ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

東京都が支援するオープンイノベーションプログラム「LOAD」始動

物流危機を共創で突破、大手7社が求める次世代解

2026年7月28日 (火)

話題革新的なテクノロジーを開発しても、それを試す「本番環境」がない──。社会実装の壁に直面し、焦燥感を抱えるスタートアップに伝えたい。日本経済を支える巨大な物流インフラが今、皆さんの技術を渇望し、社会実装の舞台として扉を大きく開いた。

東京都が推進する「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業(通称:TIB CATAPULT=カタパルト)」。多様なプレイヤーを集積させ、イノベーションの連鎖を狙う目玉施策だ。数あるクラスター群の中でも、日本の経済基盤そのものである物流領域に特化し、ひときわ強い独自性を持つ「Tokyo Logistics Co-Creation Cluster」(トーキョーロジスティクスコークリエーションクラスター、TLCC)が、オープンイノベーションプログラム「LOAD」(ロード)の2026年度共創パートナー募集を本格始動した。

前年度のLOADでは、国内を代表する大手物流企業が参画し、倉庫内作業の自動化などに向けた具体的な実証へと駒を進めた。そして今回募集を開始した26年度のLOADでは、物流やインフラ業界、投資領域を牽引する7社が参加し、陣容をさらに拡大している。

自社の技術で業界の未来を変える意志を持つスタートアップにとって、巨大なアセットを持つ企業群と直結する本プログラムは類を見ない好機だ。社会実装の壁を突破し、次世代のスタンダードを創り出そうと志すならば、8月31日の応募締切に向け、まずは目前に迫った7月31日のオンライン説明会に参加し、このプロジェクトの全貌を掴んでほしい。

(クリックで説明会の詳細HPへ)

巨大企業が新興テックの「顧客」となりえる

では、なぜこのプログラムがスタートアップにとって「類を見ない好機」と言えるのか。改めてその価値を紐解きたい。最大200万円の支援金や、事務局を務めるeiicon(エイコン)などの専門家による伴走支援もさることながら、プログラムの最終到達点は実証実験の完遂にない。見据えるのは「社会実装」を通じたサプライチェーン全体の変革だ。

業界のトップランナー7社が提供する巨大なアセットを活用し、自社の技術を現場へ組み込む。これは、実証パートナーである巨大企業が、そのまま自社サービスやテクノロジーの「巨大なユーザー(顧客)」へと変貌する可能性が極めて高いことを意味する。純粋かつダイナミックなセールスの場として、これほど強力な機会は類を見ない。

オープンイノベーションの性質上、創出された成果は世に広く公開される。業界の巨人を動かした実績は強烈なブランド力となり、他業界やグローバル市場へスケールアウトするための確固たる武器に変わる。

業界を牽引する7社がさらけ出す「リアルな課題」

スタートアップとの共創を求める7社は、現場の泥臭い課題を包み隠さず公開している。応募する企業は、物流領域に特化したスタートアップである必要はない。他業種で培われた異質なテクノロジーの「転用」こそが、長年のボトルネックを破壊する鍵になるかもしれない。

国内最大級の港湾アセットを有する上組は、カーボンニュートラルポート構想の推進と労働力の最適化に向けたスマートポートの構築を目指す。コンテナターミナルでの遠隔操作ロボットやAI(人工知能)技術、水素エネルギーの最適解に挑む構えだ。特筆すべきは、運ぶモノ自体を自ら創り出す「創貨」という新規ビジネスへの意欲だ。ゲノム編集やバイオテクノロジーを駆使した農作物の輸出拡大など、物流の枠を大きく超えた提案を渇望している。

▲上組が求める共創イメージ(出所:TLCC)

通信インフラを基盤とするKDDIは、ラストワンマイルが日常に根付く社会の実現をテーマに掲げた。デリバリーやクイックコマースの裾野を広げるAI活用に加え、配達員がサステナブルに働ける環境整備を急務とする。複数の配送プラットフォームを横断するアグリゲーションの仕組みづくりなど、配送効率化とギグワーカー支援を両立するIoT(モノのインターネット)やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)領域の技術を求めている。

▲KDDIが求める共創イメージ(出所:TLCC)

1899年創業の総合物流企業である住友倉庫は、物流現場でのデータ連携とロボット協働の次世代モデルを追求する。既存環境を大きく変えずにデータ内容を理解・判断するAIエージェントの活用や、限定された条件下だけでなく、多品種・変動環境にも適応できる汎用的なスマート物流オペレーションの実現を目指す。ヒューマノイドロボットやエッジAIといった先端技術の実装フィールドとして、同社の全国拠点が提供される。

