話題EC(電子商取引)市場の拡大による多頻度小口配送の常態化、コンプライアンス意識の高まりによる「グレーゾーン保管」の是正、そしてリチウムイオン蓄電池(LiB)の需要爆発──。 今、日本の物流不動産市場、とりわけ「危険物倉庫」を取り巻く環境は、かつてない構造的な転換期を迎えている。国土交通省の統計によれば、2021年以降、危険物倉庫の床面積は二桁成長を続けているが、それでも現場からは「倉庫が足りない」という悲鳴が止まない。
この需給ギャップの渦中で、ある建設会社への相談が急増している。大阪に本店を置く三和建設だ。同社が展開する倉庫建設ブランド「RiSOKO」(リソウコ)は、19年から現在までに42棟もの危険物倉庫を完工させ、現在も20棟以上のプロジェクトが進行中という、中小ゼネコンとしては異例の実績を叩き出す。そして、その顧客層は、物流事業者のみならず、メーカー、商社、デベロッパーへと広がりを見せている。

▲三和建設大阪本店次長・RiSOKOブランドマネージャーの松本孝文氏
なぜ、多くの企業が三和建設を選ぶのか?なぜ彼らは、参入障壁の高い危険物倉庫建設を次々と成功させることができるのか?RiSOKOブランドマネージャーであり、数々の難プロジェクトをけん引してきた三和建設大阪本店次長の松本孝文氏へのインタビューを通じ、その競争優位性の核心と、激変する危険物物流の未来をひも解く。
「港湾」から「内陸」へ。変容する危険物倉庫のニーズ
「以前は、危険物倉庫といえば港湾地域やコンビナート周辺で、ドラム缶や一斗缶に入った原料・中間製品を保管する平屋の倉庫が一般的だった。しかし今は、内陸部での建設ニーズが圧倒的に増えている」
松本氏は、市場の変化をそう分析する。背景にあるのは、EC(電子商取引)の普及やドラッグストアなどで扱われる「完成品(スプレー缶、アルコール類、化粧品など)」の保管需要だ。消費地に近い場所で、多品種を効率よくさばく物流拠点が求められているのだ。

▲同社が設計施工したプロロジス・プロロジスパーク古河6(茨城県古河市)
さらに、荷主企業のコンプライアンス意識の向上も追い風となっている。「これまで一般倉庫で『グレーゾーン』として扱われていた物品を、法令を順守して適切に保管したいという相談が増えている」と松本氏は語る。加えて、半導体関連部材やLiBといった新エネルギー関連の爆発的な需要増が、この傾向に拍車をかけている。
しかし、いざ建設しようとしても、危険物倉庫には「用途地域の制限」「近隣との保安距離」「保有空地の確保」といった厳しい法的制約が立ちはだかる。土地が見つからない、消防との協議が難航する、コストが合わない──。そんな悩める担当者たちが最後にたどり着くのが、三和建設なのだ。
運用と規制のバランスを取る──三和建設独自の「デザイン-ビルド」
三和建設の最大の強みは、設計と施工を自社で一貫して行う「デザイン-ビルド」(設計施工一貫方式)にある。一般的に、設計と施工を別々の会社に発注する場合、設計図が完成してからでないと正確なコストが分からず、着工後に予算オーバーや仕様変更が発生するリスクが高い。
特に危険物倉庫においては、このリスクが致命的となる。「危険物倉庫は、軒高や床面積、耐火構造などに厳しい規制がある。後から『やっぱりこうしたい』と言われても、法的に不可能な場合が多い」と松本氏は指摘する。

