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日通総研、震災で今年度の貨物輸送見通しを改訂

2011年4月5日 (火)

話題日通総合研究所は4日、東日本大震災を受けて今年度の経済と貨物輸送の見通しを改訂した。当初予測では日本経済の持ち直しとともに成長率や貨物需要も徐々に上向くとしていたが、東日本大震災が「経済にダメージを与えることは不可避」として、改めて予測作業を行ったもの。 東日本大震災で改訂した貨物輸送の見通し

 

 

 

 

 

 

 

 

国内貨物輸送、トラックは2-3%のマイナス幅
日通総研によると、国内貨物輸送では被災地の経済活動が停滞するのに伴い、「あらゆる荷動きが停滞」し、被災地域からの部品・半製品の出荷停止が他地域の生産・出荷減退に波及、停滞が広域化する。

 

また、計画停電の実施に伴う関東で生産活動が縮小し、原材料や製品・半製品の荷動きが減退。国内全体の消費マインドや企業マインドの冷え込みが投資・消費需要を下押しする結果、消費財や投資材を中心に、荷動きの減退につながるとみている。

 

一方で、大量に発生したがれき除去に伴う復旧需要が発生する見込みで、宮城県だけで1500-1800万トン(暫定値)に達する。最終的には、阪神・淡路大震災で発生したがれき量1500万トンの数倍に上るとみられ、交通・物流インフラの改修・新設、住宅などの建造物の新設などが加わることから、建設材や生産財などを中心に、大量の輸送需要が発生すると予測した。

 

当初は2011年度の総輸送量を前年度比で1.9%減と見込んでいたが、震災の影響により「1.4-1.9ポイント下押しする」として、「3%台のマイナスが避けられない」と指摘。中でも生産関連貨物は機械や化学工業品の大幅減に伴い、当初予測値の1.0%減から大幅に下方修正し、6%前後減少するとした。逆に、建設関連貨物は復旧・復興需要に伴い、1-2ポイント上方修正した。

 

輸送モード別にみると、JRコンテナは自動車部品専用列車の正常運行のめどが立たないほか、工業製品の需要減退が見込まれる中、「大幅な減少が避けられない」、JR車扱いは「小幅な減少にとどまる」とした。営業用自動車は、消費・生産関連貨物の落ち込みが足かせとなり、2-3%のマイナス幅を予測。内航海運は火力発電向けの需要増に加え、年度後半には鉄鋼も堅調な荷動きが期待できるとして、前年度並みの輸送量を確保するとした。国内航空は「引き続きマイナスで推移」する見通し。

 

国際貨物輸送、原発悪化で下振れリスクも
国際貨物輸送は、被災港湾の全国シェアが輸出入ともに1%を占めるに過ぎず、シェア的には小さいものの、東北地方に集積する自動車関連産業、電気機械・電子部品産業など、輸出関連産業の被災がサプライチェーンに大きな影響を及ぼすと指摘。

 

生産活動が正常化するには時間を要するとして、4-6月期の輸出の落ち込みは避けられず、6-9月期も計画停電に伴う工場稼働率の低下で「上期はマイナス成長を余儀なくされる」と予測した。

 

ただ、リーマンショック後の状況とは異なり、世界経済が着実な成長過程を辿っていることから、マイナス幅は「1%程度」を予想。下期には貨物量がプラスに転じ、回復軌道を描くとした。

 

これらの予測を踏まえた結果、外貿コンテナ輸出が4.2-4.7ポイント、国際航空貨物が3.3-3.8ポイント成長が下押され、年度を通してみると「ほぼ前年度並みの水準で推移する」と分析した。

 

ただし、この見通しは原発事故に伴う悪影響が拡大しないことを前提としており、状況が悪化すれば船社や航空会社が京浜港、成田空港などを利用回避する可能性もあり、さらに日本製品の輸入制限拡大など、下振れリスクが生じるとしている。

 

輸入は、上期に前年度水準割れとなるものの、年度を通してみるとプラス成長を維持し、「1桁台前半の伸び」が見込まれる。