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関通、被災経験を起点にサイバー防衛事業本格化

2026年2月17日 (火)

環境・CSR物流とITオートメーションを手がける関通は、過去に自社が受けたランサムウェア被害の経験を起点に、サイバーセキュリティー分野へ本格参入する。4月1日付で専門子会社「Cyber Governance Lab」(CGL)を設立し、中小企業向けセキュリティーSaaSとして「RASHIN-羅針-」とフィッシング訓練システム「SHIGAN-真贋-」を相次いで投入する。物流会社が被災当事者として得た実務知見を事業化し、サプライチェーン全体の耐性強化につなげる。

関通は2024年、ランサムウェア攻撃により基幹システムが停止し、事業継続に深刻な影響を受けた。復旧作業を通じて明らかになったのは、マニュアル通りのセキュリティー対策や部分最適のIT投資では、現場業務を守り切れないという現実だった。CGLは、そうした被災経験から得た防御・復旧ノウハウを形式知化し、単一企業の中に閉じずに社会実装するための「専門研究機関」として設立される。

事業部ではなく独立会社としたのは、セキュリティーを個社の経営課題にとどめず、業界横断で共有すべきインフラ課題と捉える考えがあるからだ。将来的には、会員企業同士がセキュリティー水準を可視化し、信頼できる取引ネットワークを形成する構想や、リスクを分かち合う保証制度など金融領域への展開も視野に入れる。物流を起点としながらも、産業全体のレジリエンス向上を狙う。

CGLの中核となるサービスが、レジリエンス・コンサルテックと位置付ける「RASHIN」だ。サイバー対策において「何から手を付けるべきか分からない」という中小企業の悩みに対し、簡易診断を基に優先順位付きのToDoリストを提示する。OS更新といった初歩的な対応から、EDR導入やBCP策定まで段階的に示し、進ちょくはスコアとして可視化される。「最低限ここまで到達すれば事業継続の土台が整う」という目安を示す。

月額5万円からという価格設定は、従来は高額になりがちだったセキュリティー・コンサルティングをSaaSとして提供し、裾野を広げる狙いがある。関通はこの考え方を「善意のRaaS(Resilience as a Service)」と呼び、攻撃がサービス化する時代に対抗する“守りと復旧の民主化”を掲げる。

一方、「SHIGAN」は人に起因するリスクへの対策に特化した。関通が社内訓練で実際に多くの社員が引っかかった文面や、実被害に基づくテンプレートを用い、フィッシングを疑似体験させる。30日間の無料トライアルで開封率を数値として示すことで、経営層や現場に「他人事ではない」危機感を共有させる設計とした。高度なセキュリティーツールを導入しても、最後の突破口は人であるという現実を正面から捉えている。

開発プロセスも従来型とは異なる。RASHINとSHIGANは、生成AI(人工知能)を全面的に活用し、非エンジニアの現場社員が1か月で同時開発したという。生成AIをPMや設計支援として活用し、コード生成ツールで実装を進めることで、通常半年以上かかる工程を大幅に短縮した。関通はこの取り組みを、単なる業務効率化ではなく、ビジネスモデル自体を転換する「BX」(ビジネス・トランスフォーメーション)と位置付ける。

関通の一連の動きは、サイバー対策をIT投資や専門家任せのコストではなく、物流を止めないための経営インフラとして再定義する試みであり、今後の物流・サプライチェーン経営に一石を投じている。

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