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米海事行動計画、外国建造船に課徴金案

2026年2月17日 (火)

ロジスティクス米ホワイトハウスが13日に公表した「アメリカズ・マリタイム・アクションプラン」(MAP)が、国際物流の関係者の間で波紋を広げている。焦点は、外国で建造された船舶が米国に入港する際、貨物の重量に応じた課徴金を課すという提案だ。実現すれば、米国の港に寄港するコンテナ船やバルク船のコスト構造が根底から変わる可能性がある。(編集長・赤澤裕介)

「ユニバーサルフィー」と名付けられたこの課徴金は、米国の港に入るすべての外国建造商船が対象になる。積載する輸入貨物の重量1キロあたり1セントから25セントを徴収する仕組みで、MAP本文の試算によれば、1セントでも10年間に660億ドル(9兆9000億円)、25セントなら1兆5000億ドル(225兆円)に達する。集めた資金は新設する「海事安全保障信託基金」に充て、造船所の近代化や米国籍船の拡充に投じる構想だ。

なぜこれほど大がかりな計画が出てきたのか。背景にあるのは、米国造船業の衰退だ。世界の商船建造で米国が占めるシェアは1%に満たず、400フィート(122メートル)超の船を造れる造船所は全米で8か所しかない。MAPはこの現状を「安全保障上もサプライチェーン上も持続不可能」と位置づけ、造船所への設備投資支援、連邦政府の船舶融資制度の拡充、「海事繁栄特区」による民間投資の呼び込みなど、幅広い施策を打ち出した。同盟国の造船企業に米国進出を促す「ブリッジ戦略」も含まれており、最初の数隻は同盟国側で造りつつ、並行して米国内の造船所に投資し、段階的に国内建造へ移す段取りを描いている。

Xでは「計画と実行は別」の声

構想の壮大さとは裏腹に、X(旧ツイッター)では実行面への懸念が広がっている。

海事ニュースサイトのgCaptain(@gCaptain)は「MAPは米国造船再建の青写真だ。入港料と信託基金が造船所や投資家に長期の需要シグナルを届けられるかどうかが問われる」と投稿し、7万1000回以上閲覧された。課徴金という「ムチ」が、果たして造船投資という「実」につながるのか。業界の関心はそこに集まっている。

コスト転嫁を正面から指摘したのが、貿易政策アナリストのスコット・リンシカム氏(@scottlincicome、ケイトー研究所副所長)だ。「米国建造船の供給不足は10年後に緩和されるかもしれないが、それまでの間、輸入コストと税負担の増加を引き受けるのは米国の消費者だ」との投稿は2万6000回以上閲覧され、680件を超えるいいねがついた。造船能力の回復には時間がかかる以上、その間のコスト増を誰が負担するのかという問いは避けて通れない。

さらに踏み込んだのが、実行力そのものへの疑問だ。サプライチェーンコンサルタントのトム・クレイグ氏(@LTDManagement)は「造船活性化の意図はわかるが、計画と実行は別の話だ」と投じ、外国からの投資誘致と労働力確保の見通しが不透明だと指摘した。金融透明性の研究者リチャード・フィールド氏(@tyillc)は「そもそも米国には船を造るための部品を作る力が足りていない」と、造船サプライチェーンの上流にある弱点を突いている。ワールドカーゴニュース(@WorldCargoNews)も、国際海運会議所(ICS)がサプライチェーンの混乱リスクを警告していることを伝えた。

Xの反応を見渡すと、課徴金によるコスト増への懸念と、米国の造船能力が育てば長期的には物流インフラが底上げされるとの期待が交錯している。ただ、部品の調達力も熟練工も足りないなかで「本当にできるのか」という問いが、今のところ最も多くの共感を集めている。

MAP本文には、中国の造船セクターに対する通商法301条調査の経過も記されている。25年10月に米中が経済・貿易面で合意に達し、外国建造車両運搬船への課徴金などの対抗措置は25年11月10日から1年間停止中だ。MAPは立法措置にも踏み込んでおり、27会計年度の大統領予算教書に合わせて法案パッケージを議会に出す方針を示した。課徴金の水準や対象範囲がどう固まるかは、これからの議論次第だ。

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