調査・データ公正取引委員会と中小企業庁は23日、運送事業者間取引における下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反被疑行為の集中調査結果を公表した。4月以降の調査で、運送事業者に対し勧告2件(12月4日、12日付で措置済み)と指導530件を実施した。取引適正化を業界横断で進める狙いで、違反傾向として「発注書面の不交付・記載不備」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」が目立った。
書面関係では、運送委託時に発注書面を交付していない事例のほか、荷待ちや積み込み・取り卸しといった「運送業務以外の役務」を伴うにもかかわらず、内容を明記していない記載不備が複数確認された。これらの役務を運送業務の一部とみなす商慣習が根強い実態を示している。
買いたたきでは、労務費やエネルギーコストが上昇する局面でも、受託側と協議を行わずに運賃を据え置いた事例や、値上げ要請に対し理由を示さずに回答しなかった事例があった。さらに、「運送業務及びその他附帯する業務」と一括表記したうえで、付帯役務の対価を実質的に支払っていなかったケースも俎上に載った。不当な経済上の利益の提供要請としては、発注書面に記載しないまま無償で荷待ちや荷役を行わせる事例や、有料道路料金を受託側に負担させる事例が挙げられた。
公取委と中企庁は、発注書面に「その他一切の附帯業務」といった曖昧な記載を改め、運送業務と役務を区別して具体的に明記するよう指導した。価格面では、受託側との協議の場を設け、コスト上昇を踏まえて十分に協議したうえで代金を定めるよう求めた。
2026年1月1日施行の改正下請法(取適法)では、禁止行為として「協議に応じない一方的な代金決定」が追加されるほか、「特定運送委託」が適用対象に加わり、発荷主から運送事業者への直接委託も規制対象となる。運送事業者だけでなく、発荷主側にも法令順守の徹底が求められる局面に入る。
一方、関東運輸局も同日、トラック・物流Gメンによる25年度「集中監視月間」(10-11月)の取り組み結果を公表した。プッシュ型の情報収集や現地調査を通じ、適正な取引を阻害するおそれのある荷主や元請け事業者などに対し、是正指導として「働きかけ」129件、「要請」1件の計130件を実施した。要請を行った事業者には改善計画の提出を求め、履行状況の確認を進める。
公取委や労働局などと合同で実施した荷主パトロールは25回に上り、380社(うち荷主349社)を訪問した。把握した違反原因行為では、長時間の荷待ち(40%)と契約にない付帯業務(38%)が中心を占め、運賃・料金の不当な据え置き(7%)なども続いた。
公取委と中企庁は、調査過程で貨物自動車運送事業法(トラック法)上も問題となり得る事例が散見されたとして、国土交通省と執行情報を共有する連絡会議を定期的に開催し、取適法とトラック法を活用した“シームレス”な対応を進める方針だ。運賃協議の実効性確保と、荷待ち・荷役といった役務の切り分けと対価化をどこまで実装できるかが、制度施行後の現場の焦点となりそうだ。
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