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台数より付加価値、誇りを持てる運送業へ

2026年6月23日 (火)

ロジスティクス「いちばん大事なのは、トラックドライバーが誇りを持って、安心して長く働けることだ」。茨城県トラック協会の小倉邦義会長は、運送経営を語る軸を、まずそこに置く。2030年に向けて事業許可の更新制が本格化し、コスト高とドライバー不足が続く。そのなかで会長が見据えるのは、台数の多さで競う経営から離れ、付加価値で評価され、ドライバーが専門職として誇りを持てる運送業への作り替えだ。茨城流通サービス代表取締役でもある小倉会長に、その構想を聞いた。(編集長・赤澤裕介)

──まず、組織再編に踏み切る背景から。

茨城県トラック協会は、いま13の支部で運営している。この体制は90年以前、規制に守られていた時代の名残だ。当時の交通事情に合わせた区割りが、そのまま今日まで続いてきた。

問題は、支部によって情報の届き方に差が出ていることだ。会員に細かく情報を届けられる支部もあれば、機能が落ちている支部もある。法改正の情報一つとっても、届き方が違う。この差が、見過ごせないところまで来ている。情報が届かない会社ほど、制度変更への備えが遅れる。その遅れが、30年には経営リスクになる。

──支部を見直すと。

支部を廃して、県内を4つの広域ブロックに再編する案だ。あくまで案で、決定ではない。労働基準監督署の管轄が県内に8署ある。その8署が一つのブロックに収まるよう設計する。市町村合併や労基署の管轄と、支部の区割りのずれを整理し直す。長い歴史のある支部は、親睦団体として活動を続けてかまわない。

いきなり全部は変えない。まず1年かけて会員全体の意見を聞き、来年の総会で承認を諮る。そのうえで既存の支部と新しいブロックを2年間並行で運用し、問題がなければ29年度に一本化する。総会で、初めて全会員にこの案を示した。理事会や支部長会議では、おおむね合意を得ている。同じ動きは埼玉でも始まっているが、茨城のほうが先行している。

更新制で問われる中身

──30年に本格化する事業許可更新制を、どう見ますか。

ここが最も重い課題だ。25年の法改正で、事業許可の更新制と、適正な原価をめぐる制度が入った。総会のあいさつでも触れたが、これは業界自らが議員立法で進めた改正で、痛みを伴う変化だと我々自身が受け止めている。これまでトラック運送の許可は、一度取れば基本的に続いた。それが更新制になる。一定の要件を満たせなければ、事業を続けられなくなる。

総会で示した資料にも書いたが、2割から3割の事業者が脱落しかねない。大げさな数字ではない。

──どんな会社が、その2〜3割に入りますか。

焦点は財務要件だ。きちんと利益を出し、健全な財務体質を保てているか。危ない会社ははっきりしている。赤字でも車両台数を維持して回してきた会社。採算の悪い仕事を切れない会社。自社の原価を説明できない会社。ドライバー確保を場当たりでやってきた会社。協会の情報を受け取れていない会社。こうした会社が、更新の段階で立ちゆかなくなる。だから、組織再編と経営の見直しは一体だ。協会が情報と支援を全会員に行き渡らせ、同時に一社一社が中身を変える。どちらが欠けても、30年は越えられない。何を、いつまでに変えるべきか。そこは7月3日に掘り下げて話したい。

──経営の見直しとは、具体的に。

これまで運送業界では、車両を何台持っているかが会社の規模であり、力の象徴とされてきた。この見方を変えなければならない。稼働率が6割、7割の車両を、台数だけ増やしても、赤字になる。仕事の量に対して車両が過剰なら、固定費だけがかさむ。それでも安い仕事に飛びつく。私はこれを「池の鯉」型の経営と呼んでいる。エサが落ちてくれば、採算を考えずに食いつく。この体質から抜け出さなければならない。

──何を軸にすべきだと。

付加価値、差別化、利益だ。台数の多さより、どれだけ付加価値の高い仕事を、どれだけの利益を出しながら担えているか。台数を増やすより、一台一台の稼働の質を上げる。これがこれからの運送経営の基本になる。

──差別化を、会長自身はどう実践していますか。

私のところでやっているのは、方面別の共同配送だ。よくある共同配送は、同じ荷主の同じカテゴリーの荷物を集める形が多い。それだと組み合わせの幅が限られる。水戸、宇都宮、高崎といった行き先を軸にルートを組む。同じ方面に向かう異なる荷物をまとめて、実車率を上げる。帰り便で回収物流も組み合わせれば、空車区間が減る。これで一台あたりの採算が変わる。荷主の理解をどう取り付けるか、運送会社がどう仲介役を担うかは、田中支局長が荷主の側から話す内容とも裏表の関係になる。当日のパネルで、その両側から話せればと思う。

ドライバーを専門職へ

──ドライバー不足も続いています。茨城では、ダンプからトラックへ移ったドライバーが「いつ仕事がなくなるか分からないダンプより、トラックのほうが安心して長く働ける」と話していたという声も聞きます。確保策をどう考えますか。