▲山九・関西ケミカルセンター(大阪府高石市)
例えば、輸出入貨物を扱う場合、コンテナトレーラーの動線やデバンニング作業のスペース確保が必須となるが、危険物倉庫は基本的に低床(地面と同じ高さ)で作られることが多い。
「設計の初期段階で『トレーラーはどう入るか』『雨天時の荷役はどうするか』といった運用面まで踏み込んで提案しないと、建てたはいいが使い物にならない倉庫になってしまう。私たちは『運用と規制のバランス』を最初から考慮し、お客様の物流を理解した上で設計図を描く。一見遠回りに見えるが、これこそがプロジェクトを最短で進める秘訣」
この、単なる「箱」を作るのではなく、顧客のビジネス(運用)まで見据えた提案力こそが、RiSOKOが選ばれる理由だ。
「交渉」ではなく「協議」。行政との信頼関係が鍵
危険物倉庫建設における最大の難関、それは所轄消防署とのやり取りだ。一般建築物とは異なり、危険物倉庫は建築確認だけでなく、消防法に基づく「設置許可」を得なければ使用することができない。
「消防法は全国一律の法律だが、その解釈や運用基準は、自治体や担当する消防署によって微妙に異なることがある。ある地域ではOKだったものが、別の地域ではNGになることも珍しくない」と松本氏は明かす。
実績の少ない設計事務所や建設会社の場合、基本設計が固まった段階で消防に相談に行き、「これでは許可できない」と突き返され、計画の変更を余儀なくされるケースもある。 三和建設では、計画の極めて早い段階から所轄消防署に足を運び、綿密なすり合わせを行う。「私たちは消防と『交渉』するのではなく、安全性を確保するための『協議』を行う。過去の実績で得られた豊富な法知識とデータを基に、『こういう対策を講じるので、この設計で認めてもらえないか』と論理的に説明し、理解を得る。このプロセスを丁寧に行うことで、後戻りのない確実なプロジェクト進行が可能になる」
時には、前例のない特殊な案件(例:港湾地区での既存倉庫への温度管理改修事例や屋根への太陽光パネルの設置など)においても、粘り強い協議によって実現に導いてきた。この「行政対応力」こそ、同社がコンサルティング機能を持つ建設会社と呼ばれる所以である。
法改正をチャンスに変える──LiB規制緩和と移動ラック
現在、危険物物流業界で最も注目されているトピックが、LiBの保管に関する規制緩和だ。25年5月に施行された改正政令では、LiBの保管において大きな変更があった。従来は危険物倉庫(専用倉庫)での保管が原則だったが、一定の条件下(充電率60%以下など)であれば、「一般倉庫の一部を区画して保管することが可能」となり、さらに充電率30%以下であればスプリンクラー設備の設置義務も免除されるケースが出てきたのだ。同社ではこうした危険品倉庫についての知見を生かし、情報発信をコンスタントに行っているが、その一環として7月には法改正解説セミナーを開催。セミナーには最大227人の同時接続があったことからも、業界での注目の高さがうかがえる。
「これまでは『LiBを保管するなら専用の危険物倉庫を建てるしかない』というのが常識だったが、今回の改正により、既存の一般倉庫を改修してLiB保管エリアを作るという選択肢が生まれた」と松本氏は解説する。 しかし、これは「どこでも簡単に置ける」という意味ではない。一般倉庫内に「LiB専用の危険物屋内貯蔵所」としての保管エリアを設けるには、消防法だけでなく建築基準法や、港湾エリアであれば臨港地区の条例など、複数の法規制をクリアする必要がある。

▲三和建設が設計施工した中国精油・水島工場危険物倉庫(岡山県倉敷市)
「『既存倉庫でLiBを保管したい』という相談が増えているが、建物の構造や立地によっては、改修コストが高くついたり、そもそも許可が下りなかったりする場合もある。私たちは、新築一辺倒ではなく、改修の可能性も含めた『最適な保管方法』をコンサルティングする。時には『新築した方がトータルコストは安くなる』とアドバイスすることもある」
さらに、今回の法改正では、危険物倉庫内への「移動ラック」(電動式移動棚)の設置についても基準が明確化された。これまで所轄消防の判断で認められないケースも多かったが、これにより保管効率を劇的に向上させる道が開けた。 三和建設は、法改正を見据えてラックメーカー(三進金属工業など)と連携し、危険物倉庫用の移動ラックや、LiB保管用の遮蔽板付きラックの開発・提案を積極的に進めている。
多様な業種の最適解、「汎用性」から「専用性」まで
三和建設の強みは、特定の業種に偏らず、多様なクライアントの要望に応えられる柔軟性にもある。同社の危険物倉庫発注者の内訳を見ると、物流会社(44%)に加え、製造・メーカー(20%)、卸・商社(12%)、そして不動産デベロッパー(24%)と、幅広いプレイヤーが名を連ねていることが分かる。「一口に危険物倉庫と言っても、お客様の業種によって求められるものは大きく異なる」と松本氏は語る。
例えば、不動産デベロッパーや多くの物流会社が求めるのは「汎用性」。将来的な顧客の入れ替わりや取扱品目の変化を見据え、誰が使っても使いやすい、可変性の高いスペックが求められる。三和建設は、エリアの需給バランスや将来性を考慮し、資産価値を最大化する設計を提案する。

