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混載で救え、件建て化が変える小売ラストマイル配送

2026年2月20日 (金)

ロジスティクス物流の世界で今、静かな革命が始まっている。「2024年問題」という言葉が業界を駆け巡るなか、食品スーパーや総合スーパーのラストワンマイル配送は、まさに正念場を迎えている。ネットスーパーや来店宅配へのニーズは日々膨らみ、配送コストは小売業の懐を容赦なく圧迫する。現場のドライバーたちは日々変動する荷量に翻弄されたままだ。

この「誰も得をしない」構造的課題に対し、ITと物流を融合させた独自のアプローチで解決策を提示するのが、物流×テクノロジーで業界構造の変革を目指すルーフィ(東京都中央区)だ。同社は従来の物流の常識であった「車建て」契約から「件建て」への移行を促す新システム「DeLink」(デリンク)を武器に、業界の再編に乗り出した。今回、同社の渡邊泰章社長に、開発の経緯とDeLinkが描く物流の未来について話を聞いた。

「空気の運び屋」をなくせ。業界を苦しめる“車建て”の呪縛

ネットスーパーや来店宅配の現場を長く支配してきたのが、「車建て」(しゃだて)という契約形態だ。荷物の多寡に関わらず、トラック1台あたり定額を支払う。一見、わかりやすい仕組みだが、実は小売業の財布に深い穴を開けてきた、と渡邊氏は指摘する。

「来店客数も宅配の注文数も日ごとに波がある。1台いくらの車建ての場合、トラックを1台確保しても、荷物がわずかなら、事実上『空気を運ぶ』ことになる。小売業にとって、これは収益を蝕む構造的な矛盾だった」と渡邊氏は振り返る。

翻って、配送を請け負うドライバーの立場はどうか。「1個いくら」の歩合制に切り替えれば小売側のコストは下がるが、ドライバーは荷物が少ない日には収入が細る。日々の稼ぎが天候や客足に左右される不安定さを、そのまま背負わされる格好だ。

「小売業はコストを変動費化したい、ドライバーは安定した収入が欲しい。この相反する課題を解決するには、1店舗単独ではなく、エリア全体で荷物を束ねる仕組みが必要だった」と渡邊氏は語る。そこでルーフィが提唱するのが、エリア内の複数の店舗・企業の荷物を混載する「シェアリング物流」と、それを支えるシステム基盤だ。

ネットスーパーと来店宅配の融合「DeLink」の正体

ルーフィが開発したDeLinkは、異なる小売企業のネットスーパー受注システムや、ルーフィが提供する店舗の来店宅配受付システム(手ぶら便)とAPI連携し、配送情報を一元管理する仕組みだ。注目すべきは、これまで別々に管理されていた「ネットスーパーの注文」と「来店宅配の荷物」を統合し、最適なルートで混載配送できる点にある。いわば、散らばっていた配送の点と点を、一本の線で結び直す「集配」の仕掛けだ。

▲ルーフィが提供するサービス(出所:ルーフィ)
「ネットスーパーも来店宅配も、お客様の玄関先に届けるという点では同じ。配送エリアや時間の帳尻を合わせれば、1台のトラックで効率よく回れる。別々の会社の荷物を一緒に運び、ネット注文と店頭預かりも混載して配ることは、これまでは誰もやらなかった。それを、システムで可能にした」と渡邊氏は説明する。
まず、店舗受付システムの手ぶら便で近隣の複数店舗の来店宅配荷物を束ねる。1店舗では波のある荷物量も、エリア全体で見れば平準化される。次にDeLinkが各社のネットスーパーシステムと連携し、ネット注文と来店宅配の荷物を同じトラックに積む。AI(人工知能)が最適ルートを割り出し、集荷及び配送効率を引き上げる仕掛けだ。
「これまで手ぶら便では近隣店舗の荷を混載する件建てシステムは展開していたが、このたびDelinkでネットスーパーの荷もシステムで一元管理できるようになった。ドライバーは新アプリ(ハコログGO)1つで、どの店で荷を積み、どの家へ届け、また次の店で拾うか。その一連の流れが手に取るように分かる。小売業には、これまでの『トラック1台いくら』から、実際に運んだ分だけ払う『1件いくら』への転換を提案できるようになった」(渡邊氏)
この「件建て化」は、小売業にとって経営の死活問題を解く一手となる。従来は荷物の有無にかかわらず車両代を払い続ける固定費構造だったが、これが実配送数に応じた変動費へと姿を変える。注文の少ない雨の日も、閑散期の平日も、もはや「空車への支払い」に頭を悩ませる必要はない。この転換こそが導入企業の背中を押す決定打になっていると渡邊氏は語る。