その「安定して長く働ける」という価値は、これからますます効いてくる。逆に、現場でドライバーが離れていく原因の一つは、コンプライアンスの欠如にある。労働環境やルールがいい加減なら、人は離れていく。まず現場の条件を整えることが、確保の第一歩だ。

──中長期では、人材の流れも変わると。

見ている。AIの普及で、ホワイトカラーの仕事の一部は変わっていく。人材の流れが、現場を支えるエッセンシャルワーカーへ向かう可能性もある。物流はその受け皿になりうる。ただ、給与条件を改善するだけでは足りない。ドライバーを単なる人手と見るのをやめ、物流を設計できる専門職として位置づけ直す必要がある。知識と技能を持った専門職として、業界を定義し直す。私はこれを「アドバンスド・エッセンシャルワーカー」と呼んでいる。そうすれば、入ってくる人材にとっても、魅力的な選択肢になる。

──30年に向けて、厳しい話が続きました。

危機感をあおる話に聞こえると思う。脱落、更新制、経営の見直し。どれも楽ではない。だが、一番伝えたいのは、今がチャンスだということだ。規制時代の古い体質を捨て、付加価値で勝負する経営へ、専門職として魅力ある業界へ。この見直しをやり切った事業者にとって、30年は飛躍の機会になる。

7月3日の「運びとキャラバン」で、小倉会長は協会改革の狙い、許可更新制への備え、台数から利益への経営の見直し、ドライバーの専門職化を話す。運送会社の経営者、後継者、管理者に向けて、30年までに自社の何を変えるべきかという論点を示す。セッション2(14時30分-14時50分)に登壇し、パネルディスカッション(15時-15時50分)にも加わる。会場は茨城県内で、YouTubeでもオンライン配信する。

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開催概要

LOGISTICS TODAY presents 「運びと地位向上全国キャラバン」in茨城
「『Gメンの眼』×『現場のリアル』で挑む、茨城物流の2024年問題・その先へ」

・日時
2026年7月3日(金)

<トークイベント>14時-16時

<懇親会>17時-19時

・形式
会場参加+オンライン配信(ハイブリッド)

・会場
茨城県トラック協会 トラック総合会館 会議室(茨城県水戸市見川町2440-1)

・懇親会
会場周辺店舗を予定 ※詳細は別途ご連絡いたします。

・定員
会場参加 80人(物流事業者限定)、オンライン参加 100人
※いずれも先着順

・参加費
<トークイベントのみ>会場・オンライン:無料
<懇親会>お一人6000円(税込)予定
※参加費はトークイベント当日にお預かりします

・申込期限
2026年7月2日(木)16時

■主催:LOGISTICS TODAY、ワンロジ
■協力:茨城県トラック協会
■協賛:関西物流展、シグマインターナショナル、ハコベル、XMile(クロスマイル)、GOドライブ

※参加人数に限りがありますので、お早めにお申し込みください
※視聴URLは、開催の約1週間前と前日をめどにメールにてご連絡いたします
※後日、アーカイブ配信を予定しています(アーカイブ視聴も今回の事前登録が必要です)

今回は、会場参加を「物流事業者」に限定いたします。なおオンライン視聴は「制限なし」でのお申し込みを募集します。いずれも参加人数に限りがありますので、お早めにお申し込みください。(いずれのご参加も事前申し込みが必要です。)
※申込期限:2026年7月2日(木)16時まで

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登壇者(順不同)

<登壇者>
・田中幸久(関東運輸局 茨城運輸支局長/前・国土交通省トラックGメン統括)
・小倉邦義(茨城県トラック協会会長)

<モデレーター>
・吉岡泰一郎(ワンロジ社長)
・赤澤裕介(LOGISTICS TODAY社長 兼 編集長)

プログラム(予定)

<トークイベント>
1:14時-14時10分:開演、オープニング
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長

2:14時10分-14時30分:セッション1
・登壇者:茨城運輸支局、田中幸久支局長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:― トラックGメンの軌跡と、茨城支局長としての新たな使命 ―
~全国の現場を見てきたからこそ分かる、取引適正化の急所~

3:14時30分-14時50分:セッション2
・登壇者:茨城県トラック協会、小倉邦義会長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:安易な価格競争・補助金依存からの脱却!運送会社が自ら磨くべき「強み」と適正運賃収受のリアル

ーーーーーーー 休 憩 ーーーーーーー

4:15時-15時50分:セッション3(パネルディスカッション)
・登壇者:田中幸久支局長、小倉邦義会長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:― 「行政の眼」×「現場のリアル」で創る、茨城物流の持続可能な未来 ― 補助金終了のカウントダウン、燃油費は「流動費」か?サーチャージ議論再燃

5:15時50分-16時:クロージング
(モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長)

※オンラインの配信時間は、トークイベントの14時00分-16時00分(予定)

<懇親会>
17時-19時:懇親会・名刺交換会
※別会場で開催(別途、懇親会費(6000円程度)が必要です)

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