▲同社がRiSOKO立上げ以降対応してきた発注者内訳
一方、製造・メーカーや卸・商社といった荷主系の企業が求めるのは、自社のビジネスに特化した「専用性」だ。「荷主企業の場合、既存の工場や物流センターの敷地内という、限られたスペースでの増設や建て替え計画が多くなる。そのため、いかに効率よく保管し、スムーズに運用できるかという『運用と保管効率のバランス』が、よりシビアに求められる」と松本氏は指摘する。
限られた土地で最大限の保管能力を確保するため、荷主系の案件では移動ラックなどのマテハン機器導入が圧倒的に多いという。三和建設は、設計段階からマテハンメーカーと連携し、建物の構造とマテハンを一体で考えることで、狭小地や変形地であっても高密度な保管を実現するノウハウを持つ。
こうした業種ごとに異なる「最適解」を導き出せる対応力こそが、RiSOKOが支持される大きな要因だろう。
「ジャストスペック」な倉庫が、ビジネスの利益を最大化する
三和建設が掲げるブランドコンセプト「Just Spec」(ジャストスペック)。それは、過剰な機能でコストを膨らませることも、機能不足でビジネスを阻害することもない、「過不足のない理想の倉庫」を提供するという決意の表れだ。

▲藤原運輸・大正ケミカルセンター(大阪市大正区)
例えば、温度管理が必要な危険物倉庫において、高価な空調設備を導入する代わりに、建物の断熱性能と換気システムを工夫することで、イニシャルコストとランニングコストを大幅に削減した事例がある。また、大阪市内の貴重な工業専用地域に建設された藤原運輸・大正ケミカルセンター(大阪市大正区)では、将来的なニーズの変化を見据え、常温倉庫でありながら将来的に定温倉庫へ拡張可能な設計を採用した。
「お客様が扱う物品のSDS(安全データシート)を読み込み、本当に必要なスペックは何なのかを徹底的に考え抜く。無駄なお金を使わせないこと、それがプロとしての誠実さだと考えている」
これからの危険物倉庫作りに求められる、事業戦略まで踏み込む提案力
物流を取り巻く環境は刻一刻と変化している。24年問題による輸送効率の見直し、LiBリサイクル需要の台頭、そして相次ぐ法改正。これらに対応し、サプライチェーンを維持・発展させるためには、単に「建物を建てる」だけでなく、事業戦略まで踏み込んで相談できるパートナーが必要だ。
三和建設は、土地探しから行政協議、設計、施工、そしてアフターメンテナンスに至るまでをワンストップで提供する。その実績は、RiSOKO立上げ以降42棟を完工させ、7プロジェクト22棟を同時進行させるほどの「実行力」に裏打ちされている。
「危険物倉庫を建てたいが、何から手をつけていいか分からない」「既存倉庫でLiBを扱いたい」「最新の法改正に対応した効率的な倉庫を作りたい」──。そんな課題を抱える物流担当者は、まずは三和建設に問い合わせてみてはいかがだろうか。 蓄積された知見と圧倒的な実績を持つ彼らなら、「理想の倉庫(RiSOKO)」を、必ずや形にしてくれるはずだ。
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