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通販拡大で増える運送トラブル、生活センターが報告書

2015年3月26日 (木)
通販拡大で増える運送トラブル、生活センターが報告書

(出所:国民生活センター)

EC独立行政法人国民生活センターは26日、通信販売の成長に伴って宅配便やメール便のトラブルが増えているとして、運送事業者、通販事業者、消費者がそれぞれの立場で取り組めることをまとめた報告書を公表した。

通販で消費者が購入した商品の運送には、主に運送事業者による宅配便やメール便が用いられているが、遅延・破損・紛失など宅配便を利用する上で起きるトラブルが「消費者トラブルメール箱」や各地の消費生活センターに寄せられている。

2014年度の相談件数は2月20日までに260件に達しており、前年の同じ時期に比べて33件増加。国民生活センターでは「これらのトラブルは、単に運送事業者の責任によるものだけでなく、通販事業者や消費者の取り組みと併せることで改善できる事例も存在している」と指摘。

相談事例やトラブルメール箱へ寄せられた情報を基に、運送事業・通販事業の両事業者団体へのヒアリングを踏まえ、消費者トラブルを減らすため消費者へのアドバイスと事業者団体への要望を行った。

同センターは主な相談事例として「指定時間帯に届かないクリスマスプレゼント」「メール便で紛失した自転車パーツ」「発送プランが適切に反映されない書籍」の3事例(記事の最後に事例の詳細内容)を挙げた上で、「宅配便サービスが関係する相談にはさまざま形があるものの、苦情の原因をみると消費者・通販事業者・運送事業者それぞれに起因する事例が見当たる」と分析。

購入に関連する問題点としては「運送手段に関する情報が消費者に浸透していない」「購入者(消費者)は運送契約の当事者でない」、運送に関連するものとしては「不適切な荷扱いに関するものが目立つ」「配達日時に関する消費者のシビアな期待」などがあると強調し、さらに通販事業者・運送事業者が配達スピードに過度な対応を行っていると指摘した。

特に、過度な配達スピード対応については、在庫管理が適切に行われることで欠品などによる遅延を防げたり、配達日が指定されているケースも、相応に早期の出荷を図などで時間的余裕が確保できる、と解決への手掛かりを提案している。

消費者に対しては次のように8項目にわたってアドバイスしている。

消費者へのアドバイス

(1)購入契約(注文)時に運送方法を選択する場合は、送料や配達時の確実性など、運送方法ごとの特徴や条件をふまえて検討した上で、確実な受取方法が選択できる通販事業者の利用を考えること。

(2)購入契約に際しては、補償規程やその適用条件、トラブルに気付いた時の申出先、代金の支払い前に確認しておく。

(3)宛先は地番や部屋番号など、細かい場所まで確実に入力し、送信前は必ず確認する。マンションなどで宅配ボックスを利用する場合、注文前に宅配ボックスの利用可否など、細かい条件利用規程を確認し、注文時に通販事業者にそのことを伝え、確実な受取ができるような工夫も考える。

(4)配達日に転居や長期不在が重なったり、定期的な配達物がある場合は、配達日や時間帯の希望を通販事業者に伝えておいたり、確実に受け取れる宛先を指定する。

(5)品物の運送は、多くの段階を経て届けられるため、交通渋滞など、途中でのトラブルが生じることもあるため、配達日や時間帯の指定を行う場合、日程に余裕を見込んだ注文となるよう心がける。

(6)荷物の受取時、その場でまず外装などの確認を行う。外箱の破損などが見られた場合、運送事業者に運送状況確認をしておく。

(7)荷物の受取後は、速やかに内容品(商品)を確認し、破損や不足などが見られた場合、すぐに通販事業者に申し出て、対応を求める。

(8)トラブルが起きた場合は、最寄りの消費生活センターに相談する。

また、通販業界団体の日本通信販売協会(JADMA)に対し、費用・簡便性・信頼性の観点から消費者が「複数の手段から選択できるような態勢の構築と、さらなる充実」を要望。宅配ボックスやコンビニ・営業所留めなど、消費者側の受取条件や設備・手段の多様化に対応できるよう継続的な態勢整備を求めた。

配達日や時間帯指定運送については、(1)適切な在庫管理と、連動した表示(2)無理のない範囲で配達希望日や時間帯が選択できるような整備――など、通販事業者が行える範囲で配達遅延のリスクを低減させる取り組みを、運送時の荷物破損などによる対応については、消費者からの申出がスムーズに行えるよう表示や案内の改善と充実を要望した。

運送業界団体の全日本トラック協会に対しては、荷物の破損や遅延・不着などをさらに低減する取り組み、配達日時指定の運送に対する消費者の期待にさらに応えられるようにすることを求めた。

■主な相談事例
【事例1】

指定時間帯に届かないクリスマスプレゼント

インターネットのショッピングモールで、クリスマスプレゼント用に子供向けキャリーバッグを購入し、サプライズにしたかったので配達を日時指定にした。ショップ側にも日時指定を確認していたが、念のため運送事業者に確認したところ「日時指定になっていない。夕方に配達予定」と言われた。子供が帰宅したら意味がないので、運送事業者の営業所まで行って引き取ったところ、箱には指定日時が明記されていた。なぜこのようなことが起きるのか、調べようともしない。(2014年12月受付、30歳代女性、給与生活者、神奈川県)

【事例2】

メール便で紛失した自転車パーツ

ネット通販で自転車パーツを注文したところ、運送時のトラブルで商品が紛失してしまった。通販事業者のホームページ上には「メール便を利用し商品が紛失した場合、代金は補償されない」の旨、注意書きはあった。今まで配達でトラブルはなく、送料の安さからメール便を選択した。通販事業者が発送したのは確認できており、補償されないのは納得いかない。(2014年9月受付、40歳代男性、給与生活者、東京都)

【事例3】

発送プランが適切に反映されない書籍

複数の書籍を予約注文した。その通販事業者は、一定期間に入荷した分をまとめて発送するパターンと、入荷の都度発送するパターンが選択できるようになっている。私は一定期間に入荷した分をまとめて発送するパターンを選択していたが、何の連絡もなく入荷の都度発送されることがある。代引決済にしていたので、送料と代引手数料を余計に負担することになった。苦情を入れても改善されている様子がない。(トラブルメール箱2015年1月受信、30歳代女性、自営・自由業、長野県)