ロジスティクス上層部はやる気満々なのに、なぜか、現場の担当者は浮かない顔──よくある話である。新しいキャンペーンの立ち上げやEC(電子商取引)拡大を図るたび、担当者の机の上には「付帯業務」という名の細かな案件が山積みになる。企画、デザイン手配、資材調達、発送、事務局運営。それらの工程は幾重にもなり、取引相手もその分増える。業者との連絡業務の往来が長引くほど、本来のコア業務に割く時間が削られていく。多くの企業にとって、見過ごせない共通の悩みだ。
こうした煩雑な付帯業務に追われる現場に、総合印刷会社のダイオーミウラ(東京都豊島区)が手を差し伸べる。同社が新規事業として設立したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、すなわち業務プロセスの委託事業は、単なる業務代行ではない。顧客の痛点に伴走し、印刷で培った段取り力で業務の流れそのものを整える支援を打ち出すものだ。
5社合併が生んだ20億円の付帯業務を横串のビジネスへ
ダイオーミウラがBPO事業を正式に掲げた出発点は、グループ再編の棚卸しで姿を現した「見えない収益」にあった。2022年4月1日、ダイオープリンティング、三浦印刷、ダイオーポスタルケミカル、大和紙工、千明社が機能と技術を束ね、総合印刷会社「ダイオーミウラ」として再始動。統合により守備範囲は印刷の枠を越え、パッケージのデザイン・製造、ラベル関連の提案、広告・販促、デジタル、さらにはアセンブリやシステム開発にまで及ぶ。顧客の「やりたい」を一本の線でつなぐ体制が整った。
各社が培ってきた製品品質、段取り、現場の改善力という「ものづくりのちから」と、顧客の幅広い要望を噛み砕いて形にする「ソリューション提案力」が掛け合わさり、単発の受託ではなく課題解決型のビジネスへ参画する土台ができた。ところが、だ。実際に棚卸しを進めると、各社が顧客の困りごとに応じて引き受けてきた付帯業務による売上高が合算で20億円に達することが分かった。

▲BPO推進部部長 阿部信行氏
BPO推進部・部長の阿部信行氏の目には、印刷業界の風景がそう明るくは映っていない。「だからこそ、これまで本業の枠外で“ついで”に引き受けてきた仕事を、横串の事業として組み替える決断をしました」と阿部氏は言う。既存の形に固執しない。変わり続けながらでも、顧客の困りごとを確実に解きほどく。阿部氏は、その一点に事業化の意味があると語る。
40人のデザイナーと15年の運営が支えるワンストップ体制
ダイオーミウラの強みは、企画から実務までを社内で一気通貫できる層の厚さだ。40人のデザイナーを抱え、企画立案からデザイン、制作、印刷、パッケージ、物流、事務局運営までをグループ内で完結させる。情報は分断されにくく、調整の手間も最小限で済む。案件は滞りなく前へ進む。
阿部氏が強調するのは企画の「悩みの入口」から実務の「着地」までを、一本の線で引き受けられる点だ。裏付けはある。Xperia発売当初から15年に及ぶEC運営代行をはじめ、SNSキャンペーン運営等。積み重ねた運用の勘所は作業代行のみならず、顧客の成長に寄り添う実装力として息づいている。
ネットやAIでは導けない、経験則に基づいた血の通う提案
業務のデジタル化が進んでも、現場担当者の不安や焦燥は簡単には消えないらしい。同社成田物流センターでの経験も持つ、受発注管理課の課長・谷田慶文氏は「何を、どこから手をつければいいか分からないと相談に訪れる担当者が少なくありません」と話す。ネットやAIで“正解らしきもの”は拾えても、個社の事情に沿って手順に落とし込む答えは、そう簡単には出てこないという。

