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エプスタイン文書公開で経営刷新

港湾大手DPワールド、会長兼CEOが即時辞任

2026年2月16日 (月)

財務・人事世界有数の港湾・物流オペレーター、DPワールド(UAE)は13日、スルタン・アーメド・ビン・スレイエム会長兼グループCEOが即時辞任したと発表した。後任として、エッサ・カジム氏が会長に、ユブラジ・ナラヤン氏がグループCEOに就任した。会長とCEOを分離する新体制への移行となる。

辞任の直接的な契機は、米司法省(DOJ)が2月上旬に公開したジェフリー・エプスタイン関連文書だ。文書にはビン・スレイエム氏とエプスタインとの長年にわたる交流が記録されていた。同氏は刑事訴追を受けていないが、文書公開後、主要投資パートナーが相次いでDPワールドとの新規投資を凍結する事態に発展した。

文書公開を受け、英国政府系の開発金融機関ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)は、DPワールドとの新規投資を即時停止すると表明した。BIIはDPワールドとアフリカの4港湾で共同投資関係にある。

カナダのケベック州年金基金CDPQも追加資本投下を一時停止した。CDPQはDPワールドのカナダ拠点(バンクーバー、プリンスルパート)やUAEのジュベル・アリ港の資産に出資しており、2016年以降の共同投資額は87億ドル超に上る。

両機関はトップ交代の発表後、投資関係の再開に前向きな姿勢を示している。BIIは新体制を歓迎する声明を出し、CDPQも協力再開に動いた。

新会長のカジム氏は、ドバイ国際金融センター(DIFC)総裁、ボース・ドバイ会長を務める金融分野の重鎮だ。UAE中央銀行でキャリアを始め、ドバイ金融市場(DFM)事務局長を経て、30年超にわたりUAEの金融行政に携わってきた。資本市場との接続に強みを持つ人物であり、国際投資家に対するメッセージ性が強い起用といえる。

新CEOのナラヤン氏は、04年にDPワールドに入社し、05年からグループCFOを務めてきた内部昇格人事だ。副CEO兼CFOとして財務戦略、コーポレートファイナンス、事業運営を統括してきた。公認会計士の資格を持ち、入社前はANZグループで南アジアのコーポレート・プロジェクトファイナンス責任者、オマーンのサラーラ港でCFOを歴任した。MENA地域のCFOオブ・ザ・イヤーを4度受賞している。

この組み合わせは、外部からの信頼回復と内部の事業継続性を同時に担保する布陣だ。劇的な戦略転換よりも、安定と信用の再構築を優先した人事と読める。

問われるガバナンスと「信用」

DPワールドはドバイを本拠とし、世界40か国超で82の海上・内陸ターミナルを運営する。グローバルコンテナ取扱量の10%を占め、年間の取扱能力は1億TEUを超える。24年のコンテナ取扱量は過去最高の8830万TEUで、前年比8.3%増だった。

25年上半期の売上高は前年同期比20.4%増の112億4400万ドル、調整後EBITDAは同21.4%増の30億3300万ドルと好調だった。通期の設備投資目標は25億ドルで、ジュベル・アリ港、英国ロンドンゲートウェイ、インドのトゥナテクラ、セネガルのダカールなどの拡張を進めている。

今回の人事の本質は、経営トップの交代そのものではなく、港湾インフラ企業にとっての「信用」の意味だ。

DPワールドの事業は国家戦略インフラとしての性格を持つ。アフリカ、インド、欧州を結ぶ拠点網は地政学リスクと密接に結びつき、BIIやCDPQといった政府系・年金系の長期投資家との関係が事業基盤を支えている。これらの投資家がESGやコンプライアンスに高い感度を持つ以上、経営トップの個人的な問題であっても、企業統治の構造的対応を迫られる。

会長とCEOの分離は、経営執行と取締役会の監督機能を明確に分ける措置であり、国際投資家への説明責任を意識した体制変更だ。実際にBII、CDPQが新体制発表後に投資再開へ動いたことは、この対応が市場に一定の効果をもたらしたことを示している。

DPワールドはドバイ政府が所有する港湾・物流大手。05年にドバイ港湾庁(DPA)とドバイ・ポーツ・インターナショナル(DPI)の合併で設立された。ナスダック・ドバイに社債を上場している。

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