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特定技能ドライバー、ウズベキスタン育成の勝算

2026年9月30日 (水)

ロジスティクス2024年4月に「自動車運送業」が在留資格「特定技能」の対象に追加され、物流業界での外国人材の受け入れ制度が本格稼働した。しかし、言語の壁や外免切替(外国運転免許証から日本の運転免許証への切り替え)の難航、現場でのコミュニケーション不全や事故リスクへの懸念から、依然として多くの運送事業者が採用を躊躇しているのが実情だ。

▲同社がウズベキスタン政府と連携して設立した運送業界特化型の特定技能人材育成校「ウズベキスタン・プラウド・アカデミー」の生徒たち(出所:Proud Partners)

そうした中、中央アジアのウズベキスタン政府と強固なタッグを組み、独自のドライバー育成モデルを展開しているのがProud Partners(プラウドパートナーズ、東京都新宿区)だ。すでにイズミ物流(千代田区)と300人規模の育成契約を締結し、現地訓練校「ウズベキスタン・プラウド・アカデミー(UPA)」を軸に即戦力化を進める。同社取締役の岡村アルベルト氏に、物流業界が抱える課題の本質と、同社が実践する「徹底した事前育成」の具体策を聞いた。

「スピーキングがない」日本語検定の致命的欠陥を現場の教育で埋める

同社が強みを持つ建設分野では元技能実習生などの経験者マッチングを軸にシェアを拡大してきたが、自動車運送業は技能実習制度の対象分野ではなかった。そのため、同社は「経験者がいないなら、育成によって現場で通用する経験者の水準に近づける」という方針を選択した。

「現在、『とりあえず人が入ればいい』という場当たり的な求人が行われることもあるが、弊社ではきちんと現場で活躍するための要件を満たした人材をマッチングしたい。そのためにも、運送業では入念な育成から入るという方法を取っている」

▲Proud Partners取締役の岡村アルベルト氏

岡村氏が問題視するのが、現行制度の要件となっている日本語能力評価のあり方だ。

「特定技能に紐付いている日本語の資格(日本語能力試験など)には、試験にスピーキングがないという、致命的欠陥がある。読み書きや聞き取りはあっても、話す項目がないため、日本語をほとんど話せなくても、漢字圏出身者なら高得点を取ってしまうケースが往々にしてある」

運送現場、とりわけ納品先での荷役作業やトラブル発生時の報告では、双方向のコミュニケーションが生命線となる。資格試験対策の丸暗記だけでは現場の会話に対応できないため、面接時の見極めについてもこう提言する。

「想定質問に対しての一問一答を練習してくるので、スムーズに答えていたのに変化球の質問を投げると固まってしまうことがある。選考の際は、自分たちの業界と直接関係のない想定外の質問をいくつか織り交ぜていくと、彼らが本当に日本語を話せるのかどうかを測る有効な物差しになる」

送出国にウズベキスタンを選んだのは、車への愛着と仕事への熱量

東南アジアをはじめとするさまざまな送り出し国が存在するなか、なぜ同社はウズベキスタンに人材開発拠点「ウズベキスタン・プラウド・アカデミー」(UPA)を置いたのか。その背景には、ドライバーとしての資質を左右する「車に対するカルチャー」がある。

岡村氏は、国内のベテランドライバーへのヒアリングで、事故を起こすドライバーと起こさないドライバーの違いを尋ねたとき、「車が好きかどうか、自分が乗っている車に愛着があるかどうか」といわれたことがあるという。

「異音や不調に気づけるか、メンテナンスをして綺麗な状態を保てるか。車を大切に扱う気持ちがないと、単なる割り切った作業になってしまい、安全性への意識が薄れて事故につながるのではないか」

▲UPAの教習所予定地(出所:Proud Partners)

ウズベキスタンは日常的に車が不可欠な車社会であり、男性にとっては「車を持って初めてプロポーズができる」と言われるほど車が社会的ステータスになっている。さらに、ヨーロッパ各国(ポーランド、ドイツなど)へのトラックドライバー輩出実績も豊富だ。

「国際的な調査機関ギャロップのレポートでは、仕事に対して熱量を持っている国別ランキングでウズベキスタンは常にトップクラスに位置している。やる気があり、かつ車が好きという2つの要件を高い次元で満たしているのがウズベキスタンだった」

現地政府との連携が生む「3人に教員1人」の手厚い教育

通常、海外での現地教育拠点の運営には、校舎や寮などのハード面、そして講師陣の人件費という莫大なコストがかかる。民間企業単独では投資回収を急ぐあまり、教育期間を無理に切り詰めて未熟なまま日本へ送り出さざるを得ない構造に陥りがちだ。

プラウドパートナーズはこの課題を、ウズベキスタン政府(内閣直属移民庁)との連携によって打破した。政府が施設などのハード面を提供することで固定費を圧縮し、同社は人件費と教育カリキュラムの充実にリソースを集中させている。

「海外育成時に大きな割合を占める学校の建設費や机椅子、寮、寮の備品などの費用をウズベキスタン政府に持ってもらうことで、赤字になるデッドラインを先に延ばすことができる。育成の基準レベルに達していなければ『もう少し待ってください』と教育期間を柔軟に調整できるため、営利企業としての都合で妥協して送り出す必要がない」

