ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

荷待ちゼロにできるか、「待つ場所」で考える現実解

2026年1月16日 (金)

ロジスティクス荷待ち・荷役問題の議論では、「いかに待たせないか」に焦点が当たりがちだ。バース予約システムの導入、構内オペレーションの効率化、画像処理による荷役時間の可視化──いずれも重要な取り組みであることは間違いない。

しかし現実には、すべての荷待ちを完全にゼロにすることは難しい。天候不順や事故渋滞、前工程の遅れ、突発的な検品トラブルなど、現場では人為的に制御できない要因が必ず発生する。こうした前提に立てば、次に問われるのは「やむを得ず発生する待機時間を、どこで、どのように過ごすのか」という問題だ。

2024年問題を背景に、トラックドライバーの拘束時間や休息確保が厳格に求められる中、待機場所の確保は、単なる付随的な課題ではなく、制度対応そのものとしての重要性を帯び始めている。

「待機」と「休息」の曖昧な境界

改正改善基準告示では、休息期間の確保が明確に求められている。一方で、現場では「待機」と「休息」の線引きが曖昧なケースが少なくない。荷役開始を待つ時間が、実質的には休めない状態であっても、形式上は待機として処理されてきた例も多い。物流拠点周辺での路上待機や違法駐車は、その象徴的な現象だ。ドライバーは車内で待機を強いられ、トイレや食事、仮眠といった最低限の環境も確保できない。こうした状態は、労働環境の悪化を招くだけでなく、地域住民との摩擦や安全面のリスクも高めてきた。

2時間ルールや取適法の施行により、荷待ちを前提とした運行は許容されなくなりつつある。だが、完全に排除できない待機時間が存在する以上、その「受け皿」をどう整備するかは、避けて通れない論点だ。これまで待機場所の確保は、運送事業者やドライバーの自己努力に委ねられてきた。空いている路肩やコンビニエンスストア、サービスエリアを探すといった対応は、あくまで場当たり的な解決策に過ぎない。

近年、この状況を変えようとする動きが出てきている。待機場所を物流インフラの一部として捉え、計画的に整備・提供しようという発想だ。待機時間を「無駄な時間」として切り捨てるのではなく、安全かつ適切に過ごせる環境を用意することで、ドライバーの負担を軽減し、運行全体の安定性を高めようとする考え方である。

エネルギー拠点を生かすENEOSのアプローチ

ENEOSは、全国に1万2000拠点展開するサービスステーション(SS)ネットワークを背景に、24年問題の解決に向けたインフラの再定義を進めている。主要幹線道路沿いのSSを中心に、広大な駐車スペースやトイレ、シャワーなどの設備を整え、ドライバーの休憩・待機ニーズに応える「物流結節点」としての機能を強化している。

既存の供給拠点を「待てる場所」として位置付けることで、物流拠点周辺での路上待機抑制や労働環境の改善を図る。現在、24時間営業でトラックの駐車が可能な600店舗を軸に、オンライン予約制の休憩サービスの実証実験を進めており、早期の本格事業化を目指している。

待機場所の提供は、ドライバーの労働環境改善に寄与するだけでなく、地域の交通安全や環境面の課題解決にもつながる可能性がある。エネルギーインフラを物流インフラとして再定義する試みと言えるだろう。

▲利用の際はオンラインで予約し、所定日時にドライバーが直接現地に向かう

専用待機場という選択肢──グローリーナスカ

一方、グローリーナスカは、パチンコホールなどの商業施設が持つ平面駐車場をトラックの待機・休憩場所として活用するシェア駐車場マッチングプラットフォーム「トメレル」を展開している。既存の遊休スペースをデジタル技術で開放し、「確実にとまれる場所」をドライバーに提供することで、路上待機の解消を目指す試みだ。

サービスの特徴は、完全予約制による確実な休息環境の提供にある。ドライバーは事前にスマートフォンなどで駐車場所を確保できるため、空きスペースを探す無駄な走行や時間を削減でき、精神的な負担も軽減される。また、夜間の長時間休息だけでなく、交替運転手との中継輸送拠点(ドッキング)としての活用も想定されている。

デジタル上での利用予約と時間管理は、運送事業者が法令順守(430休憩など)を確認する際のエビデンスとしても機能する。待機を単なる「時間の浪費」から、安全管理に基づいた「業務の工程」へと組み直すことで、労働環境の改善と輸送効率の向上を同時に実現している。

▲パチンコ店「ダイナム」の駐車場を休憩所利用するトラック

待機場所は「コスト」か「投資」か

待機場所の整備は、しばしばコストとして捉えられる。しかし、視点を変えれば、これは物流の安定運行を支えるための投資でもある。無秩序な待機が減れば、トラブルや事故のリスクは低下し、ドライバーの定着にも寄与する。また、取適法の施行により、荷待ちを前提とした取引慣行は見直しを迫られている。待機場所を確保し、待機時間を適切に管理することは、法令順守の観点からも重要な意味を持つ。荷主企業にとっても、待機環境への配慮はCSRや人的資本経営の文脈で無視できない要素となりつつある。

理想は、もちろん「待たせない物流」だ。しかし現実には、「待たせない」努力と同時に、「待てる物流」を整備する視点が欠かせない。バース予約や動態管理、荷役の可視化と並び、待機場所の整備は、荷待ち・荷役問題を多面的に解決するための重要なピースである。

待機場所は、もはや現場任せの暫定対応ではない。制度対応、労働環境改善、地域との共存を支える物流インフラとして、再評価される段階に入っている。

>>特集トップ「『荷待ち・荷役問題』解消の理想と現実」へ

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。