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EUの越境EC規制、日本は1万円の壁をどうする

2026年10月2日 (金)

国際欧州連合(EU)で9月21日、加盟27か国に分散する税関手続きとITシステムを一元化する「EU関税改革」が発効した。新たな欧州連合関税法典(UCC)を軸に、越境電子商取引(EC)の急拡大や地政学リスクへの対応を狙った制度改編だ。同様の圧力は日本の税関行政にも及んでおり、格安の越境ECをめぐる規制のあり方が問われている。(編集委員・刈屋大輔)

小口輸入貨物対象にEU共通の取扱手数料を導入

新UCCは9月19日にEU官報へ掲載され、改革の中核を担う「EU Customs Authority」(EUCA)はフランス・リールに設置され、20日に法的に発足した。加盟国ごとに異なる税関手続きを調和させ、将来的にはEU域内の手続きを単一の窓口から行える仕組みへ移行する構想だ。

輸入者の責任を明確化するとともに、企業から税関当局への報告も共通のデータ基盤に集約する。EUCAは加盟国の税関当局を横断したリスク管理を担うほか、各国に分散する税関ITシステムを置き換える「EU Customs Data Hub」の構築を進める。

欧州委員会の試算では、データハブへの移行により加盟国で年間23億ユーロ、事業者側で年間25億8000万ユーロの運用・事務コスト削減を見込むという。EC貨物については2028年7月からデータハブの運用を始め、それ以外の貿易も2031年までに対応させる計画だ。

今回の改革は、1968年の関税同盟発足以来最大規模の制度見直しとされる。小口輸入貨物への規制強化も改革の柱の1つだ。150ユーロ以下の商品に適用してきた関税免除を廃止し、2026年7月から暫定的に3ユーロの関税を課す。11月からはEU共通の取扱手数料も導入し、域外から消費者へ直接販売する事業者やECプラットフォームを輸入者として扱い、税関データの提出やEU法令への適合確認を求める。

少額貨物への優遇縮小は、EUだけの動きではない。米国は25年8月29日、少額貨物を免税とする「デミニミス制度」を全世界向けに撤廃した。中国発の格安ECプラットフォームを念頭に置いた措置とみられ、越境ECの拡大で税関の処理能力を超える貨物量が押し寄せ、免税枠を利用した実質的な迂回輸入が横行してきた事情は、EUと米国とでおおむね共通しているのだろう。

日本はEUや米国に歩調を合わせるのか

日本でも同様の圧力を背景に、制度は動き始めている。越境ECを通じた輸入許可件数は24年に1億9000万件とコロナ禍前の4倍超に膨らみ、うち9割を課税価格1万円以下の少額貨物が占め、その多くは中国・韓国を原産地とする。

国内外の事業者間の競争条件をめぐり、経済産業省も税制改正要望で公平性の確保を求めてきた。これを受けて、財務省は2025年5月に有識者によるワーキンググループを設け、同年11月の中間とりまとめを経て、26年度税制改正に反映させた。

具体的には、通信販売で輸入される1万円以下の物品への消費税課税と、対象取引の合計額が50億円を超えるプラットフォーム事業者への納税義務の転換が決まったほか、個人使用貨物に適用してきた「海外小売価格の0.6掛け」という課税価格算定の特例も廃止する。ただし施行はいずれも2028年4月1日で、なお2年以上の猶予期間があるうえ、50億円という規模要件に届かない中小のプラットフォームは対象から漏れる可能性も残る。

税・制度面の改正が2028年を待つ一方、水際の取締り体制はむしろ先行して動いている。保税業者に対する業務改善命令の創設はすでに2026年6月に施行済みだ。財務省は「税関中長期構想2030」に基づき、成田空港や関西国際空港に航空貨物検査センターを新設し、AIを使ったX線全量検査体制を2030年をめどに整える方針を掲げる。2027年度予算では、水際取締りのための検査体制整備に427億円(前年度比303億円増)を要求し、X線検査装置の増設などに充てる考えだ。

もっとも、EUや米国が踏み込んだ「免税ライン自体の見直し」には、日本はまだ手をつけていない。少額貨物の免税基準である1万円という水準や、少額貨物に適用される簡易税率の見直しは、財務省の審議会でも結論が持ち越されたままだ。

消費税課税とプラットフォーム課税、そして水際の取締り強化を積み上げるだけで、格安越境ECをめぐる競争条件の歪みは正せるのか。1万円という壁をこの先どう扱うかに、日本の本気度が表れるのではないだろうか。

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