現場を知る者の強み、ITと汗が生んだ「実践知」

だが、システムを作れば物流が回るというほど話は単純ではない。渋滞、不在、急なキャンセル。現場は常に予測不能な事態と向き合っている。渡邊氏が強みとするのは、大手小売業にて店舗企画や営業戦略を経て、ネットスーパー事業をゼロから立ち上げ、物流構築まで最前線で汗を流してきた経験だ。机上の空論ではない、小売業側のオペレーション課題や配送現場の息遣いを知る者だけが持つ実感が、今の開発に生かされていると渡邊氏は振り返る。

▲小売業側のオペレーション課題や配送現場の息遣いを知る者だけが持つ実感を、今回の開発に活かしたというルーフィ社長の渡邊泰章氏

「ネットスーパーの立ち上げは、システムも物流もオペレーションも、すべてを一から組み上げる作業だった。何を標準化すれば横展開が利くのか、どこで採算が狂いやすいのか。その勘所を体に叩き込んでいるからこそ、小売業が抱える『見えない痛み』に手が届く」と渡邊氏は語る。

九州の大手総合スーパーに導入して1か月も経たないうちに、損益の風向きが変わり始めた。現場のドライバーたちからは、アプリの操作性を褒める声が相次いで届いているという。ただし、渋滞の起きやすい時間帯や道筋は土地ごとに顔が違う。稼働後の微調整は避けて通れない道だ。現場と本部が同じテーブルを囲み、試行錯誤を重ねながら、その街に馴染む形を探っていく。システムの知恵と物流の知恵、両方を併せ持つからこそ辿り着ける境地があると渡邊氏は言う。

「あったらいいな」を追求し、三方よしの物流へ

ルーフィが描く未来は、システムを売って一件落着という図式ではない。小売も、運び手も、地域も、無理なく回り続ける物流の形だ。「トラックも倉庫も持たないからこそ、『こうあったらいいのに』をテクノロジーで形にする。安心、早さ、便利さ。そうした価値の積み重ねが、私たちの道筋です」と渡邊氏は語る。

今後はGMSやスーパーマーケットを軸に全国展開を図る構えだ。「ネットスーパーを運営する小売事業者を中心に、来店宅配や他社の荷物を巻き込む。エリア単位でコストを分かち合い、無理なく続けられる形を整えたい」と渡邊氏。商談はすでに動き始めているという。

物流業界全体への想いを尋ねると、渡邊氏はこう答えた。「物流は緊張感に満ちた世界です。小売業は『時間厳守、しかも安く』を求める。けれど、誰かが無理を強いられる構造では続かない。『車建て』から『件建て』へ構造を組み替えれば、小売業は喜び、我々はシステムで収益を上げ、それをドライバーやパートナー企業に還元できる。誰も我慢せず、みんながハッピーになれるモデルを作りたい」

物流を持続可能にするには、気合いや根性論では立ち行かない。求められるのは、仕組みそのものを問い直す覚悟だ。ルーフィのDeLinkはテクノロジーを梃子に、小売も運び手も地域も笑顔になれる物流の形を描こうとしており、その挑戦はすでに第一歩を踏み出している。(星裕一朗)

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