▲住友倉庫が求める共創イメージ(出所:TLCC)

日本郵政キャピタルは、日本郵便などを傘下に持つ日本郵政グループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。最大の武器は、全国約2万4000局という他に類を見ない郵便局ネットワークにある。遊休不動産を活用したスペースシェアリングや、みまもり、生活支援など、郵便局を「生活サポート拠点」へと進化させる地域サービス基盤の構築を狙う。物流サービスの高付加価値化に向けた配送管理システムなどの提案も受け付けている。

▲日本郵政キャピタルが求める共創イメージ(出所:TLCC)

物流不動産開発のトップランナーである日本GLPと同社グループのMonoful Venture Partners(モノフルベンチャーパートナーズ)は、巨大な物流施設を舞台に共創を推進する。低い積載率や個別配送といった1社単独で解決が困難な課題に対し、施設データと人流・物流データの連携、自動運転トラックの導入などを通じてサプライチェーンの最適化を図る。東京都昭島市の物流施設「ALFALINK東京昭島」(アルファリンク)などを活用し、地域共創を見据えたビジネスモデルの横展開を支援する構えだ。

▲日本GLPらが求める共創イメージ(出所:TLCC)

MOL PLUS(エムオーエルプラス)は、大手海運企業である商船三井のCVCだ。深刻化する船員不足に対し、海運業界の枠を超えた技術で船舶運航の高度化と省人化に挑む。ロープで船を固定する係船作業やサビ除去といった危険を伴う身体負荷の高い業務を、ロボティクスや作業アシスト機器で代替する提案を求めている。全長300メートルを超える広大な船内で発生する 異常を少人数の船員に代わって早期検知するAIカメラや、センシング技術の実装も急務としている。

▲MOL PLUSが求める共創イメージ(出所:TLCC)

サプライチェーンの最適化を推進するロジスティードは、物流現場や設備、資源循環をAIで自律進化させる構想を描く。物量波動や天候を把握するAIエージェントを活用した自律運用モデルの構築に加え、投資対効果(ROI)が出にくいとされる自動化設備の課題に対し、設備データとAIを掛け合わせた予防保全の高度化を目指す。電気自動車(EV)バッテリーや太陽光パネルの回収から再資源化までを一体設計する「静脈物流」の効率化など、サーキュラーエコノミーの実現に向けた異音・振動検知、電池リサイクル技術などを求めている。

▲ロジスティードが求める共創イメージ(出所:TLCC)

物流業界へ告ぐ──スタートアップは「共有財産」

本誌読者の大半を占める物流事業者や荷主企業にも強く訴えたい。皆さんが日々の業務で関わっている、あるいは独自の技術を持つスタートアップ企業が周囲にいるならば、ぜひこの取り組みを紹介し、背中を押してほしい。

スタートアップを便利な外部の下請け業者として消費する構図からは、真のイノベーションは生まれない。彼らを業界全体の未来を切り拓く「共有財産」として育む視点が今こそ求められている。既存企業の豊富な知見やアセットと、スタートアップの突破力が交わったとき、物流業界の長年の課題は必ず希望へと変わる。

「決断の時は今、オンライン説明会で全貌を掴め

社会実装の壁を打ち破り、次世代の物流スタンダードを創り出すのは、あなたの企業が持つ技術かもしれない。巨大な物流インフラを舞台に、社会を変革する次の一手を打つための最大の好機だ。

8月31日の応募締め切りに向けて、まずは目前に迫った7月31日のオンライン説明会で、参画企業が発する熱量とリアルな課題の全貌を直接確かめてほしい。変革を志すスタートアップの挑戦と、それを後押しする物流業界全体の連帯に強く期待したい。

オンライン説明会の概要
名称:Tokyo Logistics Co-Creation Cluster オープンイノベーションプログラム「LOAD」 パートナー企業向けプログラム説明会
日時:2026年7月31日(金)14時00分~14時40分
開催方法:オンライン開催(参加無料)
申込締切:2026年7月30日(木)23時59分
申込URL:https://tlccoip2026.peatix.com

■タイムスケジュール
14時00分~14時05分:オープニング
14時05分~14時15分:本事業・クラスター、本プログラム説明
14時15分~14時25分:構成企業7社の共創テーマ概要の紹介
14時25分~14時40分:質疑応答・クロージング
※当日予告なく時間配分・内容が変更になる可能性あり

■オープンイノベーションプログラム「LOAD」概要
応募締切:2026年8月31日(月)23:59
詳細URL:https://tibcatapult-tlcc.eiicon.net/program02

(クリックで説明会の詳細HPへ)

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。