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燃料税廃止や高速料引き下げ、全ト協が国に施策要望

2025年8月22日 (金)

ロジスティクス全日本トラック協会は22日、2026年度のトラック関係施策に関する要望書を国に提出した。ドライバー不足や燃料費の高騰に加え、車両価格の上昇や価格転嫁の遅れなど、業界を取り巻く経営環境は依然として厳しい。全ト協は、安定した輸送力の確保と公共的物流サービスの持続のため、税制・道路・予算措置など多岐にわたる支援を求めている。

民間試算では、対策を講じなければ2030年には輸送力が34%不足するとされる。政府はすでに「2030年度に向けた中長期計画」を策定し、25年には物流総合効率化法や下請法の改正、さらに貨物自動車運送事業法の改正が相次いだ。許可更新制や「適正原価」を下回る運賃の制限、多重下請け構造の是正などが導入され、荷主・事業者双方に規制的措置が及ぶことになる。全ト協はこうした制度改正を踏まえ、適正な運賃収受と価格転嫁、労働生産性の向上、人材確保に取り組む必要があると指摘している。

要望の柱の一つは自動車関係諸税の見直しだ。燃料費高騰が続くなか、暫定税率が上乗せされた軽油引取税は大きな負担となっており、全ト協は廃止を強く求めている。あわせて、自動車重量税や自動車税の軽減、エコカー減税や先進安全自動車(ASV)特例措置の延長も要望。環境性能の高い車両の普及促進と事業者の負担軽減を両立させる狙いだ。さらに、営業用と自家用で差を設ける「営自格差」の拡充を通じ、輸送効率化を後押しすることも提起している。

道路関係では、高速道路料金の引き下げと割引制度の拡充を求める。NEXCO3社による大口・多頻度割引を実質50%に引き上げるほか、首都高速や阪神高速など都市高速の割引制度を全国的に統一し、利用しやすいネットワークの実現を訴えた。フェリー利用への補助制度創設や、定額制料金の検討も含まれる。

さらに、暫定2車線区間の4車線化、ミッシングリンクの解消、渋滞対策の強化など物流基盤の整備を優先課題と位置づけた。下関北九州道路の早期実現や中継物流拠点、休憩施設の整備も盛り込み、ドライバーの労働環境改善と法令順守を支えるインフラ整備を求めている。

環境面では、カーボンニュートラルに向けたEV(電気自動車)や燃料電池車の普及促進策、充電インフラ整備への支援を要求。石油代替燃料の活用や省エネ機器導入補助の継続も掲げた。交通安全対策では、衝突被害軽減ブレーキやデジタル式運行記録計、ドライブレコーダーといった先進安全機器への補助拡充を求めている。

人材確保では、免許取得や職業訓練への支援、外国人材の活用に向けた特定技能制度の適用拡大を提案。若年層や女性が働きやすい環境整備とあわせて、物流の担い手不足に対応する姿勢を示した。

要望書は、能登半島地震の復興支援や災害時輸送体制の強化にも触れており、物流の社会インフラとしての公共性を改めて強調している。高止まりする燃料費や価格転嫁の遅れなど、業界の持続性を脅かす構造的課題は依然として解消されていない。

全ト協は「トラック運送業界が安定した輸送サービスを提供し続けるために必要不可欠な支援」と位置づけ、26年度予算編成や政策決定に反映させるよう求めている。物流の現場に直結する施策の実現度合いは、30年に向けた輸送力確保の成否を左右することになりそうだ。

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