▲受発注管理課課長 谷田慶文氏
ダイオーミウラが差し出すのは、ボタン一つで片がつく「自動処理」ではない。現場を踏んだ経験則を背骨に、数字だけでは拾えない心情まで受け止めながら並走する支援だ。谷田氏は、「AI時代にこそ効く武器は経験に裏打ちされた具体策」だと言い切る。部課長が方針を描いても、実務を担うのは経験の浅い担当者であることが多い。そんな彼ら彼女らの悩みに寄り添い、手順に落として前へ進める。その姿勢を何より大切にしている。
Amazonのルールから納期危機まで、現場の知見で救う
象徴的なのが、シャンプー&トリートメント商品でのAmazon FBA(フルフィルメント by Amazon)対応だ。既存販路の延長では手詰まりだったクライアントに対し、谷田氏は現場で鍛えた勘所を頼りに、ラベル貼付の作法から登録手順までを丁寧に組み立て直した。さらに処理の段取りを刷新し、作業は軽くなり、コストでも競合を一歩かわす成果につながった。
また、海外での製造遅延や入関手続きの遅れが原因で輸入品の入荷が大きくずれ込んだ、ハイエンドブランドのバレンタイン案件。作業期間はみるみる削られ、現場は秒読みになった。納期への不安で肩に力が入る担当者の傍で、谷田氏は協力会社を束ね直し、段取りを組み替え、締切だけは守り抜いた。土壇場でのこの采配が、クライアントの信頼を静かに積み上げていく。
大手にはできないニッチな領域にこそ、生きる道がある
物流や加工の市場で、ダイオーミウラは勝算を見誤らない。大手メーカーや大規模倉庫は、同じものを大量に、滞りなくさばくのは得意だ。一方で、チェーン店ごとの特別セットや土産物のような「手間が値打ち」になる商品は扱いづらい。谷田氏は巨大倉庫と正面衝突しても勝算は薄いと見切り、あえてニッチに照準を合わせた。
受注から流通・物流加工までを一気通貫で引き受け、単価は小さくても束ねて商いにする。メーカーが尻込みする細かな要望を拾い、手順に落として柔らかくさばく。そんな「かゆいところに手が届く」仕事ぶりこそが、選ばれ続ける理由だ。
概算費用が「コストシミュレーター」で即座に
BPO導入を検討する現場で、まずつまずくのが「費用の輪郭が見えない」ことだ。「物流」や「事務局業務」といった言葉が示す範囲は広く、業務内容は企業ごとに大きく異なる。その結果、業務は整理されないまま検討が進みやすく、全体像が見えない“ブラックボックス”になりがちだ。
こうした業務は、細かな条件を聞き取らなければ見積もりが立てにくい。社内稟議にかけたくても、数字が出ない以上、担当者の手は止まる。阿部氏は案件化するかも定かでない段階では、「問い合わせる」という行為自体が高いハードルになっている、と見ていた。「だからこそ、まず概算だけでも提示したかった」と阿部氏は言う。
この壁を崩す切り札が、いくつかの質問に答えるだけで概算費用が見えてくる「コストシミュレーター」だ。
■ BPOポータルサイト「コストシミュレーター」

▲実際のシミュレーション画面(画像は在庫管理・受発注管理のもの)
同社のBPOはEC・フルフィルメント、アセンブリ・セット、事務局代行、在庫管理・受発注管理、封入・封緘・発送受託、ラベル印字代行の6つのサービス領域に分かれており、それぞれで前提条件や業務内容が異なる。コストシミュレーターはこれらの特性に応じて、必要な要素を選択する形で業務を分解・整理しながらコストの目安を把握できる仕組みだ。
まず相場を掴める。必要な条件が自然と整理されるため、稟議に向けた前提の言語化も進む。相談は軽くなり、社内検討も前へ進みやすくなるはずだ。ダイオーミウラはまずは入口を広くして、顧客との最初の接点をひらいた。
共に歩むパートナーとしての喜びを目指して

ダイオーミウラが目指すのは、単なる請負業者の立ち位置ではない。阿部氏は「ありがとうも嬉しいが、それ以上に“パートナーとして一緒にやってよかった”と言われるのがいちばんの喜び」と語る。DXやAIが当たり前になった今こそ、局面ごとに最適な手段を過不足なく差し出せる体制を整え続ける。そんな技術と人肌の温度を両立させる姿勢を崩さない。
「顧客に寄り添い、ダイオーミウラと仕事をしてよかったと言われる関係を結べなければ、いずれ客足は遠のく」と語る谷田氏は、緊張感を背に、提案の言葉を磨いている。複雑な付帯業務や前例のない案件で手が止まるなら、まず困りごとを同社へ預けてみてはどうか。そこから、仕事の段取りは静かに、けれど確実に組み替わっていくはずだ。
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