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国内DC不動産、電力と立地で競う“次の主戦場”に

2025年11月7日 (金)

調査・データジョーンズ・ラング・ラサール(JLL、米国)は、日本のデータセンター(DC)不動産市場が開発・投資の最注目セクターに浮上しているとするレポートを公表した。2023年の国内市場規模は187億ドル、29年には295億ドルへ拡大する見通しで、政治的安定性や通信インフラの高度化、停電発生率の低さなどの強固な基盤が市場成長を後押ししている。一方、DC立地の9割が東京圏・大阪圏に集中しており、災害時の脆弱性が課題として残る。

▲MSCI World Index先進国のデータセンター市場規模の推移と予測(クリックで拡大、出所:ジョーンズ・ラング・ラサール)

政府は「地方創生」や「デジタルインフラ整備計画2030」などを通じ、DCの地方分散と脱炭素化を推進している。北海道や九州などを第3・第4の拠点と位置付け、電力と通信を一体整備する「ワット・ビット連携」や、DC間を低遅延で接続するワークロードシフトの実現を目指す。生成AI(人工知能)の普及により電力需要は一段と増大し、DCや半導体工場の需要電力は34年まで拡大が見込まれる。GPUサーバーと冷却設備が電力消費の大部分を占めるため、液冷など高効率技術の導入が急務とされる。

供給計画では、東京圏では多摩や印西を中心に拡大が続くが、印西では30年に向け電力ひっ迫が懸念される。埼玉は用地余力がある一方、系統整備に時間を要するケースもある。大阪圏ではベイエリアや京阪奈が成長し、工場跡地を活用した大規模AI対応DCの建設が進む。地域共生の観点から、近隣住民の理解を得るプロセスの重要性も高まっている。

用地取得では、電力接続の確度が価格を左右する。東京圏では地価公示比最大770%のプレミアム、阪神圏でも最大110%の上振れ事例が見られ、確保済み電力や変電所への近接性、系統増強の見通しが評価を押し上げている。これに対し、地方公共団体からの取得は公示水準にとどまり、用地確保の巧拙が事業性を大きく左右する状況だ。

制度面では、金融庁がDC設備のREIT(不動産投資信託)組み入れ範囲を明確化し、投資拡大と不動産透明度向上の好循環が期待される。さらに経済産業省は新設DC(一定規模以上)に対し、電力使用効率(PUE)に関する新基準を導入予定で、液冷などの省エネ技術移行を後押しする。これにより、電力コストと温室効果ガス排出の両面で競争力の差が拡大する可能性がある。

JLLは、DCがデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の基盤インフラとして、デベロッパー、事業者、投資家の競争力を左右すると指摘。立地、電力、冷却、規制対応、資金調達を横断的に捉えた専門知見の活用が、意思決定の質とスピードを高めるとして、分散化と高効率化の同時達成が日本市場の中長期的成長を左右すると総括している。

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