ロジスティクス物流業界で安全キャンペーンの機運が高まっている。丸運グループが全70拠点で9か月間の「無事故・無災害ウィークリー駅伝」を完走したほか、各社がドライバーコンテストや技能研修を相次いで実施。2024年4月の時間外労働上限規制(年960時間)に続き、26年4月にはCLO(物流統括管理者)設置義務化や特定荷主の届出制度が始まる。規制強化が重なるなかで安全文化の定着が経営課題になっている。さらに、M&Aによるグループ再編が進むなか、築き上げた安全体制をどう引き継ぐかも課題になりつつある。(編集長・赤澤裕介)
安全施策の最前線、「競う」と「つなぐ」の二潮流
物流各社の安全施策は大きく2つの方向に分かれる。ひとつはドライバーの技能を「競う」コンテスト型だ。丸運は25年11月、UDトラックスのUDエクスペリエンスセンター(埼玉県上尾市)でグループ5社から10人が参加するセーフティドライバーコンテストを開催した。食品物流大手のギオンも同月、初のドライバーコンテストを神奈川県で実施。パルシステムの物流子会社パルラインは14営業所から42人が参加するコンテストで女性ドライバー2人のチームが総合優勝を果たし、業界で話題を集めた。25年11月に発表された「Safety Driving Award 2025」では運送事業部門で西部運輸が最優秀賞を受賞している。
もうひとつは拠点間で安全実績を「つなぐ」リレー型だ。丸運グループが25年5月26日から26年2月8日まで実施した「無事故・無災害ウィークリー駅伝」はその代表例で、東コース35拠点と西コース34拠点が週ごとに交通事故、労働災害、貨物事故の「3ゼロ」を達成し、次の拠点へ「安全のたすき」を引き継いだ。西コースにはベトナムの2拠点も含まれ、海外を含むグループ全体の安全意識共有に踏み込んだ。2月10日に最終走者の京浜ターミナル営業所(東京都大田区)でゴールイベントが開かれ、パネル贈呈とたすき返還のセレモニーが行われた。丸運は19年の「100日完走」、23年の「全員参加駅伝」に続く取り組みで、年を追うごとに規模を拡大している。

▲京浜ターミナル営業所で実施したゴールイベント(出所:丸運)
コンテスト型が個人の技能向上と拠点間の切磋琢磨を促すのに対し、リレー型は「自分の拠点で途切れさせない」という当事者意識を全員に行き渡らせる効果がある。いずれも24年問題以降の運行管理厳格化と人手不足のなかで、安全を「コスト」ではなく「文化」として組織に根づかせる試みといえる。
こうした動きに加え、丸運をめぐっては大きな経営環境の変化がある。センコーグループホールディングス(GHD)による丸運へのTOB(株式公開買い付け)だ。
センコーGHDは現在、丸運を非公開化のうえ連結子会社化するためのTOBを実施中だ。買い付け期間は1月26日から2月24日まで。買い付け価格は1株949円、総額は167億円で、25年11月に発表されていた。丸運の取締役会はTOBに賛同し、株主に応募を推奨。筆頭株主のJX金属(保有比率38.23%)はTOBに応募せず株主として残り、成立後の持分比率はセンコーGHD80%、JX金属20%となる。丸運は東証スタンダード市場での上場が廃止される見通しだ。
背景には事業補完の狙いがある。丸運が強みとする化学品・エネルギー輸送、重量物輸送、危険物保管はセンコーが本格参入できていない領域で、拠点網と専門性を取り込む効果が大きい。センコーGHDの25年3月期の売上高は8546億円で、丸運(461億円)との単純合算で9000億円に達する。中期経営計画で掲げる27年3月期の売上高1兆円が射程に入る。
TOB成立後に焦点となるのは、安全文化の「統合」だ。センコーは滋賀県東近江市に総合教育研修施設「クレフィール湖東」を持ち、高速周回コースや制動訓練コースを備えた国内屈指の交通安全研修拠点でグループ全ドライバーに訓練を実施している。安全運転トレーナーは170人を数え、06年から続く「センコーグループ技能コンテスト」ではトラック・フォークリフトの運転競技を海外拠点含めて実施してきた。一方の丸運は、前述の駅伝やコンテストに加え、繁忙期無事故キャンペーンなど独自の安全プログラムを積み上げてきた。両社とも安全を経営の根幹に据えている点は共通するが、手法と文化には違いがある。
TOB成立後、非公開化された丸運がセンコーグループに入ることで、130年超の歴史を持つ丸運の安全文化と「センコー流」をどう融合させるかが問われる。研修施設の相互活用やトレーナー制度の統合は相乗効果が見込める反面、現場のドライバーや倉庫作業員にとっては慣れ親しんだ手順や文化の変更を意味しうる。拠点統廃合が進めば、駅伝のような全拠点参加型のキャンペーンの形も変わるだろう。
26年4月にはCLO設置が義務化され、荷主企業を含めた物流全体の安全・効率管理が制度的に求められる。グループ再編で組織体制が流動化するタイミングと規制強化が重なるなか、丸運が9か月かけて70拠点でつないだ「安全のたすき」の意味は重い。事故ゼロは一過性のスローガンではなく、日々の業務で全員が実践して初めて成り立つ。再編後の新体制で、この文化をどう継承し発展させるかが問われている。
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