調査・データ製造業のサプライチェーンを取り巻くリスク環境が急速に多様化している。Spectee(スペクティ、東京都千代田区)が従業員501人以上規模の製造業に務める500人を対象に実施した調査では、サイバー攻撃や地政学リスクへの警戒感がこの1年で大きく高まり、従来からの自然災害と並ぶ脅威として位置付けられつつある。一方で、サプライヤー情報の可視化や外部リスク管理は進まず、依然として“現場訪問”に依存する実態が浮き彫りとなった。
重要視するリスクでは、63.4%が「自然災害」を挙げ2年連続で首位となった。事故や火災なども上位に並んだが、増加幅で最も大きかったのは「サプライヤーの倒産」(前年比16pt増)。サイバー攻撃(同11.1pt増)、地政学リスク(13pt増)も大きく伸び、国際情勢やサイバー脅威が企業活動へ直接影響する構造が鮮明になった。
リスク認識の背景には、経営層の要請(33.9%)やメディア報道(29.9%)が大きく作用している。直近1年で実施した対策としては、BCP強化(35.4%)、自然災害対応(30.8%)、サイバーセキュリティー対策(25.8%)が挙がるが、いずれも対症療法的色合いが強く、サプライチェーン全体を俯瞰した体制整備には至っていない。
特に際立つのはデジタル化の遅れである。日常的なリスク把握の手段として「サプライヤー監査・訪問」が43.8%で最多となる一方、SaaSを活用した自動検知はわずか9.6%にとどまった。導入障壁として「現場の業務ひっ迫」(27.2%)、「情報の分散・属人化」(27.0%)が挙がり、リソース不足と情報整理の難しさが根強い課題となっている。
求める情報では、原材料供給・価格変動(46.0%)、サプライヤーの経営状態(42.0%)が上位に並び、外部環境の変動に対する脆弱性が際立つ。対応強化が期待されるサプライヤー可視化(42.4%)や外部リスク管理(32.0%)は、重要性の認識と実行が乖離したままだ。
Specteeの村上建治郎CEOは「リスク対応が依然として手作業中心で、SaaS導入が進んでいない。リアルタイムデータによる可視化と判断迅速化がレジリエンス経営の前提になる」と指摘。企業が抱える情報の断片化と遅延を埋める仕組みが不可欠とし、AI(人工知能)解析を活用したリスク把握の重要性を強調した。
自然災害、地政学、サイバー、倒産——リスクは複層化し、サプライチェーンを揺さぶる範囲も広がる一方だ。企業の危機意識は高まりつつあるものの、可視化とデジタル化が伴わなければ機動的な対応は難しいという、製造業に共通する構造的課題が改めて示された。
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