ロジスティクス運輸デジタルビジネス協議会(TDBC、東京都港区)の小島薫代表理事は、2026年4月施行の法改正への対応を熱を込めて訴えた。10月30日、物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するTDBCは、「TDBC方針発表会」を開催。小島氏は、目前に迫る法改正を「チャンス」と捉え、業界変革を加速させる戦略を示した。

▲方針発表を説明する小島薫代表理事
小島氏は、TDBCも作成に協力した特定荷主向けの「対応の手引き」において、「荷待ち時間、積載効率の把握方法としてデジタコやデジタルプラットフォームの活用が明記された」点を強調。「運送事業者は、これを荷主へのデジタル連携提案に積極的に活用すべきだ」と、会員企業に具体的な行動を促した。また、法律に「物流情報の標準化」が盛り込まれたことにも言及。「これは、バース予約システムが荷主ごとに違うといった現場の課題を、TDBCが提言してきた成果でもある」と胸を張った。
小島氏はTDBCの目的を「単に議論するだけでなく、自らの手で業界を変革することだ」と力強く宣言。ワーキンググループ(WG)での取り組みについても説明をした。「健康経営」のテーマでは、管理栄養士が運行管理者を支える仕組みを大学や厚労省と協議中であること、「人材」については、外国人ドライバー採用に着目し、教育コンテンツの共有化などを目指す方針を示した。
基調講演には、フィジカルインターネットセンター(JPIC)の森隆行理事長が登壇した。森氏は「2030年には34%の貨物が運べなくなる可能性がある」と警鐘を鳴らし、解決策として政府も推進する「フィジカルインターネット」(PI)の重要性を説いた。森氏はPIの本質を「物流を『所有からシェアへ』『競争領域から協調領域へ』移行させる、究極のオープンな共同物流だ」と強調。現状38%のトラック積載率が55%に改善すれば、2030年の輸送力不足は7%まで減少するとの試算も示した。

▲基調講演に登壇したJPICの森隆行理事長
発表会では、TDBCの小島代表が24年度の活動をけん引したWGに感謝状と表彰状を贈った。中でもAGCの田中真史氏はWGのリーダーとして共同輸送データベース化構想を提案し、仕様立案から開発検証をリード、25年8月1日に「traevo noWa」(トラエボノワ)としてサービスインさせた功績を称えられた。この取り組みは、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「2025年度ロジスティクス大賞」を受賞した。

▲表彰状を贈られたAGCの田中真史氏
今回の方針発表会は、物流業界が直面する構造的な課題に対し、TDBCが「大きな構想」と「現場起点の具体的な実践」の両輪で挑む姿勢を鮮明にした。現状の課題は、輸送力不足、ドライバーの労働環境、点呼や荷待ちといったアナログな業務プロセスだ。26年4月施行の法改正は、これらの課題解決を迫る「外圧」となる。
これからの取り組みとして、TDBCは具体的な処方箋を提示。一つは、森氏が提唱した「フィジカルインターネット」構想を見据えた「標準化」の推進だ。小島代表理事が成果とした「物流情報の標準化」の法制化は、その第一歩となる。もう一つは、「生成AI」という最新技術の現場適用だ。荷待ち改善や点呼のAI化は、まさにその実践例といえる。
法改正を「ピンチ」ではなく「チャンス」と捉え、荷主へのデジタル連携提案を促した小島氏の言葉は、事業者への強力なメッセージとなった。「traevo noWa」のようなプラットフォームの社会実装と、現場の知見に基づくAI活用。TDBCは、議論と実証を通じて業界変革をけん引する羅針盤としての役割を、一層強めていく。
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