそが私たちの使命」と語る有馬氏
続いて登壇したDX推進部副部長の縄野和弘氏は、パッケージの機能について解説した。assetforceリース会計パッケージは21年にサービス提供を開始し、既に700社以上で利用されている資産管理プラットフォーム「assetforce」をベースに開発した。縄野氏はリース契約管理の実務を契約情報を入力し管理を開始する段階、実質的なリース期間を判定・精査する段階、そして契約期間中に運用管理する段階の3つの段階に分けて説明した。同パッケージはこの流れに沿った機能を備えている。
契約情報の入力ではAIが契約書を自動で読み取り、必要な情報を抽出してくれる。縄野氏は「リース管理では大量のデータを正確に入力する必要があり、これが大きな負担になっている。AI-OCR(文字認識技術)を使うことで、この入力作業を効率化できる。当社はこの技術を長年使ってきた実績があり、金融機関向けの決算書読み取りサービスでも採用されている。そのノウハウをこのパッケージにも生かした」と説明した。
リース期間を判定する機能も搭載した。契約情報を入力すると、システムが自動的にリース期間を推定してくれる。企業ごとに独自の判定ルールがある場合は、それに合わせてカスタマイズできる。判定の理由や根拠が画面上で確認できる。特定の担当者だけが分かる「属人的」な業務ではなく、誰が見ても判断の経緯が分かる透明なプロセスになる。さらに、ワークフロー機能を使えば、現場の担当者、経理部門、監査部門など、社内の複数の関係者が順番にチェックできる仕組みも整っている。
契約期間中の管理では、割引率を用いて正確に計算し、借り手側の開示に求められる情報を帳票の形式や仕訳の形式で出力できる。契約の更新や満了を見落とさないために、アラート機能も搭載している。
縄野氏は「企業におけるリース契約の管理は、さまざまな課題がつきものだ。大量のデータを正確に入力し、精査・判定する。契約期間中に正確かつ柔軟に管理する。複数の部署・関係者をまたいだ業務フローを構築する。assetforceリース会計パッケージはこれらすべてに対応している」と強調した。その上で「資産のことを誰よりも分かっている現場の担当者、そして適切な会計処理を実現する経理部など、このパッケージはさまざまな社内外の役割を持つ人々を一つにつなげ、正確な期間の管理を実現するプラットフォームとなる」と説明した。

▲質疑応答の様子。(左から)DX推進部副部長の縄野雄大氏、理事のDX推進部長の川名洋平氏、専務執行役員の有馬高司氏、同社理事企画部担当役員補佐の戸谷仁氏、同社理事デジタルラボ所長の藤原雄氏
質疑応答ではAI-OCRの精度について質問があり、縄野氏は「今のところ大体80%、50個だったら40個は正しく入るようなイメージ感を持っている。基本的には人の目できちんとチェックすることを前提としており、あくまでも業務の効率化をサポートするという面でAIの支援を使っていただければ」と答えた。
会の最後、有馬氏は「アセットフォースリース会計パッケージは、リース会社としての貸し手の知見と事業会社としての借り手の経験をデジタルの力で結実させたソリューション。制度対応の正しさと現場運用のやりやすさの両方をお客様にお届けする」と締めくくった。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。





