育成カリキュラムは、標準で6か月の日本語・基礎教育と、受入企業ごとの業務に合わせた2か月の個別カリキュラムで構成される。特筆すべきは、徹底した習熟度別クラス編成だ。

▲UPAでの日本での交通ルールの授業の様子(出所:Proud Partners)

「つまずくポイントは人によって異なる。ステップ1〜3までスムーズに行っても3で止まる人がいれば、そこを合格しない限り次には進ませない。時には、生徒3人に対して教員1人という、個別指導に近いクラス編成で授業をする場合もある」

コスト効率の観点から見れば過剰とも思える手厚さだが、岡村氏は、同社ではあえて「ビジネス部門」と「教育部門」の意思決定を切り離していると明かす。

「ビジネスサイド単独で教育まで見てしまうと、コスト優先の判断になり、結果として質が落ちてしまう。だから、教育責任者には現場を一任し、経営サイドからは口を出さない。3人クラスはやりすぎだと思うこともあるが、現地に行くと他の生徒たちが『自分がつまずいても見捨てずにフォローしてくれる』と安心し、心理的安全性が担保される効果がある」

日本式教習所と個別教材で「現場の常識」を叩き込む

現在、現地の訓練校敷地内には、日本の道路環境を再現した日本式教習所の整備が進められている。日本のトラック2台を持ち込み、日本の道路標識、クランク、縦列駐車、坂道発進に加え、狭小路でのカーブや夜間走行、荷下ろし訓練までを現地で実施する計画だ。

トラックの実機が届く前から、現地では点呼や日常点検を模した訓練、ラジオ体操、日本の交通法規の学習が日常的に行われている。

▲UPAで行われている日本語での挨拶の練習の様子(出所:Proud Partners)

基礎教育を終えた人材には、各運送会社の運行形態に合わせた2か月の個別カリキュラムが用意される。食品輸送、冷蔵・冷凍環境での作業手順、配送先でのあいさつや伝票処理など、企業固有の現場用語やマニュアルを教材に落とし込み、配属初日からのギャップを最小限に抑える。

免許取得の壁と「10%再育成保証」

受入企業にとって最大の懸念事項の一つが、来日後の運転免許取得だ。教習所での合宿取得と「外免切替」の選択肢があるが、現状では費用面から外免切替を選択する企業が多い。

外免切替は費用を抑えられる反面、警察庁による試験厳格化や予約の取りづらさにより、合格までの期間がコントロールしにくいリスクを孕む。在留資格上の期限内に免許を取得できなければ帰国せざるを得ない事態も懸念される。
こうした受入側のリスクを低減するため、同社では独自の契約保証を設けている。

「育成人数の10%までは、免許を取得できず、退職した場合などに、当社負担で再度ゼロから育成し直すか、すでに育成済みの人材へ切り替える対応を契約に盛り込んでいる。10人採用いただいた場合、1人分までは当社が責任を持ってカバーする仕組みだ」

200人内定の先へ──「安心感」をデータで広げる

外国人材の採用においてもう一つの高いハードルとなるのが、「調達スピード」の問題だ。自社向けにゼロから募集と教育を始める場合、募集に2か月、基礎教育に6か月、企業別教育に2か月と、採用決定から来日までおよそ10か月もの期間を要してしまう。同社では最速で3か月で基礎教育を終えた例もあるというが、教育期間は個人差があるのが現状だ。人手不足が深刻化する現場において、10か月というタイムラグは看過できない。

この課題に対し、同社では自社による先行投資として、すでに共通基礎教育を修了・履修中の「ストック人材」およそ150人を現地で常時確保している。この仕組みを活用すれば、企業が選考・内定を出した後のビザ申請待ち期間(2〜3か月)を利用して企業別講習や実技教習を進められるため、わずか2-3か月での迅速な来日が可能となる。「10か月も待てない」と導入を躊躇していた事業者にとって、この大幅な期間短縮はきわめて強力な解となる。直近でも15人の新規内定が決定し、9月から10月にかけて複数の運送会社経営層が現地視察に訪れているという。

選考において運送会社が重視するのは、語学力以上に「トラブル時に自発的に相談できるか」「異文化や職場の規律に適応できるか」といったパーソナリティの側面だ。同社では面接前の段階から日本の職場規範を伝え、適性を見極めている。

「年間数人の採用で事足りる企業にとっては、当社のここまでの教育は過剰かもしれない。しかし、将来的に年間10-30人単位で安定して外国人ドライバーを受け入れたいと考える企業にとっては、教育水準が均質化された育成型の仕組みが不可欠になる。『日本人も外国人も変わらない』という安全性の確信が持てた瞬間に、業界の受け入れは一気に加速するはずだ」

単に頭数を揃えるのではなく、安全を担保するための土台を現地の教育から組み上げる。深刻化する物流の人手不足において、プラウドパートナーズが提示する、徹底的に育成するというアプローチは、外国人材活用の持続可能なモデルケースとなりそうだ。


▲UPAでは、日本の朝礼で行われることも多いラジオ体操も実施。そのほか、出発前の点検での指さし確認などの研修も行っている(出所:Proud Partners)

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